Spring Tour '13


ひかり477号広島行きが浜松入線


広島への直通運転もあと1週間

浜松に停車する新幹線ひかり号は毎時1本。そのほとんどは岡山行きとして運転されている。東京駅から夕刻に乗車すると、乗客のほとんどは静岡県民じゃないかと思う列車で、私は密かに「静岡県民特急」と呼んでいる。その岡山行きひかり号に一日一本だけ広島まで足を伸ばす列車がある。浜松発16時37分発のひかり477号である。そもそも広島行きに延長されたのが昨年3月のダイヤ改正から。そして今春のダイヤ改正で、また岡山行きに戻される。なんともJRの気まぐれで設定されたような列車である。それでも浜松から乗り換えなしで広島に行けるのはラクチンなので、今年のSpring Tourで乗ってみようと思った。

3月8日金曜日、16時30分過ぎ。浜松駅6番線ホームの列車案内掲示に堂々と輝く「広島」の文字。ほどなく静岡方より700系が入線し、私は16号車8番A席に座った。いつもの通りで、シートに座ればすぐに酒盛りを開始。仕事中は我慢を強いられるタバコも、この空間では吸い放題なのが嬉しい。私にとっては一年で最も心がウキウキするSpring Tour。とりわけ旅立ちのこの瞬間が最も至福を感じるのである。夜行列車の狭い座席で、膝小僧を抱えて旅をしていた学生時代から、連綿と続く春の旅。ジャーニーの「ドント・ストップ・ビリーヴィン」の歌詞が心にしみる。そして、今年も無事にこの時期を迎えられたと心から思える瞬間である。

名古屋を過ぎて、関ヶ原を越え、反対側のE席側の車窓に比叡山の山並みが見えるころ、その山々に夕陽が沈んでいった。京阪神とこまめに停車し、畿内から山陽道に入るころには大半の乗客が下車し、車内はすっかり落ち着いた。いつのまにか夜の帳も下りて、夜汽車の雰囲気すらしてきた。「走る居酒屋」はここからが佳境である。


岡山ひかりが一日一本だけ広島に足を伸ばす


新神戸を過ぎればガラ空き。普通車の気楽な旅

岡山行きのひかり同様、ひかり477号は京都から岡山までは各駅停車となる。西明石、姫路、相生のそれぞれの駅で後続の「のぞみ」や「さくら」に抜かれるだけでなく、岡山でも8分停車し、隣のホームに着発するのぞみに道を譲る。ただ、こんなこだま号のような運転形態が、浜松〜広島間3時間42分という、車内で酒を飲むには長すぎず短すぎない理想的な時間で走る源である。岡山を出ると、福山、三原と停車して終点広島へ。昭和50年に山陽新幹線が博多まで開通した時に設置された駅だけに停まるのは、なにかウラの意味があるのだろうか? 最後の停車駅三原で、16号車に乗っていた私以外の客は全て降り、「そして誰もいなくなった。」 最終列車のような雰囲気すらするひかり477号は終点の広島に定刻に到着。浮世離れしていた16号車から現実の世界に引き戻される。まだ20時半前、宵の口である。

広島駅前から広電のグリーンムーバーマックスに乗車し、袋町で下車。南東の方向に少し歩くと、今宵の宿であるANAクラウンプラザホテル広島があった。1月の南大東島の「歩け歩け大会」、2月のロサンゼルスでの「飛行機乗れず事件」と、ここのところハードな旅が続いていたので、今回は翌日の14時過ぎまで、高層ホテルの一室でAFNでも聴きながら、のんびりしようという目論見である。


浜松→広島が一本の列車で行けるのが有難い


最後の停車駅を発車。そして誰もいなくなった


ANAクラウンプラザ広島に宿泊


21階プレミアフロアのシングル部屋

ところが、21階のプレミアムフロアに高い金を払って泊まっても、窓外の風景を見るのは、このページに掲載する画像のためにカメラ撮影するくらいなもの。夜はWBCを見ながら、そのまま寝てしまったし、翌朝は二日酔いで気分が優れず景色どころではない。結局、14時まで滞在したこの部屋でしたことといえば「二度寝」「ネットチェック」「競馬の予想」「AVを見る」といったところ。これでは21階に泊まろうが、窓の無いホテルに泊まろうが、あまり変わりない。岩国に向かうため14時すぎにチェックアウトした。

外に出ると、黄砂の影響で口の中がじゃりじゃりする。岩国行きのバスが発車する広島バスセンターは、広電の電停2つ分の距離なので、徒歩を選択。歩いているうちにジャケットの襟元が汗ばんでくる。初夏なみの陽気なようだ。そごう広島店3階のバスセンターにはホテルから10分ほどで到着。1番のりばでバスを待った。

14時30分すぎ、岩国の観光名所がラッピングされた高速バスが入線。乗客は私も含めて20人ほどで、中間時間帯にしては、そこそこの乗車率だった。定刻の14時35分に発車。市街地を5分ほど走ると、広島高速4号線という、ほとんどトンネルだけの都市高速に入る。トンネルを抜けるといったん一般道に下りて、五日市インターから山陽自動車道を走り、一路岩国へ向かう。さて、簡単に「一路岩国へ」と述べたが、山陽道の広島〜岩国間は、建設される過程で複雑な歴史があり、国道2号線のバイパスである「広島岩国道路」が、さも山陽自動車道であるかのように共用されている。そういえば伊勢湾岸道にもそんな区間があったような気もするが…。岩国インターで高速を下り、一般道を5分ほど走ると、錦帯橋バス停に到着。広島一の繁華街にあるバスセンターから、錦帯橋まで乗り換えなしで55分。観光客の足としては、かなり便利なバスである。その後、市役所などに立ち寄り、岩国駅到着は15時40分ころ。頻度、値段、運賃ともにJRの普通電車に劣るが、紙谷町界隈でショッピングをした後、岩国市内に帰るという乗客相手なら勝負になるのかもしれない。

夕暮れ時にチェックインしたグリーンリッチホテル岩国駅前の部屋は、「ジャパニーズルーム」というシングルルーム。フローリングの小上がりに万年床で、学生時代の下宿を思わせる。おまけに2階の部屋があてがわれたため、窓の外は隣のビルの壁。おもわずたそがれてしまった。


部屋からの夜景。向かいはNHK広島放送局


黄砂で山が霞む。手前の森は平和記念公園


思わず二度見するグリーンムーバーマックス


ホテルから徒歩圏内のバスセンターから乗車


春の日差しがふりそそぐ山陽道を快走


錦帯橋のほとりを通過。広島からの観光に便利


広島バスセンターから65分で岩国駅前に到着


岩国錦帯橋空港のすぐ隣は米軍岩国基地


2泊めはグリーンリッチホテル岩国

ラジオを1575KHzに合わせAFNを聞く。16時からはカントリー番組だが、今日びのカントリー音楽は、昔のAORかスローロックかって感じなので耳に心地よい。さすがに地元岩国だけに、雑音なしのクリアサウンドだった。また、その日の夜は全米の最新ヒット曲を立て続けに流しており、最近耳に残って仕方がないブルーノ・マーズの「Locked Out of Heaven」もきっちり掛かっていた。10代のころは夢中になって聞いた洋楽の最新ヒットだが、最近では滅多に好きな曲に出会わない。そんななかで、この曲のフィーリングは貴重である。

翌朝は、ホテルから岩国錦帯橋空港に徒歩で向かった。駅前のホテルから空港までは2`ほどしかなく、十分歩ける距離である。ご存知のとおり、昨年暮れにANAが新規就航した空港だが、米軍岩国基地と海自岩国航空基地との共用であり、オスプレイが2〜3日前にいたことでも有名である。三沢や佐世保でも見かけた赤い警告看板にドキリとするが、民間空港エリアは、小ぶりながら真新しいターミナルビルが建っており気持ちいい。私はここの待合ラウンジで、搭乗ぎりぎりまでむさぼるようにAFNを聞きまくっていた。日本にいながらにして、海外の気分を味わえるAFNは、やっぱりいいね…


初訪問時のお約束。空港ターミナルと筆者


岩国錦帯橋空港に737-800(73M)が遅れて到着

<終>

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