株主優待で行く加太温泉
和歌山市行きサザン25号〜自由席車は7100系

今年のNISA枠で、東武、富士急、南海の株を買った。株主優待目的の銘柄ばかりで、「オマケ欲しさにお菓子を買うこども」みたいで恥ずかしい。で、南海の株を買った時に計画したのが今回の旅行である。既に所有している名鉄、近鉄の株主優待も使うことで、豊橋から和歌山の加太温泉まで交通費がただで行けてしまう(有料特急の料金は別払いだが)。この機会に3社の有料特急を乗り較べをしてみようという段取りである。

2018年10月5日(金)、浜松を8時32分発の豊橋行き普通列車で出発。この列車は特急伊那路号の間合い運用で、普通運賃だけで特急型車両373系に乗れる。この時間帯だと車内は空いており、リクライニングシートを目いっぱい倒して悠々と豊橋に向かった。ここまでが旅のプロローグ。豊橋で名鉄特急に乗り継いで、本編がスタートとなる。名鉄の券売機でミューチケットを購入したが、明日の帰りのミューチケットまで買おうかどうか、ちょっと迷った。というのも、今まで帰りの分のミューチケットを買うと、決まって乗り遅れるか、ルートが変わったなどの理由で、払い戻しができず、無駄にすることが続いていたからだ。今回も台風25号が日本に接近しているとのことで、予定通り乗れなくなるケースも考えられるが、まぁフイにしても360円のことなので、懲りもせず帰りのキップも買ってしまった。ま、台風はそれたので、翌日は予定通り進み事なきを得たが…。

新鵜沼行きの快速特急はパノラマスーパー。最後尾になるのを承知で展望席を指定した。進行方向逆向きになるので、下り列車の展望席は空いている。最後列のシートでかぶりつきの後方展望(こういう言い方が妥当なのかどうか…)を楽しんだ。もちろん展望席にのるからには、前面展望が見られるに越したことはないが、後方展望もこれはこれで趣がある。トワイライトエクスプレスやカシオペアのスイートルーム、あるいはななつ星のDXスイートなど、目の玉が飛び出るような高額で競争率が高いチケットは、軒並み後方展望である。そう思って乗れば、パノラマスーパーもラウンジシートのように感じられ、朝10時前からウィスキーの水割りをちびちびと飲みたくなってしまうのである。


南海10000系の車内でくつろぐ筆者

名古屋には10時20分過ぎに到着。名鉄と近鉄の連絡改札に株主優待券を2枚投入し、特急ホームに向かうと、10時30分発のアーバンライナー・プラスが入線してくるところだった。今年の暮れまでの限定企画で、近鉄の名阪特急を乗車7日前までにチケットレス予約をすると、普通なら1,900円かかるところが1,000円に割り引かれる。DXシートにグレードを上げても名古屋→大阪難波間が1,510円なので、当然DXシートを予約した。510円の追加で、シートピッチが広く、両側のひじ掛けが使い放題の独立シート(台湾流に言えば「総統シート」)を2時間以上座れるので、ある意味乗り得である。

大阪難波までの2時間20分は、酒を飲んだり、居眠りしたりで、まるで自分の部屋にいるようなくつろぎ方で過ごした。列車から降りるときには「もう少しこのまま乗っていたい」感じで、南海難波駅への引っ越しがずいぶん億劫に感じた。人波に揉まれながら難波の地下道を歩くこと数分。すっかり見慣れた長いエスカレーターに身を任せる。「大阪のエスカレーターって右に乗るんだっけ?それとも左?」と戸惑いながら一気に3階へ。関西の大手私鉄にありがちな、頭端式ホームが見渡せる改札口から、目指す列車を探した。お目当ての列車は、発車20分以上前だというのに、既に入線していた。武骨な昭和顔の南海7100系。和歌山市行きサザン25号の自由席車である。ロングシートが並ぶ70年代初期の車両を横目に見ながら前方に進み、編成の半分まで来たところで雰囲気が変わる。前側の4両が10000系の指定席車である。リクライニングシートが設置され、難波〜和歌山市間の指定料金は510円と安く、朝晩の通勤時にはホームライナー的な感覚で利用される。

10000系は1985年に登場しているので、既に車齢が30年を超す車両もあるが、依然として格好のいい電車である。惜しむらくは、窓框がないに等しく、またテーブルはひじ掛け収納型のため利用が億劫で、結果的にペットボトル類の置き場所に困る。この点は後に記す後継車の12000系で、ネガが見事に消されている。さて、席に座ってだいぶ時間が経った後に、静々と難波駅のホームより出発。まずは複々線の区間を行く。天下茶屋で高野線と別れ、堺、岸和田、泉佐野と停車していく。ここまではラピートに何度も乗っているので、勝手知ったる区間である。ところが泉佐野より先の区間は未乗であり、酔っぱらってダラダラしている場合ではない。眠気も襲ってくるが、しっかりと目を見開き、未乗区間の車窓を目に焼き付けた。泉佐野より先、みさき公園までの区間は、進行方向右手に大阪湾が見え、晴れているので気持ちのいい車窓が広がる。みさき公園から先は一転して山岳区間となり、峠を越えると和歌山県。紀の川を渡って和歌山市に到着。難波から59分で到着し、表定速度は65.3Km/hである。

和歌山市で南海加太線に乗り換える。基本的に特急サザンと連絡がとれており、ホームの売店でお土産を物色していたら乗り遅れそうになった。車両は2200系が使用されている。この車両は先ほどの特急サザンの自由席車7100系を、17mに縮めて2ドアにしたような車両で、やはり昭和40年代製造と車齢が40年を超えている。最近では「めでたいでんしゃ」としてラッピングされた車両も走っており、なんとか赤字ローカル線を維持していこうと南海も必死である。20分ほど単線を揺られると終点の加太駅。駅前にはホテルの送迎車が待っていた。その送迎車の運転手さんの話では、加太のような漁師町は大阪や和歌山に近すぎて、若者のほとんどが都市にいってしまい、衰退が激しいという。確かに翌朝に裏通りを歩いてみたが、昭和のころは立派な町であったことが偲ばれた。今では見る影もないことだが…。その昭和の町並みを観光化しようと、南海は「めでたいでんしゃ」を仕掛けたわけである。

今晩の宿であるシーサイドホテル加太海月には15時に到着。オーシャンビューの部屋でくつろいだり、海の見える温泉露天風呂でのんびりするには十分な時間がある。さっそく部屋に入り、海を眺める。台風25号が接近しているということで、曇りベースながら時折太陽が顔を覗かせるという天候だが、波間がきらめいている。晴れ上がった夕刻なら、部屋から海に沈む太陽が拝めそうな感じである。これで1人で泊まって、素泊まり6,480円+入湯税150円なら、コストパフォーマンスが高すぎである。部屋からの海はこれくらいにしておいて、次に温泉からの海を眺めに行く。平日の15時にチェックインする客は私くらいなもので、当然のごとく一番風呂をいただいた。露天風呂で潮風に当たっていると、日頃のストレスがいつのまにか消えていくようである。5月、6月、7月と3か月連続でオーシャンビューの部屋に泊まったが、また10月にも温泉のあるオーシャンビューの部屋に泊まれて大満足。これからもこんな温泉宿を見つけては旅をしたいものである。

部屋に戻ってからは例によって酒盛り。夕暮れの海を見ながら、後の心配をすることなく酒を飲むのは至福の時である。まぁ朝10時前から飲んでいるので、早々にお開きにしたが…。窓の外が暗くなると、やることがなくなり早々に眠ってしまった。ゆえに翌朝は3時台に目が覚めた。正確に言えば、波の音がうるさくて何度も目が覚めたが、いよいよ眠れなくなったのが朝4時前だったということである。

台風の外側の雲がかかっているのか、ホテルをチェックアウトする頃は本降りだった。それでもホテルの隣にある淡嶋神社だけは参拝し、その足で駅に向かった。この旅の行程中、もっとも降ってほしくない時間帯に雨が降ってしまったが、己の不運を呪っても仕方ない。ホテルから駅まで2キロ弱の道程を、傘を差しながら足早に歩く。1キロほど歩いたところで雨脚が強くなり、全身がずぶ濡れとなった。こうなると土砂降りだろうがなんだろうが、あまり関係なくなり、とにかく早く駅に着かねばということだけに集中した。結局、一番雨がひどい時間に歩いた格好となり、下着までずぶ濡れ。リュックの中身も濡れてしまった。

加太駅のベンチで呆けたように電車を待っていた。まるで白くなった矢吹丈のように。7時27分、加太駅のホームを離れて電車は和歌山市に向かう。その頃には雨がやみ、紀の川を渡ることには太陽が顔を出していた。ほんの少しのタイミングで、一日快適に過ごせるか、不快な気持ちで過ごす羽目になるかが変わる。靴を脱げる電車の中はいいが、再び靴を履くときが最も不快である。終点の和歌山市に到着し、隣のホームで待っている特急サザン10号難波行きに乗り換えた。


製造から30年を経ても色あせない10000系


「めでたいでんしゃ」の終着駅・加太線加太駅


シーサイドホテル加太海月のオーシャンビュー


条件が良ければ海に沈む夕日も見られそう


部屋のベランダより田倉崎を望む


右端に虹がうっすら見えるが翌朝は雨模様


雨の朝、徒歩で加太海月を後にする


ホテルの北隣にある淡嶋神社の鳥居


雨に濡れる淡島神社の本殿


土砂降りの中ようやく加太駅にたどり着いた


サザンプレミアム12000系にて

乗車した電車は、2011年に登場した「サザンプレミアム」12000系。前述のとおり10000系時代にあった欠点は全て改善されており、乗っていて気持ちのいい電車である。7時59分発の難波行きなので、平日なら指定席も満員だろうが、土曜日なのでそこそこ空いているのもいい。県境を越え、泉州の平野を快走し、あっという間にミナミの町並みに入って行く。難波到着は8時57分。これまた「いつまでも乗っていたい電車」だった。

御堂筋線で淀屋橋に移動し、次は京阪の出番である。今年になって導入された京阪特急のプレミアムカーが話題で、ここまで来たなら乗っておきたい。ところが全ての特急にプレミアムカーが連結されているわけではなく、加太を出発する時刻を鑑みると、淀屋橋9時20分発の列車に乗るしかない。しかしこの列車では、京都競馬の第1レースに間に合わない。プレミアムシートと第1レースを天秤にかけて、やはりプレミアムカーを取ることにした。

淀屋橋駅ホームに入線してきた8両編成の電車のうち6号車がプレミアムカーである。2列+1列のアブレストで、シートピッチもゆったりしている分、定員も控えめで40席しかない。このため乗車した電車は京橋までに満席となった。私が座ったのは、例によって総統席の6番C。樟葉までの30分弱は、まさに総統気分で、この旅で最も「いつまでも乗っていたい電車」だった。

樟葉で普通列車に乗り継ぐと、途端に鉄火場の雰囲気が漂う。ロングシートを埋めるおっちゃん達の手には、赤いペンと新聞。既にネットで馬券を買っている自分は、さもそういうおっちゃん達とは別の人種のように振る舞っているが、淀駅で降りることでお里が知れてしまう。旅の途中で競馬場に立ち寄る、いわゆる「旅打ち」は今回が最後と決めており、なんとか有終の美を飾りたい。そんなことを考えながら改札を抜けて、競馬場への長いコンコースを足早に歩いた。


加太線は基本的に17m2ドアの2200系で運転


2011年に登場したサザンプレミアム12000系


淀屋橋から京阪特急で京都競馬場に向かう


せっかくなので樟葉までプレミアムカーに乗車


京阪プレミアムカーにて筆者


2列+1列のJR特急グリーン車なみのアブレスト

京都競馬場のゲートをくぐるころには、既に第1レースの結果が出ていた。本命馬はJスマートセラヴィー。この馬が1番人気に支持され、その期待を裏切らずに1着入線。2着に4番人気、3着に9番人気の馬が入った。買い目は、今日勝負する4レースとも、軸馬からの馬連とワイド総流しとしており、小頭数の第3レースは、3連複軸1頭総流しも追加している。

ガミるリスクが大きい総流しをしたわけは、4日前の火曜日阪神第1レース2歳未勝利戦で、軸馬が勝ちながら、2着の人気薄がヌケていて、万馬券を取りそこなったトラウマからである。バヌーシーでアイワナシーユーという馬を1口買ってみて、2歳から3歳の未勝利戦でも、よもやという馬が激走するケースを何度も見たからでもある。

第1レースの配当は、馬連が720円、ワイドが410円と960円で、トータル310円の赤字だった。やはり1番人気からの総流しではガミる可能性が高い。

京都競馬収支表 (18.10.6開催)
投資 回収 収支 累計
京都1R 2,400 2,090 -310 -310
京都2R 1,800 900 -900 -1,210
京都3R 3,500 1,910 -1,590 -2,800
京都4R 3,000 7,710 +4,710 +1,910
合計 10,700 12,610 +1,910 117.9%

続く第2レースの軸馬はAヘヴンリーウィンド。レースとしては、2歳未勝利クラスという条件は変わらず、コースが芝に変わって1,400mである。軸馬は直線で3番手になるも、2着の馬をかわせずクビ差の3着で入線。馬連を取り逃し、ワイドは470円と430円の配当だった。このレースの収支はマイナス900円。トータルのマイナスは1,210円となった。

第3レースは、2歳未勝利クラスの芝1,800m。前述のとおり8頭立てなので、3連複軸1頭総流しも追加した。買い目の合計が3,500円の勝負レースである。軸馬はGハギノアップロード。新馬戦から3戦続けて3着という堅実派で(決め手に欠けるともいう)、2走めは札幌の芝1,800mのオープン、コスモス賞を走っている。レースの方は、小頭数だと1番人気が意外に3着までに入らないケースが多く、ここでもそうなった。軸馬は2番人気に支持され2着を確保。しかし1着が3番人気、3着が4番人気と、結局上位人気が馬券圏内を独占。配当が馬連640円、ワイド230円と250円、3連複が790円と全くつかなかった。トータルで1,590円のマイナスで、累計するとマイナス2,800円となり、最後のレースを迎えることとなった。

今日の最後の勝負となる第4レースは、新馬戦ダート1,400m。当たり前だがすべて未出走馬なので、血統などを参考にするしかない。母馬やきょうだいが成績がいいのはBクインズローズ。母はケイアイガーベラで、プロキオンSやカペラSなど、ダートの短距離重賞を勝っている実績馬。1歳上の兄は、今年のNHKマイルカップ(GT)を勝ったケイアイノーテック。非の打ちどころがなく、1番人気は必至と思われたが、結局2番人気に落ち着いた。

レースの方は、終始先手を取り、2番手につけていた軸馬が、ホームストレッチに入ったところで先頭に立ち、その後Aスマートモリガンと競り合いながらゴール。クビ差の2着だったが、1着は5番人気、3着は人気薄の12番人気が入線し、総流し効果が爆発。配当は馬連1,840円、ワイドは640円と5,230円で、このレースの収支はプラス4,710円。累計でも赤字を解消し、1,910円のプラスで終えることができた。このところ馬券を買うと損してばかりだったので、久々に少しでも勝ことができ、めでたい。

というわけで、旅打ちの方は一区切り。今後はバヌーシーで投資している馬を追っかけて、どこかの競馬場に出没するかもしれない…。その時には、再び「競馬にイプゥー」のコーナーでお会いしましょう…。


旅打ちでは今回最後となる京都競馬場正門


第2レースの最後の直線。軸馬は惜しくも3着


第3レースの返し馬。このレースが勝負だが


朝の土砂降りが嘘のよう。すっかり晴れた

<終>

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