かつての「はつかり」の道 |
ホテルメッツ八戸の朝の眺望 |
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12月の旅というと1996年に行った古牧温泉と南部縦貫のレールバス、津軽鉄道のストーブ列車の旅を思い出す。このホームページに掲載している最古のヤツである。また、大人の休日倶楽部の入会資格を得た50歳以降は、おときゅうパスを使って12月に東北に行くことが多かった。ここ2年ほど12月に四国に行っていたので、今年こそは東北に行こうと計画を立てた。 計画を立てているうちに「そういえば東北本線が三セク化されて以来、IGRいわて銀河鉄道と青い森鉄道に乗っていないな」と思い当たり、1996年12月に特急はつかり号でたどった道をあらためて乗車することにした。幸いおときゅうパスで両鉄道とも乗車可能である。通しで乗ろうとすると八戸の乗り換えを含めて3時間半の長丁場。最近はそんなに長く鈍行に乗り続けることがないので飽きやしないか心配である。 | ||
かつて特急はつかり号が行き交っていた盛岡~青森間を三セクで旅する |
浜松を朝一番に出るこだま号とはやぶさ7号を乗り継いで盛岡に10時30分に着いた。夏にもここに来たが、その時初めて盛岡冷麺を食べたフェザン(駅ビル)で、今回は大阪王将の餃子を食べた。1時間弱の待ち合わせ時間を埋めるための行動だったが、11時10分頃IGRいわて銀河鉄道のホームに行くと、驚くことに11時25分発の盛岡行き普通列車が既に入線していた。JR四国の普通列車によくある点対称のセミクロスシートの車両だったが、クロスシート部分はもう空いておらず渋々ロングシート部分に腰を下ろした。終点の八戸到着は13時22分。2時間も乗らねばならないので先が思いやられる。 多少立ち客が出るくらいの混み具合で2両編成の電車は始発の盛岡駅を発車。滝沢、渋民と石川啄木のゆかりの地に停車していくうちに車窓に雪が目立ち始めた。盛岡までは積雪がなかったのに、ちょっと郊外に出るとこうである。その後、奥中山越えと呼ばれる山間部に入ると、ホームの除雪も行き届かず雪まみれ。12月の旅はこうでなくっちゃと思う。 さて近ごろは新幹線などに乗車すると、暇つぶしのためついついスマホに落としてきたテレビ番組を見てしまうが、盛岡~青森間の三セク区間でこれをしてしまうと何のためにここまで来たのかが分からなくなってしまう。そこで、ひと昔前の旅のように車窓を見ながら音楽を聴いていく。12月の旅ということでクリスマス・ソングを中心とした12月に流行った曲を聴いていく。なかでも懐かしいと思ったのが、1979年に流行ったジンギスカンの「目指せモスクワ」。モスクワ・オリンピックを翌年に控え、ソ連への異郷の念も感じさせる曲である。しかしながらご存知の通り日本はモスクワ・オリンピックをボイコット。東西冷戦時代を思い起こさせる曲となった。この曲を聞いていた頃は私は中学1年生。その年の10月よりSBSラジオで「ポピュラー・ベストテン」が始まり、それに伴って洋物の音楽に足を踏み入れた時期である。 列車は二戸で8分の停車。このごろは長距離鈍行に乗ってもこのような長時間停車が珍しく、久々に電車の外に出てホームで体を伸ばせた。二戸を発車すると県境の目時駅まではすぐで、目時駅からは青い森鉄道に変わる。電車はそのまま八戸に向かうが車内放送のトーンは目時駅を境に変化する。目時からこの列車の終点八戸までは30分足らず。結局ロングシートでずっと過ごしたが、好摩を過ぎた頃からずっと車内は閑散としていて、途中からは呑みテツも始まり、わりとあっさりと時間が過ぎた感じである。 八戸で青森行きの普通列車に乗り換え。ちなみに八戸は今日の宿「ホテルメッツ八戸」が駅の中にあり、もう3時間もすればここにもう一度戻ってくるという寸法である(翌朝の朝食バイキングは左の動画を参照のこと)。さて、その八戸では4分しか接続時間がなく、しかも跨線橋を上り下りせねばならないということで慌しかった。車両の方は先ほどまで乗車していた701系電車(IGRいわて銀河鉄道ではIGR7000系、青い森鉄道では青い森701系)ではなく、新しめの青い森703系(JR東日本のE721系に準ずる車両)である。 始発の八戸を13時26分に発車。盛岡同様八戸では積雪が見られなかったが、三沢、野辺地と進むにつれて降り積もった雪が沿線に目立ち始めた。そして野辺地では鉄道防雪林が2キロに渡って続き、南部縦貫鉄道の遺構を見ようと進行方向左手に目を向けていた私は思わず「27年前と景色はちっとも変わらないな」と呟いた。太平洋側の都市であるが、防雪林を整備しなければならないほど当地は雪が降るのだ。 その後、陸奥湾と対岸の下北半島に林立する風力発電に目を奪われているうちに夏泊半島の付け根部分に入り、それを抜けるとふたたび陸奥湾の眺望が楽しめる。浅虫温泉駅に停車し、電車はラストスパート。東青森駅から先はどういうわけか上野からの特急列車に乗っているような気分になり、長旅がようやく終わるんだという感慨にふけった。青森駅はどの方向から来ても行き止まりのホーム。そしてホームのはるか前から時速20キロほどで2分くらいゆっくり走る。これが最果て感を生むのだと思った。14時59分、定刻で終点の青森駅に到着した。冬の太陽は大きく西に傾いていた。 |
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名物「せんべい汁」もあるJR東日本ホテル メッツ八戸の朝食バイキング |
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