シリーズ“日本を走ろう”C

九州一周 ストレートシックス


3リッター直6の11代目クラウンと筆者

シリーズ“日本を走ろう”もいよいよ最終章。昔のCMのキャッチコピー「いつかはクラウン」ではないが、ラストは日本の自動車の歴史に良きにつけ、悪しきにつけ多大な影響を与えてきたトヨタ・クラウンを運転してみようと思う。今回、ニコニコレンタカー福岡別府店で借りたクラウンは、2001年型の特別仕様車「ロイヤルサルーン・プレミアム21」。既に12年落ちで走行距離は9万キロを超えていたが、レンタカーになる前のオーナーがおとなしい方だったのか、変なクセもなく乗りやすかった。11月2日(土)午前9時。お店の人からキーを受け取り、さっそくドライブをスタートさせた。

走り出して、すぐ気になったのは燃料計。さっきお店の人から「ガソリンは満タンで入っていますので、満タン返しでお願いします。」と説明を受けたばかりなのに、あきらかに燃料計は満タンではなく、Fと真ん中の目盛りのやや真ん中寄りを指していた。返却して、すぐに貸し出すような人気車ならともかく、貸し出しと貸し出しの間のメンテナンス等で多少ガソリンが使用されているのは仕方がないと思うが、ちょっとありえない状況だった。ちなみに満タン法で測った燃費では、福岡から水俣までの211.8Kmで、32.05Lタンクに入って6.61Km/L。その後の水俣から宮崎で宿泊して福岡までの区間は、668.2Km走行して、51.58Lタンクに入って12.95Km/L。逆算すると満タンから15Lくらい使用された状態で貸し出されたと思う。ちょっと憤慨したが、考えてみればクラウンを2日間借りて料金は10,475円。中古とはいえ普通に大手のレンタカーを利用すれば倍以上のお金を取られる訳で、まぁこのくらいのことは目をつぶろうと思った。

野芥ランプより福岡都市高速に入り、大宰府インターから九州道へ。さすがに三連休初日午前中の下りということで交通量は多めだが、80Km/h以下に速度が落ちるということはなかった。鳥栖JCTを過ぎると、交通量が三方に分かれるため流れも落ち着く。広川SAで1回目の休憩。このSAは九州北部各県の土産物が買えるのでありがたい。さっそく明日走る予定の大分の土産を購入した。駐車場は満だったのでクルマの撮影はあきらめ、次のPAである山川PAであらためて撮影をした。恒例によりボンネットフードを開けエンジンを撮影。3リッター直列6気筒のエンジンが、運転席よりに縦置きされていて、いかにも後輪駆動らしいレイアウトである。エンジンの形式は2JZ-FSEで、トヨタとしては事実上最後の直列6気筒エンジンである。続いて斜め後ろからも撮影。フロント側のオーバーハングが短く、リア側のオーバーハングが長い、オーソドックスなFRセダンのスタイルで、破綻はないが面白みのないデザインである。ひととおりクルマの撮影を終えて再び本線に戻った。

福岡と熊本の県境区間では交通量がぐっと減り走りやすい。上り坂とカーブが続き「この辺が田原坂かなぁ」と思っているうちに「熊本」の文字が距離表示板に目立ち始め、そして通過した。次の目標は八代だが、八代以南は南九州道で休憩場所も限られるので、宮原SAでもう一度休憩。ポツポツと雨も降り出してきた。

八代JCTを過ぎて対面通行区間となる。南九州道は部分的に開通しており、有料区間と無料区間も混在している。八代側は日奈久ICまでが有料区間。日奈久から芦北までが無料区間。この先は工事中となり、国道3号線を走らなければならない。この後、水俣と出水の間で県境を越え、阿久根を過ぎて川内までの約70キロはずっと一般道を走ることになる。特に水俣市街地は駅前を通過するため信号が多く、時間がかかる。ようやく市街地を抜け、鹿児島県に入ると、このドライブ随一の目的地の「出水ツル渡来地」までの距離がカウントダウンされる。徐々に数字が小さくなり、案内通り国道を右に折れ、田んぼ道をしばらく走るとツル観察センターに到着した。時刻は13時過ぎ。かなりの長い道のりに感じた。


出水ツル渡来地で群れをなすツル


2JZ-FSE型3L直列6気筒を縦置き配置


後輪駆動らしく前輪のオーバーハングが短い


ツル渡来地にあるツル観察センターにて筆者


展望所の望遠鏡にカメラを押し付けて撮影


国指定の特別天然記念物である出水ツル渡来地。立ち入りは制限されている


観察センター駐車場にてバックビューを撮影

さて、出水のツル渡来地は初訪問。出水駅からは遠く、クルマでないと訪問は難しいので、興味はあっても今まで先延ばしにしてきた。来る前のイメージはツルが餌付けできそうな場所で見られると思ったが、防疫のためツルへ近づくことが制限され、ツル観察センターから数百メートル先に群れをなしているツルを見る格好である。観察センターの入場料は210円だが、展望所に備え付けられている望遠鏡は有料(100円)なので、思う存分観察したい方は双眼鏡などを持っていく方がいいかも。で、私はそんな予備知識を持ちあわせていないため、望遠鏡のお世話になった。なんとかツルを撮影したいと思い、望遠鏡にカメラのレンズを押し付けて撮ってみたら結構うまく写った。ツルが写っている上の2つの画像は、そんな風にして撮ったわけである。とりあえずツルが見られたので目的は達成。クルマに戻り先を急いだ。

出水を抜けても高速道路はまだ遠い。国道3号線は海沿いを走り、晴れていれば景色の良いところだと思うが、今日はあいにくの雨模様。海の色は鉛色である。阿久根を過ぎて薩摩川内市内に入って10キロほど行くと、ようやく南九州道の一部開通区間に到達した。薩摩川内市街にはそのまま国道3号線を行くよう案内されているので、「本当にこっちでいいの?」と一瞬思うが、構わず「高江方面」とだけ書かれている真新しい道路を進んだ。川内川を渡って、あっという間に終点。結局、県道43号線を走って川内駅方面に向かわざるを得なかった。

前回のティアナのドライブでも触れたが、旅に出ると予期せぬイベントにぶつかることが多い。今回もここ薩摩川内でぶつかってしまった。「川内はんやまつり」の開催のため、市街地は交通規制が敷かれ大渋滞中。国道3号線に戻るまでかなり時間を使ってしまった。そのくせ川内駅前で右折すると、隈之城バイパスという片側2車線道路ということもあってか、今までの渋滞はうそのように流れた。そのうち薩摩川内都インターを通過し、念願の南九州道の鹿児島側開通区間に入った。

都から市来までは無料、市来から鹿児島までは有料というのは八代側と同じパターン。鹿児島まで対面通行区間で、刺激が少なく眠くなってしまった。とはいっても本線上で休憩できる場所は九州道桜島SAまでない。眠気を噛み殺しながら鹿児島インターで左折し九州道へ。ほとんど森進一状態で桜島SAにたどりつき、クルマを停めると同時にリクライニングを倒した。

仮眠後、桜島SAを出発するとすぐに加治木JCTを通過し、東九州道へと入る。例によって対面通行区間で、85Km/hほどで走る。末吉財部ICで国道10号線に下り、都城市街を経由して都城ICから宮崎道へ。こうして書くと、さもスムーズに走ったと思われるかもしれないが、実際は都城市街でかなり時間を費やした。おまけに浜松市内と一緒で、片側2車線の道路がいきなり1車線になったり、また広がったりで、初めてこの町を運転した自分にとっては大変スリリングな運転だった。

都城ICから宮崎道に入ると、もう宮崎に着いたようなもので、実際に宿泊先のANAホリデイインリゾート宮崎には30分そこそこで到着。和室に通され、部屋に内風呂もあったけれど、露天風呂つきの温泉大浴場につかった。「ホリデイイン」といっても、中身は完全な温泉旅館なんだと思った。


ANAホリデイインリゾート宮崎の和室に宿泊


道の駅日向にて日豊本線と日向灘を撮影


東九州道の開通区間でも最も辺鄙な区間


氷雨に濡れる蒲江インターの入口にて

翌日11月3日(日)は九州の東海岸をひたすら北上する。ホテルを出て国道220号、宮崎道を経由して清武JCTより東九州道に入る。例によってほぼ対面通行が続く道路である。ここで私はクルーズコントロールを85キロにセット。昨日もちょいちょいクルコンを使っていたが、今日は大活躍である。結局、清武JCTから都農インターまでの約50キロの区間で一切スピードを変えることなく走りきった。クルコンはアップダウンがあっても速度を一定に保ってくれるので、東九州道のようなアップダウンの激しい片側1車線の交通量の少ない道路で、最も威力を発揮するのである。もちろん燃費にも寄与する。これを体験して、マイカーのプリウスにもオプションで付けておけば良かったと後悔してしまった。

都農インターから日向インターまでは東九州道の未開通区間で、国道10号線を走る。この日の行程の中で一番辛い区間で、我慢ができなくて道の駅日向で休憩。リフレッシュしたあと、日向インターまで走り再び東九州道に入る。延岡を過ぎて、須美江インターまで走り、またも未開通区間へ。宮崎・大分の県境区間なので、交通量が少なく一般道でもストレスは少ないが、それでも交通弱者には気を使う。やがて北浦ICを通過し、県境を越えて大分県へ。終点の蒲江ICには普通の観光客はまず来ないだろうから、クルマを入れて記念撮影をした。

蒲江ICと佐伯ICの間は約25キロ。主に県道37号線で結ばれている。今回のドライブでは福岡市内を除いて最後の一般道区間である。昼飯前でちょっとイライラしながらの運転だったが、道路自体は交通量も少なく、それほどストレスなく30数分後には無事に高速道路に復帰した。昼飯も別府湾SAのタイムヒルズカレーで「とり天カレー」(左の画像)を食べて無事解決。900円とスナックコーナーとしてはいい値段だったが、この旅でまともな食事はホテルの朝バイキングだけだったので、まぁ話のタネにはいいかなと思った。それにしても楽しみにしていた別府湾の眺めは、雨が降り続いており霧の中に隠れていた。それじゃ、景色を諦めて再びハンドルを握ろう。福岡市内までは130キロほど。あと1時間半もあれば到着するだろう・・・。

風光明媚で知られる別府湾SAは霧の中

<終>

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