海 上 ア ル プ ス
毎度お馴染みの京都競馬場〜帰りは京阪バス

これまで「ここは大事な場所だから後にとっておこう」と残しておいたところを、今年は解消しまくるつもりである。その中にはもちろん中央線の石和温泉〜酒折間の乗車も含まれるが、今回は40年来行こう行こうと思っていた屋久島への旅である。ここ10数年ほど、離島への旅を少しずつ進めてきたが、面積でトップ20の島のほとんどに足跡を残し、残すは屋久島と西表島だけになった。ことさら屋久島には思い入れがある。小学生のころ私は学校の図書室によく通っていたが、椋鳩十さんの「海上アルプス」という本は、かなりのお気に入りだった。今となっては内容はおぼろげであるが、直径30キロに満たない丸い小島に、2,000メートルを超える山がそびえるというシチュエーションにワクワクした。その後、屋久島は世界遺産に指定され、世界各地から観光客が訪れる島となったが、逆に敷居が高くなり、ここまで未訪のまま残っていた。

一方で「もうこれは潮時かも」と思うこともある。タバコもしかりだが、半期ごとに近鉄の株主優待券を使って訪れていた京都競馬場もそのひとつである。とりあえず今回と次回10月については、旅の途中での競馬観戦を組んだが、来年からはやめようかなとも思う。いつも平場の4〜5レースしか見られないし、さっぱり当たらないし、近鉄の優待券をもっと有意義な形で使いたいとも思う。そんなわけで、さまざまな思いが交錯しながら旅立ちの日を迎えた。

4月から禁煙を始めて3週間。もうすっかりタバコのない生活に慣れたが、旅をするのは初めてである。名古屋までのこだま号はN700系なので悩む必要はないが、名古屋で乗り継ぐ近鉄特急の座席指定は悩むところである。それは「空いた喫煙車」と「混んだ禁煙車」のどちらを取るかという問題。たいてい近鉄の喫煙車は空いていて、今までは一択で喫煙車に乗っていたが、今回からは事情が違う。結局、名古屋〜大和八木は喫煙コーナーのある車両(座席禁煙)に座り、大和八木〜丹波橋は喫煙車に座った。タバコの煙が蔓延していても、タバコを吸おうとも思わなかったので、わずかな期間でプロの禁煙者に近づいたということか…。

京都競馬収支表 (18.4.22開催)
投資 回収 収支 累計
京都3R 1,600 0 -1,600 -1,600
京都4R 2,600 1,780 -820 -2,420
京都5R 2,200 0 -2,200 -4,620
京都6R 2,700 0 -2,700 -7,320
京都11R 2,100 860 -1,240 -8,560
東京11R 2,000 0 -2,000 -10,560
合計 13,200 2,640 -10,560 20.0%

丹波橋で京阪に乗り換え淀駅下車。10時30分過ぎに京都競馬場に到着した。さっそく第3レースから観戦。3歳未勝利クラスの芝1,200メートルのレース。軸は1番人気のDブライトパスであったが、ゴール手前で脚色が鈍り4着に敗れた。4着では馬券にならない。続いて第4レースも3歳未勝利クラス。芝2,000メートルということでスタンド前からの発走である。こちらは順当な結果となり、1番人気→2番人気→4番人気の決着だった。馬連、ワイドの他、1着2着の馬の2頭軸3連複も購入していて、すべて的中。しかし順当であるがゆえガミってしまった。3連複だけならプラスだったので、馬連、ワイドが余分だった。

ここで中入りとなり、第5レースは昼休み明けの12時20分の発走。3歳500万下クラスのダート1,800メートルである。芝2,000メートルと同様にダート1,800メートルもスタンド前の発走である。軸はFエンパイアミライで、これも1番人気。しかし結果は、向こう正面でFがずるずると後退。スタンドからも悲鳴ともため息ともつかない声が上がった。結局、Fは最下位同着に終わり、まったく見せ場はなかった。そして、競馬場で観戦できる最後のレース、第6レースを迎える。こちらも3歳500万下クラスで、芝1,600メートル。京都のマイル戦といえば外回りコースが定番だが、2歳3歳の条件戦は内回りコースとなる。軸はEアトレヴィードで、これまた1番人気だった。オッズを見ずに軸馬を決めているので、4レースとも1番人気を軸にしてしまったのは、果たして良いのか悪いのか…。結果は軸馬が最後の直線で全く伸びず、ズルズルと後退。なんの手応えも得ぬまま京都競馬場を後にした。

競馬場からの帰りは、山崎方面直通の京阪バスに乗車した。阪急の西山天王山駅に向かうバスで、競馬場から10分少々で駅に到着。あとは阪急とモノレールを乗り継いで、伊丹空港に向かうだけなので、お財布的にも助かるルートである。

伊丹空港からはANA547便で鹿児島空港に飛んだ。鹿児島からの乗り継ぎ情報を入れているわけではないので、この便が遅れると大変ヤバイことになるが、それは杞憂だった。鹿児島には定刻に到着した上に、屋久島行きのJAC3759便は15分ほど遅延した。乗継時間35分でカツカツだったが、余裕の乗り継ぎとなり、事無きを得た。

というわけで屋久島空港には夕闇迫る17時半過ぎに到着。すぐにレンタカーの手続きをして、安房にある宿泊先「エコホテルSOLA」にまずチェックイン。部屋に入らずにそのままレンタカーのハンドルを握り、屋久島の西海岸を目指した。海に沈む夕陽を見たいと思ったからである。

安房は屋久島の東海岸に位置し、海に沈む夕陽を見るためには島を半周する必要がある。ここで右回りにするか、あるいは左回りにするかという選択を迫られるのだが、私は今来た道を戻るのがイヤで、右回りとなる南に進路を取った。後から考えれば、左回りである空港方面に戻り、宮之浦港を経て、志戸子や永田を目指せば良かったが、逆ルートを行ってしまったのである。その結果、島の西側の栗生に到着したのは19時ころ。岩場の海岸で撮った写真はトワイライトブルーに包まれていて、夕陽どころではなかった。

さて、ここでおとなしく宿に戻れば良かったが、「今来た道を戻るのはつまらん!」と更に前進を続けたため、ドツボにはまった。屋久島をドライブするにあたって下調べを少しでもしていれば、こんなことにはならないのだが…。屋久島をグーグルマップで調べると、外周が全て主要地方道である緑色で塗られている。しかし栗生〜永田間は「西部林道」と呼ばれている道で、その区間は民家が一切なく、世界自然遺産地域に含まれているという凄い道路である。おまけに大雨の道路陥没のため通行止めとなっていたところを応急復旧させ、昼間だけ通行止めを解除したとのこと。夜間は通行止めだが、クルマ止めなどがなく、そのまま知らずにこの区間に入ってしまったのである。

行けども行けども、真っ暗な狭い道路が続く。それもロング・アンド・ワイディングロードである。携帯はつながらない、クルマは通らないこの道で、もしもの事があったらどうなるだろう。ふと3年前のルート66ドライブのことを思い出し、その時と今の事態がそう変わらないことに不安を感じた。ブラインドコーナーを抜けるごとに、夜行性の野生のシカが道路の真ん中をゆっくり歩いており、轢いてしまった後のことを考えると、時速20キロ以上で走ろうという気には全くならない。サルに至っては、大きな群れが道路を囲んでおり、みんなで毛づくろいをしている最中に遭遇。轢かないように通過するのに苦労した。神経をすり減らしながら40〜50分を走り抜き、ようやく永田集落の灯りが見えてホッとした。永田集落を過ぎてかなり経ってから、道路情報の大型電光掲示板が「永田〜栗生 夜間通行止め」と表示しており、思わず「遅いよっ!!」と突っ込んでしまった。

永田を過ぎてからは、快適なナイトドライブに変わった。左手に本来目指すべき場所だった「東シナ海展望所」が見えたが、日没の時間は曇っていたので、こちらに来てもたぶん収穫を得られなかっただろう。それよりも懸案は今日の夕食のことである。もうすぐ20時になろうというのに、夕食にありつけていない。商店や外食のお店って、こんな島では夜8時までやっているものなんだろうかと不安になった。まぁ屋久島一の市街地である宮之浦に着くまでの杞憂だったが…。

宮之浦のスーパーで食材(つまみ)と酒を買い込み、20キロ先の宿を目指す。今回の旅は、最近多かった呑みテツの旅と異なり、アルコールとは無縁の生活。ゆえに宿に戻った後の酒盛りが、もの凄いモチベーションとなっている。そのうちに屋久島空港の横を通過し、屋久島一周が完了。21時前に、ようやく安房の宿に到着した。部屋で飲んだスーパードライの一口めが美味かったこと…。

翌朝は、朝7時前にホテルをチェックアウト。天気の崩れがなさそうなので、屋久杉を見に白谷雲水峡に行くことにした。1時間は現地で歩かねばならないので、レンタカーを返す時間も考えて、なるべく早い時間に宿を発つ必要があったための早出である。昨晩2回走った空港までの道を逆向きに走り、左手に海が見えてきたところで小休止。ふれあいパーク屋久島というパーキングガーデンで、すがすがしい朝の空気を吸って眠気を吹っ飛ばした。

再びハンドルを握り、宮之浦市街に入る手前の交差点で左折。県道594号線を登って行く。ツアー客のホテル出発時刻よりもかなり早いので、行く手を遮る観光バスは皆無。無人の峠道を走っている気分だった。ところで、レンタルしたクルマはマツダ・フレアで、ワゴンRのOEMである。このクルマが、あまりワインディングが得意でなく、速い速度でコーナーを曲がろうとすると、サスペンションが不安定となり、ひどいアンダーステアとなる。そのため、コーナーではしっかりスピードを落とさざるをえず、ドライブが全く楽しくない。まぁ島のドライブなので妥協は必要なのだが。


第3レースは芝1,200メートル。最後の直線


第4レースも3歳未勝利戦〜返し馬に向かう


芝2,000メートルのスタートはスタンド前


第4レースのスタート直後。第1コーナーに向かう


午後イチは3歳500万下ダート1,800メートル


芝1,600メートルだが内回りコースを使用


京阪バスで向かった先は阪急西山天王山駅


地下鉄線に直通する天下茶屋行き急行電車


JAC3759便はディレイし屋久島空港に到着


標準的な離島空港である屋久島空港


日が暮れるとシカやサルが出現

そんなこんなで7時30分ころ白谷雲水峡の駐車場に到着。管理棟で森林環境整備推進協力金なる入山料500円を支払い、ハイキングがスタート。いきなり歩道のない平板な岩を登るのにびっくりしたが、渓谷を遡って行く快適なルートだった。15分ほど歩くと「さつき吊橋」が沢に掛かっていたので、迷わず渡ると、いきなり難易度が高い登山道となった。二代大杉には吊橋より200メートルということなので、何も考えずに先へ進んでいった。ところが行けども行けども二代大杉にたどりつかない。いよいよおかしいと思い、地図をしげしげと見ると、吊橋を渡ってはマズイことが判明。結局、往復30分の時間をロスして、再び吊橋に戻ってきた。

吊橋から川を渡らずに登って行くと、ものの数分で二代大杉に到着。いかにも屋久島らしい光景に満足し、これで戻ってもいいかと思ったが、当初の予定通り弥生杉にも行くことにした。管理棟から直接弥生杉に行くと、標高差100メートルを一気に登ることになり、かなり大変だと管理人さんは言っていた。それゆえ二代大杉の後に行くことにしたが、なるほど、こちらからならほぼ登りはなく、なんなら軽く下っているような感覚で弥生杉の近くまで行けた。ただし、弥生杉の周りで急な階段が取ついており、ここでは息が切れた。弥生杉の根元でひとり休憩を取っていると、野鳥の声がかまびすしい。「あぁ、こういうことをしたくて、ここに来たんだ」と感じ、弥生杉での5分間が永遠のものに思えた。

白谷雲水峡からの帰り道は、往路で気になっていた「雲の展望台」バス停にクルマを停め、宮之浦方向の眺望を楽しんだ。また逆に、宮之浦港からの海上アルプスの風景も見事だった。港から屋久島最高峰の宮之浦岳が見えるのかどうかは分からず仕舞だったが、40年来見たかった標高0〜2,000メートルの島の全容を見ることはできた。これで、ほぼほぼ屋久島でやりたかったことをやり尽くした。最後に、屋久島大社に立ち寄り、この後の旅の平穏を祈り、空港に向かった。


トワイライトブルーに染まる栗生海岸


永田岬への長く曲がりくねった道を行く


宿泊先のエコホテルSOLAの玄関にて筆者


同じくレンタルしたマツダフレア(=ワゴンR)


渓谷に沿って歩道を登っていく


さつき吊橋を渡ったのが間違い


屋久島っぽい大杉が撮れて満足

冒頭でも触れたが、日本の島トップ20で未訪問の島は、今回屋久島を訪れたことで16位の西表島だけになった(北方領土を除く)。こちらは早々に行くとして、「もうすぐトップ20」ということで、北方領土を除くトップ20の島々にも、ぜひ訪れてみたい。さしあたっては、何度もチャンスがあった小豆島には早いうちに行ってみたい。周防大島もJR西日本の株主優待券で行けそうである。その他、五島列島の中通島、北海道の奥尻島、そして空港に降りただけの利尻島にもゆっくり訪れてみたい。なにか千鳥の「島シリーズ」みたいになってきた感じはするけど…。


ふれあいパーク屋久島より宮之浦方面を望む


白谷雲水峡の入口はかなりフォトジェニック


二代大杉は思いのほか近かった


弥生杉へは二代大杉の後がオススメ


雲の展望台バス停付近からの眺望


宮之浦港より海上アルプスを望む


クラシックな風合いの宮之浦港県営待合所


最後に屋久島大社に立ち寄り

<終>

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