東京→博多 一気通貫
上野駅近くにある地下鉄銀座線の踏切

買い置きのタバコも残り7〜8箱となり、どうやら今年度いっぱいで禁煙となる気配である。禁煙の志を安易に断たないように、いわゆる儀式が必要である。その儀式を具現化したのが今回の旅である。東京から博多までを、700系のぞみ号の喫煙グリーン車で過ごし、思い残すことなく「これで禁煙できる」という心持ちにしたい。また、費用が4万5千円以上かかっているので、安易に掟を破れない状況となる。

わざわざ東京に出張ってきたので爪跡を残したい。そこで上野駅入谷口すぐそばにある、地下鉄銀座線の踏切に立ち寄った。銀座線は第3軌条で、踏切があると感電のおそれがあり危険だが、唯一存在するここの踏切は、電車が通るときだけ線路側の門が開くしくみである。地下区間の出口が踏切の南側にあり、逆の北側は車庫になっており、電車が留置されていた。

東京駅に戻って、のぞみ167号の入線を待ち構えたが、時間があったのでホームの新大阪方にある十河信二のレリーフを見に行った。このレリーフには彼の座右の銘である「一花開天下春」の文字が刻まれている。十河本人はこのレリーフを見て「似とらん」といったそうな。ここのホームの下には例の「この鉄道は日本国民の叡智と努力によって完成された」レリーフがあるが、このフレーズは意外と使える。旅先のホテルでコルク栓のワインを間違って買ってしまったとき、クルマのキーでなんとか栓を開けた際に「叡智と努力によって完遂した」などと、ひとりごちるのである。


踏切横の車庫に電車が並ぶ


のぞみ167号で博多まで一気通貫


「浜松駅を通過」と撮りたかった


博多に行ったアリバイ画像


東京駅18・19番線にある十河信二翁のレリーフ


東京駅19番線に700系のぞみ167号が入線


700系引退とともにタバコを止める予定が…


冷静に考えれば30分遅れでもよく飛んでくれた

さて、のぞみ167号が19番ホームに入線し、車内整備の間に700系を撮影しまくった。停車している状態で新幹線を撮るのは割とチャンスがなく、19番線の16号車付近は駅撮りできる絶好のポイントである。発車10分前にドアが開き、10号車の喫煙グリーン席に陣取った。このあと5時間半弱に渡って、タバコを吸いながら水割りを飲むという、至福の時を過ごすわけである。

東京〜博多間を一気通貫するという経験は、沿線の途中に住んでいるのでわずかしかない。とりわけ東京から博多に向けて通しで乗車したのは初めてである。浜松を通過する列車に乗るのも自分にとっては珍しいので、「ただいま浜松駅を通過しました」のスクロール画面だけは撮影したいと思っていた。ところが発車から1時間15分も経ってしまっているので、酔いが回って指先がおぼつかない状態になっていた。結局いいタイミングでシャッターを押せず、失敗してしまった。

新大阪でかなりの人数が下車し、昼下がりの山陽新幹線をゆるーい感じで進んでいく。酒を飲んでタバコが吸えれば、5時間という時間はあっという間で、15時53分に終点博多に到着。博多では爪跡を残すことなく、地下鉄で福岡空港に向かった。ピーチ機がパンクした影響が残り、搭乗便が30分ディレイしたが、欠航にならずによく飛んでくれたものだと帰宅後に思った。
<終>

旅と音楽のこころへもどる