トレイング2000 Vol.2

JR東日本のりつぶしの旅


浜松駅にてひかり206号
☆アプローチ
◎平成12年3月4日(土) 天気 晴れのち雪
JR東日本の乗りつぶしキャンペーン「トレイング2000」のレベル2(5000ポイント)達成を目指して、浜松を8:06発の「ひかり206号」に乗車した。今年の「Spring Tour」は2月に続いて2度目ということで、我ながらいいペースで旅に出ている。土曜日の上りのひかり指定席はさらりとした乗車率で、ゆったりと旅の始まりを楽しんだ。FMラジオの周波数を合わせて「オーディオサービス」に耳を傾けると、Jポップの話題の新曲特集などを放送していた。このごろラジオでよく聴くAikoの桜の木の下での1フレーズ「ゆっくりゆっくり・・・」そのままの「ゆっくり」気分で旅はスタートした。そういえば、300系使用の「ひかり」は100系「こだま」よりスピード感がないような気がするけど、そう感じるのは私だけだろうか・・・
「オーディオサービス」は続いて「話題のアルバム」特集となり、スピッツのベスト盤「リサイクル」が流れ始めた。発売以来すごい売れ行きだそうで、ダブルプラチナを記録したそうな。「新しい季節は・・・」で始まる「ロビンソン」のイントロを聴くだけで何か目頭が熱くなってしまう「パブロフの犬」状態は、この曲を初めて耳にした時の精神状態がどん底だったことに起因するのだろうか・・・。ともかく多摩川を渡って大田区あたりの高架線から眺める都心のビル群にこの曲は絶妙にマッチしていた。
東京駅で例によって「ウィークエンドフリーきっぷ」を手に入れて、北に向かう新幹線ホームに上った。次に乗車する「つばさ121号」の自由席乗車口は発車30分以上も前というのに車両1両分以上の長蛇の列。ここでは書けないが「合法的だが倫理上いけないプレー」を駆使して自由席にありついた。

雪深い米沢駅ホーム
混雑激しいつばさの車内では、今後に備えて駅弁を2つたいらげて、またブタさんに一歩近づいた。満腹となった後はもっぱら惰眠をむさぼった。奥羽線区間に入り板屋峠を上り下りする頃には車窓に雪景色が広がり、赤湯を過ぎたあたりで広がる墨絵のような置賜盆地には毎度のことながら感動を覚える。つばさは雪煙を上げながら快走を続け、13:48に新庄駅のホームに滑り込んだ。

車窓には置賜盆地が広がる

つばさ車両400系のロゴマーク
@奥羽南線
新庄からは鈍行列車の旅。旅情派には不評の701系ロングシートの2447Mに乗車する。9分の好接続であるが、車内は地元の高校生などで満員で、着席はあきらめて先頭車両運転席うしろの「レールファン御用達ポジション」に陣取る。ご同好の輩も多数このポジションに立っていた。電車に乗車してものの10数分、3〜4駅停車すれば、車内の大多数を占めていた高校生は下車し、ゆったりとシートに腰を下ろした。
車内の暖房の影響か、睡眠不足のなせる業か眠気が襲い、雪景色が続く車窓の単調さも手伝って再び眠りに落ちた・・・。どれくらい時間が経っただろうか、「ドカン」という大音響に目が覚めた。すわ衝突事故!?と身構えたが、他の乗客の話しに聞き耳を立てると、どうやら落雪を跳ね飛ばしたらしい。電車はスピードを落としてそのまま走行し、次の院内駅でワンマン運転の乗務員さんが点検を行った。幸いにも、そのまま運行可能なことを列車司令に無線で伝え、たいした遅れも無く横手駅まで走行した。
横手駅で応急処置が施され、車両を交換することなく発車。安心感で再び眠気が襲ってきた。うとうとしながら至福の時を過ごし、気がついたら終着の秋田駅進行のため列車はスピードを落とし始めていた。

ロングシートの701系に乗車

応急処置後の2447M電車

秋田駅にて特急「かもしか3号」

A奥羽北線
秋田での乗り継ぎの時間でまたもや駅弁を仕入れる。「ハタハタ酢めし」というなんとか賞を受賞した駅弁で、車内で酒を飲んだ後に食べたら美味かった。ただ、肝心のハタハタは、なんかカワハギみたいだった。
乗車した電車は17:30発の3両編成のミニ特急「かもしか3号」。秋田の電波が途切れるまではFMラジオを旅の供にした。いつも聴いている「サントリー・ウェイティングバー」では、人間がなぜ太るかというテーマを話しており、メカニズム的に人間は太るものなんだということがよく分かった。
秋田駅で買った烏龍茶の缶にウイスキーを流し込み、大いに酔っ払ってきた。車窓が真っ暗になり視覚的情報が少なくなってくると、かわりにだんだんと物思いに耽るようになってくる。この旅の「トワイライトセクション」に突入したようである。エリック・クラプトンの「いとしのレイラ」がヘッドホンステレオから流れる。この曲の後半部はピアノのコード・バッキングにクラプトンの泣きのギターが絡んで延々と続く訳だが、クラプトンの曲の中では、この部分が一番気に入っている。クラプトンがロスマンズのタバコをくゆらせながら、軽快にギターを弾いている姿が思い浮かぶ・・・。列車は秋田を出発して2時間38分後、青森駅のホームに到着した。

青森からは久々の寝台特急で

B東北本線
青森からは、21:05発の寝台特急「はくつる」号で一気に南下する。久々の開放式2段寝台は、横揺れがひどくて何度も目が覚めた。昔から東北線の線路状況の悪さは言われていたけれど、平成の世になってもなかなか改善されないらしい。ともあれ、はくつるは東北本線を快調に南下する。

寝台車の廊下で煙草をくゆらす

荒川鉄橋に朝日が昇る
目が覚めると宇都宮の手前あたりで、時間は5時少し前。もう寝る気にもならず、ボケーっと夜明け前の車窓を見ていた。空は刻一刻と白んでいき新しい一日がまたスタートする。太陽は完全に顔を出し、列車は荒川鉄橋を渡り東京へ。都心への電車を待つ人の羨望?のまなざしを受けながら京浜東北線の駅を通過していく。日付が変わって3月5日(日)6:39に上野駅地平ホームに到着した。

◎平成12年3月5日(日) 天気 晴れのちくもり
C総武本線
山手線で東京駅に移動し、エスカレーターで地下ホームに降りる。ホームには既に総武特急「しおさい1号」が入線していた。183系車両8両編成で、そのうち自由席は6両で気軽に乗れる。外部塗色は現在では希少価値のある「国鉄特急色」である。7:15定刻に発車。車内は20%に満たない乗車率である。東京駅で買ったサンドイッチを朝食とする。錦糸町で地上に出て総武快速線を東へ快走する。千葉を過ぎて四街道あたりから車窓は霧に包まれる。まるで墨絵の中に入ってしまったかのような幻想的な雰囲気の中、列車は南東に方向を変える。単線区間に入り列車交換を繰り返しながら、成東には8:20に到着した。

EF81を先頭に上野駅に到着

今では希少派、国鉄特急色
D東金線
8:28発の634M電車で、大網に向かう。東金線は延長わずか13.8キロ、起点終点を除くと途中3駅しかない。車内は、休みの日に遊びに行く、地元中学生の格好のたまり場となっており、話し声がかまびすしい。始発駅を出てから17分後の8:45に終着駅に到着した。

下総の平原は霧に包まれて
E京葉線
大網駅での3分間の待ち合わせ時間は慌ただしかった。まず、東金線ホームで「トレイング2000」用の証明写真をセルフタイマーで撮り、すぐに階段を駆け下る。東金線ホームと外房線ホームは離れており、連絡通路は重い荷物を背負って駆け足。外房線ホームに駆け上って再び証明写真を撮ってタイムアップ。すぐ列車に乗り込んだ。

ビューわかしお用255系特急電車
乗車した列車は、8:48発特急ビューわかしお6号東京行きである。車両はJR東日本ご自慢の255系である。デビュー当時は小泉今日子のTVCMで話題になった。さすがに新しい車両だけあって、自由席シートも今朝乗った183系とは格段の差がある。車内は立っている乗客はいないものの座席はほぼ埋まっており、なかなかの乗車率である。
蘇我からは京葉線に入り湾岸地帯を行く。大網での駆け足の息がようやく静まってきたころ、東京ディズニーランドが見えてきた。反対側を見ると、首都高速の浦安ランプは大渋滞となっていた。早春の日曜日、おそらく今日もディズニーランドは大混雑であろう。列車はほどなく地下線に入って9:32に東京駅京葉線ホームに到着した。

F埼京線
京葉線ホームで今日の競馬の電話投票(中京記念)をしていたら時間をくってしまった。急いで中央線ホームに向かうも、ご存知の通り京葉線ホームと中央線ホームは東京駅の端と端。どう急いでも7〜8分はかかってしまう。中央線の快速電車からはロングシートの旅が続く。TOKYO-FMにダイヤルを合わせ、日曜FM通り「ラヴステーション」を聴き始める。新宿を10:18発の埼京線205系電車に乗り込み武蔵浦和へ。わずか30分そこそこの乗車であった。

埼京線205系が武蔵浦和に到着

G武蔵野線
武蔵浦和から、南武線方面に向かうのが本来の行程であるが、「トレイング2000」の踏破条件の乗車距離を満たすために逆方向の東川口に向かう。東川口11:10発の上り電車で改めて武蔵野線の旅をスタートさせる。しかしロングシートの上に、切り通し区間が多く眺望が効かないとなればあとは寝るしかないな。目覚めたら終点府中本町にほど近かった。

武蔵野線は103系オレンジ色

武蔵野線は貨物銀座でもある

南武線は103系カナリア色
H南武線
さっきから腹がグーグーいっているものの、接続が良すぎて昼食はおあずけ状態。南武線もほどよい混み状態で当初は立席。しかし交差する私鉄との乗り換えが多く乗客の動きが激しいため、ほどなく着席できた。
尻手で途中下車し駅前のコンビニでサンドイッチとおにぎりを買いホームのベンチで食べる。昨日に比べて劣悪な食生活で泣けてくる。
13:05発の浜川崎行きの101系電車に乗り込んで、ようやく今朝の京葉線から中央線に乗り継いだ時の遅れを取り戻した。約6分で終着の浜川崎に到着。浜川崎の南武支線駅舎と鶴見線駅舎は左の画像のように道を挟んで向かい合っており、別の会社の駅のようである。

こちらは南武支線101系電車

浜川崎駅は特殊な線路配置

鶴見線の3両編成の103系電車

I鶴見線
13:35発の鶴見線103系3両編成に乗り込む。全国的に見ても103系電車が3両編成で走っているのは珍しい。もっとも鶴見線はついこの前まで「クモハ12」という戦前の電車が走っていた線区。そのころに比べればレールファンの姿もめっきり少なくなったのでは・・・。10分ちょっとで終着の鶴見駅に到着した。場内改札を抜け京浜東北線に乗り換えて品川に向かった。

J横須賀線
品川からは横須賀線電車で大船まで南下する。「トレイング2000」のルールでは、横須賀線は品川〜久里浜間となって、おり線区の半分に乗ればポイント獲得のため本来の横須賀線に乗らなくてもポイント獲得となる。まぁ品川〜新子安間は全然別の所を走っており、東海道線との並列区間でも、かなり低いところを走っていて景色が違いこれもアリかなという感じ。

新鋭・横須賀線のE217系電車
付属編成のセミクロスシートに乗り込み、ロングシートに乗り続けていて辟易としていた気分を癒す。時折、隣の東海道線を走っていく特急「東海」や「スーパービュー踊り子」などが車窓のいいアクセントになっていた。

K根岸線
大船での根岸線乗り継ぎの間に15時になった。ここでラジオを午前中から聴いていたTOKYO-FMからニッポン放送にチェンジ。競馬中継を聴き始める。根岸線はトンネルが多く途切れ途切れの受信となるが、メインレース発走前には磯子駅に到着した。
磯子で途中下車し、なんとかテレビが観られるところを確保したいという思いから街をさまよったが、結局断念。トイザラスの前のミニ公園みたいなところに腰掛けてラジオに耳を傾けた。結局、中京も中山もメインレースの買い目が外れて、まるで競馬場でオケラになった気分で駅に戻った。

E217系付属編成のクロスシート

横須賀線電車内で筆者

隣の東海道線を特急が抜いていく

根岸線電車=京浜東北線

L横浜線
磯子からは横浜線経由で橋本に向かう。乗車した電車は遠く松本まで足を伸ばす16:35発の特急「はまかいじ3号」である。車両は長野車両区の189系6両編成で、ちょうど去年の暮れに長野から直江津まで乗った快速「信越リレー」号と同じ編成である。また全車禁煙車であり、お里が知れるが、喫煙コーナーも設けておりスモーカーの私も不自由することはなかった。
桜木町、横浜と電車待ちのホームの人達から羨望の眼差しを浴びながら、ゆったりとラジオを聴く。番組は毎度御馴染みの「トーキングFM」で、フクちゃんと松たか子さんの恋愛話にいろいろと感銘?を受けた。列車は平行ダイヤ特有のゆっくりとした足取りで走行し、17:30に橋本に到着した。

根岸線磯子から松本を目指す特急

相模線専用205系500番代電車

M相模線
橋本駅で駅ソバをすすり、この旅の食事は終了。1日めは食べ過ぎ、2日めは粗食であった食事情であった。いよいよ最後の乗りつぶし線区となる相模線の205系500番代電車は17:58に橋本駅のホームを離れた。既に真っ暗で、例によってロングシートであるので、車内では持ってきた文庫本を読んで時間をつぶした。北杜夫さんのエッセイ「孫ニモ負ケズ」を読んだのだが、軽い内容だったので、終着の茅ヶ崎に到着するころまでにほとんど読み終えてしまった。

☆エピローグ

熱海駅は真夜中の様相だった
茅ヶ崎からは東海道線を乗り継いで熱海駅へ。熱海ではいったん改札を出て、十分モトを取った「ウイークエンドフリーきっぷ」を手元に残した。そして静岡新聞を購入し、早くも家に戻った気分になった。
熱海駅20:37発「こだま483号」浜松行きに乗車する。今回の旅は電車に乗っているだけで、気分的にストレスがたまったなぁと反省しつつも、列車は着実に浜松に近づいていく。21:52に終点浜松駅に到着して、慌ただしかった「JR東日本のりつぶしの旅」は終わった。

次は終点「浜松」
<トレイング2000 完結>

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