おときゅうパス 東日本一周


2日間でおときゅうパスを使い倒す


あれ?下の方が先発だっけ?

空梅雨が一転、旅立ちの朝は猛烈な雨が降っていた。浜松を出発するのは19時すぎなので、「夕方には小降りになるだろう」とタカをくくっていたが、昼前後には避難勧告が出るほどの騒ぎとなった。全国ニュースでも「浜松で避難勧告」と取り上げられる始末。当然、ここまでの大雨になると鉄道に影響が出て、新幹線、東海道線、身延線が次々と運転を見合わせた。仕事中だが、刻々とネットが伝える最新情報に己の不運を呪った。4月の旅も、5月の旅もダイヤの乱れに振り回され、今回もとなると3回連続である。

夕刻が近づくにつれ雨の勢いが弱まり、17時ころには新幹線、東海道線、身延線が動き始めた。とはいっても半日も列車が止まっていたので、そう簡単に通常運行に戻るはずがない。こういう時には早めに出発し、現場合わせで対応していくしかないが、いかんせん勤務終了後カツカツで間に合う行程しか組んでいない。18時を待って会社を飛び出し浜北駅へ。19時前に浜松駅に到着したが、新幹線改札口の上にある発着案内表示は「こだま668号 17:21 東京」も残っていた。もっとも先発は予定している19時11分発のひかり478号で、次発は18時50分発のこだま674号。時間感覚が変になりそうだ。

さて、ひかり478号は10分遅れで浜松駅を発車。このまま行くと乗り継ぐ予定の「ふじかわ13号」に間に合わない。さっそく車掌さんを捕まえて「静岡でふじかわ13号は接続を取るんでしょうねぇ?」と問いかけた。指令に問い合わせて静岡到着前に車内放送で案内するという回答だった。で、その放送では「ふじかわ13号にお乗り継ぎのお客様は、接続時間が大変短くなっております。少々お急ぎいただきますようお願いします。」とのことだった。まぁとにかく待っていてくれるということでひと安心。急いで2番線に移動すると、そこには見慣れた211系電車が停まっていた。「え〜、特急なのにこれかよ」と思ったが、そんなわけはない。それから30分以上2番線で立っていたが、待てど暮せど「ふじかわ」の案内放送は入らなかった。ひかりの車掌は見込みで案内するわ、静岡駅の駅員は全く案内しないわで、徐々に頭に血が昇っていくのを感じたが、そのうちにホームの発着案内に「ふじかわ 甲府」の文字が出て安堵した。というのも、ふじかわ13号だけ定刻で発車したという可能性も捨てきれなかったからである。とにかく東海道線はダイヤが読めない状態で、普段ではありえない東田子の浦行き普通列車が何食わぬ顔で発車していったり、373系6両編成がブルーに白抜き文字の「快速」のヘッドサインを出して発車していったりしていた。で、373系ふじかわ13号が定刻から50分遅れで2番ホームに入線。シートに腰を下ろして、ようやく人心地がついた。


1時間15分遅れで終点甲府駅に到着


甲府を起点にJR東日本エリアをほぼ一周する


古いが駅から近いところが美徳

ふじかわ13号の自由席は空いていて、富士駅でホームライナー的に乗車していた通勤客も降りてガラガラになった。身延線の隣のホームに停まっている西富士宮行きの普通列車より先に発車すると思っていたが、予想に反してあちらが先に発車。頭を押さえられたために西富士宮までノロノロ運転。ここでまた遅れが増幅して1時間15分遅れとなった。その後は通常のスピードで運転したものの、終点の甲府に到着したのは23時20分ころ。駅前のホテルを予約しておいて正解だった。

翌朝は遅めの出発。9時29分発のスーパーあずさ5号に乗車すればよく、甲府駅北口広場でしばらくたたずんだ。弟が甲府に住んでいた30年ほど前には当地をよく訪れており、この街の誇りである武将・武田信玄と地元遠州地方の縁に親しみを感じていた。そんなわけで私が最も好きな戦国武将は武田信玄だが、先日東洋経済のコラムで史上最強の戦国武将は武田信玄であると目にして大いに溜飲を下げた。病に倒れなければ天下を獲ったであろう信玄の無念さを思うと心が痛む。


最初の列車はE351系スーパーあずさ5号


JR東海の383系だがおときゅうパスで乗れる

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長野駅よりはくたか559号で上越妙高へ


駅前に広大な空き地が広がる上越妙高駅


長野の駅弁「信州美彩膳」

さて甲府駅より、いよいよ大人の休日倶楽部パスを使って、東日本一周の旅を開始した。一本目の列車は振子式電車E351系のスーパーあずさ5号である。八ヶ岳が見える進行方向の右側のシートに陣取り、いつもと違う新鮮な車窓に心が躍った。茅野からは諏訪地方の主要地を縫うように走るが、普門寺信号所からは単線となる。飯田線の乗り入れ列車もあり、ローカル列車の本数が増える区間に限って単線というのも皮肉なものだが、ここが複線化されるのは連続立体交差工事と同時だろう(いつになるかは分からないが)。そんなことを思っているうちに塩嶺トンネルを抜けて塩尻、そして終点松本に着いた。

JR東日本の全区間+αで特急自由席が乗り放題のきっぷを持っているので、JR東海の383系が乗り入れてくる篠ノ井線でもどんと来いである。松本から長野までは特急しなの5号に乗車。晴れていたので姨捨付近の車窓も存分に楽しめた。長野からは北陸新幹線に22分だけ乗車。飯山駅を発車直後に入ったトンネルを抜けるとそこは新潟県。上越妙高駅には12時31分に到着した。

上越妙高駅は旧脇野田駅の西側にできた駅で、広大な空き地となっている東口は駅の跡地である。そこで記念撮影をして早々に駅舎に戻った。えちごトキメキ鉄道のホームに行くと、既に新潟行きのしらゆき5号が入線していた。車内はガラガラで好きな席を選び放題。2年前に乗車した時、車端部の席で揺れがひどかったのを思い出し、車両中央部の進行方向左手のシートを選択。柿崎付近の日本海の景観も快適に見ることができた。日本海縦貫線のエースだった485系特急電車の後を継いだのが、特急しらゆきでも活躍中のE653系で、新潟からの「いなほ」、秋田からの「つがる」にも使用されている。ドアの無い側の車端部は、台車のオーバーハング部分にシートがあり、ここは想像を絶する揺れ方をするので避けた方が無難である。

しらゆき5号の新潟到着時刻は15時06分。一方いなほ7号の新潟出発時刻は15時01分。タッチの差で間に合わない。というわけで長岡から新潟まで上越新幹線のお世話になった。おときゅうパスならへっちゃらである。新潟では余裕しゃくしゃくで、いなほ5号に乗り継いだ。

さぁ日本海縦貫線で最も楽しみにしていた特急いなほ号である。その理由の半分以上は新潟・山形県境にある笹川流れの車窓である。あいかわらずのE653系であるが、上越新幹線を新潟で受けて、庄内地方や秋田の日本海沿岸部を結ぶ国鉄時代からの伝統特急である。新潟〜秋田間の3時間半あまり、ゆったりと海を見ながら酒を飲むという至福の時を味わった。おかげで秋田到着後のインターバルタイムはヘロヘロになってしまったが…。


怒涛のE653系攻撃の一番手「しらゆき5号」


米山付近の海岸。真夏は海水浴で賑わいそう


長岡〜新潟間はMAXときにアシストしてもらう


日本有数の田園地帯。早苗が風にそよぐ


新潟から秋田まで伝統の特急いなほに乗車


この日一番の楽しみだった笹川流れの車窓


稲庭うどんにしとけばよかった


1泊2,700円の安宿も駅から至近

秋田駅で立ち食いソバを食べて、居酒屋後のシメみたいな感じになってしまった。しかし青森まではまだ遠い。本日最後の列車である、奥羽北線経由青森行きの特急つがる5号に乗車した。E653系に継ぐE653系だが、今は亡き日本海縦貫特急の白鳥号リニューアル後とシートの仕組みは同じで、ちょっと懐かしい。晩年の下り白鳥と、このつがる5号はダイヤも似通っており、日本一長距離を走った昼行特急の面影を肴に再び飲み始めてしまった。矢立峠を越えると青森県。暗闇の中をひた走ること2時間44分。22時17分、青森ベイブリッジに迎えられて本日の行程を終えた。

青森の宿は、1泊2,700円のアウトバスの部屋。今日は遅くにチェックインしたし、明朝はチェックアウトが早いので、駅に近ければどんな宿でもOKである。結局、翌朝は午前4時前に目が覚めたので、予定より一本前の始発電車に乗車。夏至のころの北国は明るくなるのが早いのである。

奥羽線名物の「走ルンです」701系で新青森まで一駅移動し、東京行き始発のはやぶさ4号に乗車。盛岡ではやて112号に乗り継いで、この旅の唯一の目的地である、くりこま高原駅には8時08分に到着した。


青森ベイブリッジに迎えられ長い一日が終わる


青森を早朝出発。左上のデジタル時計に注目


701系走ルンですに乗らなきゃ青森じゃない


新青森の東京行き始発列車を盛岡で下車


くりこま高原に到着したはやて112号


くりこま高原駅前にある田んぼの畦道から撮影


時速320キロの衝撃はハンパない

上越妙高駅以上に何もない新幹線駅のくりこま高原では、ぜひ体験したいことがある。それはホームを320キロで通過していくE5系+E6系の迫力を体感するという酔狂なものである。現在最高速度320キロで運転しているのは、国内でいうと宇都宮〜盛岡間のみ。そのうち通過線がなく本線上にホームがあるのは、くりこま高原、水沢江刺、新花巻の3駅。以上の駅から今後もっとも来そうもない駅ということで、くりこま高原駅を選んだのである。

迫力の通過を体験するついでに、流し撮りで車両も撮影しようと思ったが、どうにもコンデジではうまくいかなかった。それでもはやぶさ10号・こまち10号の通過の瞬間は、ホームドアの内側にある赤色のテープが風圧でビリビリ音を立て、E5系とE6系の連結部分は気流が乱れて自分の体も揺さぶられるなど、ここでしかできない体験ができた。何もない駅での1時間半以上の滞在は退屈そのものであったが、まぁ満足いくものだった。

くりこま高原を9時44分に発車するはやて114号で東京に向かい、東京からは最後(6枚目)の指定券を使ってスーパービュー踊り子7号に乗車した。進行方向と逆向きだが10号車1番D席を手配しており、後方に流れていく車窓を眺めることができる。旅のシメに相応しいプレミアムなひとときを過ごしつつ、次回の大人の休日倶楽部パスの使い道をいろいろ妄想していた。


何もない駅に1時間半以上滞在し帰途につく


スーパービュー踊り子で熱海に到着。旅の終焉

<終>

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