乗 り 鉄 北 関 東
東武特急りょうもう11号で群馬へ

地方に在住している私のような者にとっては、3月以降の東京は鬼門であった。遊びに行くのはもちろん、通過することもイメージ的にはばかられた。しかしGoToトラベルキャンペーンの東京除外がなくなり、鉄道利用による感染防止が徹底されてきたので、そろそろ東京を通過ぐらいはしてもいいだろうということになった。というのも、コロナ禍の株価暴落の時に在京の鉄道会社の株を買ったため、その株主優待券の期限が切れる前に使えるものは使ってしまおうという策略があったからである。西武鉄道の株を買ったからには、今まで乗ったことのなかったラビューに乗りたい。というわけで、今回は秩父を含む北関東の私鉄の乗りつぶしを計画した。

GoToトラベルキャンペーンが使えるならば使わねば損なので、例によってJR東海ツアーズの新幹線+宿泊のツアーに申し込んだ。東京までの新幹線指定席往復と、大宮のホテルにシングル素泊まりするプランで、キャンペーン割引適用すると10,335円。今月から地域共通クーポン2,000円分がもらえ、おまけにJR東海ツアーズの「ずらし旅」クーポン1,000円分もついてくる。実質7,000円ちょっとなので、普通なら新幹線の片道キップ代にもいかないくらいの値段である。

2020年10月21日、浜松8時25分発のこだま702号でスタート。品川で降りて上野東京ライン常磐線直通の列車で北千住に向かう。ちなみに今回の旅では万全を期して、都内と高崎線の電車は全てグリーン車に乗る予定である。普通車に比べてグリーン車は空いており、立ち客と対面するケースがないので感染防止の効果が高い。たまっているJREポイントを大放出して4つの列車でグリーン車を利用することになるが、それはまたあとの話。品川から30分も経たずに北千住に到着した。

北千住から東武の株主優待を使って、一気に群馬へ。2年ぶりに赤城駅に降り立ち、2年前に乗れなかった上毛電鉄の西半分に乗車した。進行方向右手の窓には上毛三山のひとつ赤城山がそびえ立つ。広大な関東平野の北の端。ゆっくりと電車は前橋へと向かう。赤城駅から40分で中央前橋駅に到着した。これで上毛電鉄上毛線の25.4キロを完乗した。終着の中央前橋駅は、予想に反してガラス張りの綺麗な駅舎で意外だった。JRの前橋駅とは1キロほど離れているが、徒歩連絡をして両毛線に乗車。目指すは伊勢崎駅。15分ほどの乗車である。

東武伊勢崎線といえば、浅草起点の線区で東武鉄道の大動脈。しかし末端の太田〜伊勢崎間は、日中1時間ヘッドの閑散線区である。桐生線には特急が1時間おきに乗り入れるのと比べるとローカル色は否めない。その1時間おきに走る3両編成の普通電車に乗って館林へ。館林では6両編成の久喜行き普通列車に乗り換え。途中で利根川を渡って埼玉県に入る。ほどなく羽生駅に到着し、秩父鉄道に乗り換える。

羽生から熊谷までは秩父鉄道に乗車。こちらも初めての乗車である。16時27分発車なので、この季節だと夕闇が迫る時間帯である。それでも車窓はきっちりと見えるので、初乗り区間に心が躍る。この区間でヘッドホンから流れていたのは10月18日OAの「安部礼司」。日曜日の夕方に旅に出ていると、この番組を生で聴いたものだが、このごろは大体ラジコのタイムフリーで聴いている。番組の終盤で河合奈保子の「エスカレーション」がかかり、続いてCCBの「ロマンチックが止らない」がかかった。「うむ、この日のオンエアは筒美京平しばりであったか…」そう思っていると、最後の曲は尾崎紀世彦の「また逢う日まで」。この曲は私の記憶に残る最古の曲で、レコード大賞を受賞した翌年の正月にかかっていたラジオで聞いた思い出がある。54歳に間もなくなろうとしてる今でも「いい曲だなぁ」と思う。そういう意味では惜しい人を亡くしてしまった。。。


2年ぶりの赤城駅にて筆者


上毛電鉄の西半分を乗りつぶし


広大な関東平野の北の果てにそそり立つ赤城山〜上毛電鉄の車窓から


意外にも綺麗な中央前橋駅


両毛線から伊勢崎線に乗継


日中は1時間に1本のみの伊勢崎線


館林駅で久喜行き普通列車に乗り換え


大宮駅徒歩3分のレフ大宮に宿泊


秩父鉄道6000系の車内


利根川を渡って埼玉県に入る


秩父鉄道との乗換駅・羽生駅


秩父ジオパークトレインのラッピング


秩父鉄道6000系の有料急行「秩父路1号」

熊谷には16時52分に到着。予定より一本前の高崎線に間に合い、グリーン車のリクライニングシートでくつろぎながら大宮へ。大宮の宿泊先はレフ大宮byベッセルホテルズだが、大宮駅から近く、ツアー料金でぶったたいている割には、小ぎれいなホテルで満足した。

翌朝は朝6時前にチェックアウトし、6時10分発の高崎線で再び熊谷に戻る。熊谷に泊まっていれば効率がいいのだが、そんな都合のいいツアーはないので、早起きを強いられる。熊谷からは、日本国内では絶滅危惧種となっている有料急行に乗車する。秩父鉄道6000系電車による急行秩父路1号がその列車である。西武鉄道の通勤電車だった新101系を大幅に改造した電車で、ニューレッドアロー10000系のリニューアル時に発生したリクライニングシートを再利用している。シートをボックス形に固定しており、世にも珍しいリクライニング付き固定ボックスシートとなっている。ちなみに急行料金は210円。窓口で購入したら硬券で、これだけでも価値がありそうだ。

急行秩父路1号は、1ボックスに1人強の客を乗せて出発。武川、寄居といった大きな駅だけ停車し、その他の駅は、たとえ交換駅であっても普通電車を待たせて通過する。駅間の長い場所ではかなりのスピードで走り、思った以上の走りでびっくりした。熊谷〜秩父間の約45キロを52分で走破。表定速度52キロは単線としてはかなり速い。

熊谷から1時間で終点の影森に到着。秩父鉄道の旅客線乗りつぶしのためには、さらに三峰口まで行かねばならないが、次の電車は1時間後。ほんの3分前に三峰口行きが発車しており、「意地悪してんの?」と思ってしまう。この間を利用してカメラの画像をチェックしたが、そもそも今回の旅の目的が乗りつぶしであるので、ここまで撮ったのは電車か駅舎か車窓しかない。駅周辺を散策しようにも、三峰口までのキップの券面には「途中下車前途無効」と書かれている。私はおとなしくホームで次の電車を待った。

影森9時ちょうど発の三峰口に向かう。いつぞやの関東の駅百選に選ばれたらしく、レトロな駅舎のかたわらにレトロなコカ・コーラの広告塔が鎮座していた。ここに来た電車でトンボ返りする予定を組んでおり、駅での滞在時間は17分間だが、それでも余裕があるほど周りに何もない駅だった。

御花畑駅まで戻り、徒歩連絡で西武秩父駅へ。いよいよ初体験の西武の旅である。まずは昨年デビューした001系特急電車ラビューから。先頭形状といい、大きな窓といい、黄色いシートといい、従来の特急電車のイメージを変えたラビューであるが、登場後1年半経っても新鮮さは失ってなかった。シートピッチも広くて快適だったが、秩父から飯能までの逆向き走行には参った。まぁしつらえられたものを回転させればいいだけの話なのだが、秩父から飯能までがイメージ以上に距離があり、結局所沢までの乗車の3分の2くらいは逆向きに座っていた計算。今度乗るときは池袋からにして、飯能で可能な限りシートを回転させようと思った。

所沢で下車し、本川越行きの特急小江戸11号に乗り継ぎ。西武新宿線の特急に使われる10000系ニューレッドアローも乗りたかった電車。そもそも幼いころの私は先代のレッドアローがお気に入りだった。クルマも好きだった私は、レッドアローの丸目4灯に、スポーツカー的な匂いを感じ取ったのかもしれない。さて、そのニューレッドアローも、所沢〜本川越間の15分間では乗ったうちに入らない。コロナ禍がおさまった暁には、こちらも西武新宿から終点までじっくりと乗り通したい。


秩父鉄道の終着駅三峰口にて筆者


来た電車(7000系)で折り返し


観光拠点でもある西武秩父駅


ようやくラビューと対面


特徴のあるシートが並ぶ

本川越に到着して、乗りつぶしの旅が終了。この旅の目的である、北関東に路線を持つ私鉄の未乗区間に乗るということも概ね果たせた。しかしながら、疲れた割には実入りの少ない旅でもあった。関東地方ということで、いろいろと身構えた分、ちょっと楽しめなかったかもしれない。次に来るときには余裕を持ったスケジュールで、街歩きも楽しみたいものである。と思いながら歩いた本川越駅から川越駅までの商店街が、ちょっとソウルの明洞っぽい雰囲気で良かった。ウィズコロナの生活様式が定着し、段々と賑わいが出てきたようである…。


ニューレッドアローも乗りたかった車両


実質的な旅は本川越駅で終了

<終>

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