Ride Like The Wind 
 〜トルコライスを求めて〜 .

♪午前4時58分発e−wing
雷鳴轟く中、ずぶ濡れのスタートだった。傘を差している自分に雷が直撃しないかとヒヤヒヤものだった。東名浜松北バス停に、どうやらこうやらたどり着いてe-wingの始発に乗った。前夜の睡眠時間は2時間ちょっと。乗車すると同時に私は睡魔に襲われた。

♪プリウスで長崎へ
セントレアからANA213便で1時間25分、定刻の8時50分に福岡の地に立った。空港正面のトヨタレンタカー営業所に向かった。今回の旅の目的のひとつであるプリウスを借りるためである。
長崎自動車道木場PAにて筆者とプリウス
私の愛車のコロナは登録から10年を超え、口の悪い同僚からは「廃車置場に転がっているクルマよりもまだ古い」とか「マニラやバンコクの街角にお似合いのアジアカー」などと言われる始末。そろそろ買い替えの時期で、プリウスは後任の第1候補。九州を存分に走ってみて、塩梅が良かったら1〜2年のうちに買おうかなと考えている。トヨタの方でもその辺を心得ていて、カローラと同じ料金で貸し出しており、自信の程が窺える。

さっそく長崎に向けてスタート。ブレーキがカックン気味だったり(これは運動エネルギーを充電にあてる回生ブレーキ特有の症状)、エンジンブレーキが効きにくかったりという違和感があるが、慣れてしまえば気にならない程度で、総じて普通のクルマのように運転できる。九州自動車道から長崎自動車道を110〜120`で巡航したが、高速での安定感があり、ランプウェイでのフル加速も余裕のあるものだった。

福岡では晴れ間も出ていたが、佐賀県に入ると突然土砂降りになったり、また太陽が顔を出したりと、不安定な天気である。このところ旅に出ると天候に恵まれず、3月の関門海峡、9月の道東も雨にたたられた。高速のどこかでプリウスと記念撮影をと考えていたが、パーキングエリアに近づくと雨が降り出し、何度も断念。結局、長崎自動車道下り線で最後のパーキングである木場PAで、ようやくセルフタイマーを使うことが出来た。

後の日程を考えて、長崎多良見インターで長崎自動車道を降りた。長崎バイパスを終点まで行くつもりが、川平インターで降りてしまい、浦上地区の渋滞にどっぷりはまってしまった。1時間近く国道34号線とお付き合いして、ようやく県庁と市役所の間の駐車場にクルマを停めた。

ようやく見つけたトルコライス。長崎玉屋デパートのレストランにて
♪トルコライスを求めて
水溜りに秋の日差しが照りつけたかと思ったら、いきなり土砂降りになったりで、長崎市内の散策は傘が手放せなかった。長崎の地元民の日常食である「トルコライス」なので、県庁や市役所のまわりで簡単に探せるだろうと思ったら甘かった。いったん南に下って県庁周辺を歩き回り、続いて北へ上って市役所のまわりをうろついたが、オフィスビルばかりで洋食屋さんや、喫茶店の類は簡単に見つからなかった。ようやく見つけた喫茶店は土曜日で休業だったり(官庁周辺には土日休みの食べ物屋さんが多い)、「ここなら大丈夫だろ」と思ったいい雰囲気の喫茶店は、昼間から酔客のいるカラオケスナックだったりで埒が明かない。

チンチン電車の線路伝いに北に歩いていると、デパートとは似ても似つかない「玉屋デパート」という建物を発見した。子どものころに親に連れられて行った「松菱」や「遠鉄名店ビル」の雰囲気を、2006年の現在まで守り続けているという表現がぴったりくる。とにかく最上階の「ファミリーレストラン」なる食堂でトルコライスを注文した。

夢にまで見たトルコライスを食べた感想は「こんなものか」という感じ。確かにトルコライスの要素であるトンカツ、オムレツ(ゆで卵)、スパゲティ(ナポリタン)、デミグラスソース、炒めご飯(ピラフ)、サラダが大皿に乗っていた。でも、トンカツは薄くて硬く、ピラフはもう少しからっとした方がよかった。まぁ自分にも落ち度があって、トルコライスを食べるということが旅の目的のひとつだったにも関わらず、ろくに下調べもせず、ガイドブックも持たず、行き当たりばったりで店を探したのだから、食べられただけでも良しとしなければいけないだろう。舌代は790円だった。

長崎電軌の最新LRT3000形とすれ違う

♪Ride Like The Wind
トルコライスを捜し歩いている間に、ずいぶん手間を食ってしまった。予定では佐賀競馬を観戦する予定だったが、肉体的にも精神的にも疲れ果てて、とても佐賀まで戻る気力はなかった。「一刻も早くホテルで疲れを癒したい」そんな想いから、大村湾の西側をたどって佐世保に向かうことにした。国道34号線から206号線にかけて、渋滞はあいかわらずだったが、すれ違う長崎電軌のチンチン電車の姿に励まされながら北上した。時津町に入ると流れがスムーズになり、ラジオから流れるAFN佐世保のアメリカンヒッツに耳を傾けながら、快調にドライブした。

これまで高速か市街地しか走っていなかったので、信号の少ない50`制限の道路をプリウスでドライブするのは新鮮だった。雨が降ったり止んだりだったので、ウェットな路面状態だったが、タイトコーナーでもオンザレール感覚で曲がって行く。プリウスの足回りは大したもので、これならハードなスポーツドライビングもいけるのではと思わせた。「風のように走る」この言葉がぴったりだと、静かな車内でひとり悦に入っていた。
おだやかな内海に虹がかかる

一日中悩まされた雨が止み、西日がまぶしい。東の空には虹がかかっていた。長崎を出発して1時間。そろそろ休憩する頃合なので、琴海の海岸でクルマを停めた。市町村合併のため、ここもまだ長崎市である。大村湾のそのまた内海の形上湾はおだやかで、「あぁ旅に出て良かった」と思う一瞬だった。
イメージよりもスポーティーな足回りを持つプリウス

「佐世保まで○○`」の表示が徐々に減っていき、ドライブもクライマックス。悲しい歴史となってしまったオランダ村跡地の横を通り抜け、国道202号線との重複区間に入る。佐世保への道程で一番の名所となる西海橋は一瞬のうちに通過してしまったが、機会があればもう一度訪問したい。

♪ハウステンボス ジェイアール 全日空ホテル
11階の部屋からの眺め。ハウステンボス側でなくて残念

いつしかクルマは佐世保市内に入り、ハウステンボスへの案内板を見かけるようになった。今夜の宿は「ハウステンボス ジェイアール 全日空ホテル」。なんとも長ったらしい名前のホテルだが、全日空の株主優待券で50%割引となり、サービス料消費税入湯税込みでルームチャージ10,545円である。 おまけに上層階のダブルルームがあてがわれ、ひとりで泊まるにはもったいない所である。ここまでしてくれたなら、夕食や朝食をホテル内のレストランで食べてあげても良さそうなものを、早岐のマックスバリュで食料の調達をしてしまった。おかげでスーパーの袋を下げてチェックインするはめになってしまった。それだけならまだ良かったが、部屋までその買い物袋をボーイさんにもってもらうことになって、たいそう体裁が悪かった。

特急ハウステンボス号がハウステンボス駅に到着。それをつまみに酒をあおる

入湯税を払ったものの、ホテルご自慢の天然温泉「琴乃湯」に行くつもりはさらさらなく、自室にこもってひとり酒盛りをした。前回佐世保に来た折に、ホテルに早めに入って、スーパーの惣菜をつまみに酒盛りをしたら意外に良くて、それ以降このパターンを繰り返している。そのきっかけを作ってくれたホリデイ・イン佐世保はこの夏廃業。健在なら今回の宿も多分そちらにしただろう。ちょっとしんみりしながら窓の外を見やると、ちょうど特急ハウステンボス号が駅に入ってきた。夕日を浴びたカラフルなステンレスボディをつまみに、AFNを聴きながらビールをあおった。ロングドライブの疲れがいっぺんに吹き飛んだ。

疲れとアルコールの影響で、いつの間にかベッドに倒れこんでいた。目覚めたら朝の5時過ぎだった。いわゆる「ひとり時差」状態で、無理やり早起きした翌朝にこんなふうになる。二度寝するのももったいないので、またまたAFNにダイヤルを合わせ、朝のトワイライトセクションを楽しんだ。日の出とともにホテルをチェックアウトし、高速道路を東へ向かった。大宰府インターを降りてガソリンを入れたら、15.6gで満タンになった。340`走ってたったこれだけ!!長崎市内の渋滞があったにも関わらず21.8Km/L!!昨日の酒がまだ残っているのかと思ってしまった…

<おしまい>

日の出とともにホテルをチェックアウト 驚きの低燃費を記録したプリウス

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