弘前の美しい春


このきっぷで弘南鉄道乗り放題


日本最北の私鉄といえばストーブ列車で有名な津軽鉄道だが、私鉄電車となると同じ津軽平野を走る弘南鉄道ということになる。津軽鉄道には何度か乗っているが、弘南鉄道の方は未乗のままである。そこで弘前の最も美しい季節である5月上旬に弘南鉄道に乗りに行くことにした。

JR東海ツアーズの「EX旅パック」という商品が新幹線の普通車指定席の往復とホテル一泊がセットになってお得なので、今回の旅ではこれを利用することにした。お茶の水のホテルジュラク素泊まりと浜松⇔東京間の往復がセットで22,550円。浜松⇒東京の新幹線代だけで片道8,440円(通常期)なのでかなりお安い。山手線内のホテルに泊まるのは久々で、どんなホテルかと思って泊まったが、割と高級感があってびっくりしたのは後のお話しである。

さて、東京から北に向かうきっぷはJR東日本の株主優待券を利用して4割引。せっかくなのでグリーン車をおごったが、半数以上はインバウンド客が占めていた。円安の影響で日本国民では手が届きにくいグリーン車であってもホイホイと乗れてしまうのである。東北新幹線での3時間はゆったりと移動し、正午過ぎに新青森に到着。ここからが本番である。

津軽平野にそびえ立つ岩木山


弘南鉄道弘南線の終点 黒石駅

秋田~青森間の通称奥羽北線は冬に乗車することが多く、車窓は雪景色ばかりで代わり映えしなかったが、季節のいい5月に来ると印象が違う。木々は若葉でもえぎ色。遅咲きの桜が咲き、畑には菜の花が黄色の彩を添える。そして青森といえばなんといってもリンゴ畑。可憐な白い花が咲き誇り、まさに美しい春の様相であった。特急で26分で弘前に到着し、弘南鉄道弘南線に乗り換えとなる。

弘南鉄道の沿線は広大な津軽平野を走るということで、山越えの奥羽北線以上の美しい車窓となった。田舎館付近では山頂に雪をかぶった岩木山が進行方向左側に姿を表し、田植えが近い水田とあいまってこれぞ津軽の春といった感じである。

さて弘南鉄道では「大黒様きっぷ」という一日フリー乗車券を販売していて券売機でも買える。弘前⇒黒石の片道が470円だったので、手元にきっぷが残るならと1,000円出したが、よくよく見ると弘南線のほかに大鰐線も乗れるということでびっくり。黒石まで往復した後、中央弘前から大鰐まで片道乗車したので、ずいぶんと得した気分になった。

かつて国鉄黒石線~弘南鉄道黒石線の駅跡地である黒石駅前の殺風景な駅前広場を一瞥し、14分後の折り返し電車で弘前方面に戻った。往路は前面展望の動画撮影をしたので車窓をじっくり楽しめなかったが、帰りの方は気が楽なのでじっくりと車窓を堪能することができた。

弘前駅に到着後は城東口からコンコースを通ってバスターミナルのある中央口に移動。弘前市街地にぽつんとある弘南鉄道中央弘前駅まで行かねばならない。JR弘前駅から1.5キロほど離れており、最初は徒歩連絡も考えたが、かったるいので10分間隔で発車する弘南バス土手町循環バスに乗車した。5分ほど乗車し中土手町バス停で降りると中央弘前駅はほんの200メートルほどの距離にある。もっとも弘南鉄道大鰐線が60分おきの発車なので、徒歩連絡でもバス乗車でも同じ電車に乗ることにはなったが。

中央弘前からの大鰐線は平日の16時30分発車ということもあって高校生がたくさん乗車していた。あまりスピードが出ない電車なので免許証所有者はクルマの方が便利で早いが、高校生はそうはいかない。特に冬場は自転車に乗れないので大鰐線が無くなれば通学できない生徒が出てくるだろう。大鰐線は2027年度末での全線運行休止が伝えられたが、暖地に住む我々では思いもゆかないような断腸の決断だったと察せられる。

太陽が西に傾いた津軽平野を電車はとことこと走り、中央弘前から30分余りで終点大鰐駅に到着した。これで実質的にこの旅は終わりで、駅前の足湯に浸かって一息ついた。しかしこの後にお待ちかねの「居酒屋新幹線」グランクラス乗車が控えている。飲み放題なので大いに酔っぱらってしまおう・・・。


JREポイントのアップグレードで久々にグランクラスに乗車。飲み放題で酔っぱらった


弘前の町中にぽつんとある中央弘前駅


JR大鰐温泉駅と駅前の足湯(右側)


大鰐温泉駅の足湯で一息

<終>

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