本四架橋 グランドツーリング


赤塚PA〜岡崎IC間で通過に80分の渋滞

赤いプリウスを買ってから1年半余りが経過。最初の1年で1万`を乗ったが、最近半年間はわずか1,000`ほど。「乗れば乗るほどトクをするクルマ」なので、少しは遠乗りをしなければと思い、よりによって大渋滞が予想されるお盆休みにグランドツーリングを敢行した。行き先は四国の宇多津。瀬戸大橋のたもとの町である。道中なるべく渋滞に巻き込まれないようにと綿密な計画を立て、2011年8月12日の18時に浜松市中区田町の会社を出発した。

実を言うと、出発前日まで「やっぱり鉄道で行ったほうがいいのでは…」などと思い悩むほど渋滞嫌いの私に、スタートいきなりからの洗礼が浴びせられた。岡崎インターを先頭に最後尾は赤塚パーキングまでの渋滞に巻き込まれた。交通情報によると渋滞通過に80分もかかるらしい。カーナビで調べてみると、並行する国道1号はスムーズに流れている模様。「それじゃぁ降りよっ」とあっさり決断し、音羽蒲郡インターで高速を出た。国1を40分ほど走って無事に岡崎インターで流入。最初にしてこの旅最大の難所をクリアした。

今日の宿泊先は名神高速多賀サービスエリア内にある「レストイン多賀」。日本で4箇所しかない高速道路上に設けられた宿泊施設である。シングルのルームチャージで1泊4,800円とそれほどお安くないが、明日の日程を考えるとベストな選択である。21時半ころチェックインし、風呂に入って23時には就寝した。


SA内にあるホテル「レストイン多賀」


しまなみ海道大浜PAと因島大橋

翌朝は午前3時半に目覚めたので、身支度を整えて4時前に多賀SAを出発した。「この時間なら宝塚トンネルも簡単にクリアできそう!!」と思ったのもつかの間、交通情報では吹田ジャンクション付近の事故で渋滞しているとのこと。「ったく、しょうがねぇなぁ」と思いつつ瀬田東ジャンクションから京滋バイパスに入る。その次は初体験の第二京阪。名神〜中国道〜山陽道と走れば一体で計算されて遠距離逓減で高速料金が助かるのに、ここで料金計算がブツ切りされてしまう。まだ夜が明けきらぬ前に泣く泣く走った割には、開通ほやほやの気持ちのいい道路でちょっと感動。

門真ジャンクションで近畿道に入り、吹田方面とは逆方向に行くのに少し抵抗感がありながらも、4`ほどで大阪市内へと向かう阪神高速13号線にルートを変え、そのまま16号線から5号湾岸線と、早朝の都市高速を走り抜けた…。


ごくごく普通なレストイン多賀のシングルルーム


第2神明経由に急遽ルート変更(明石SA)


尾道ラーメン〜この旅唯一のご当地グルメ


多々羅大橋と筆者。瀬戸田PAにて


対岸は伯方の塩で有名な伯方島(瀬戸田PA)


トイレと自動販売機しかない上浦PA


画像右手(奥側より)来島海峡第一大橋、来島海峡第二大橋、来島海峡第三大橋。しまなみ海道来島海峡SAより


来島海峡SAにて愛車プリウス


宇多津グランドホテルの外観

湾岸高速は走っていて気持ちがいいが、そのまま三宮・姫路方面に抜けられないのが玉にキズ。住吉浜ランプから下道経由で3号神戸線摩耶ランプへ。3号線から第2神明を通る道は、かつて山陽地方に抜けるメインルートだった。山陽道の全線開通は1997年12月と遅く、関西以東から姫路や岡山方面に行くには、中国道を通って陰陽連絡の各国道を南下するか、阪神高速〜第2神明〜加古川・姫路バイパスを通るのが一般的だった。かく言う私も1996年10月に愛車セリカで尾道往復のドライブに行った時に、この道を通っている。第2神明の名谷付近で、淡路鳴門方面に向かうクルマの出口渋滞に巻き込まれたが、それ以外は順調に進み、播但道を経由して山陽姫路東インターから山陽道に入った。時刻は7時を回っていた。

山陽道に入った安堵感と、午前4時前からハンドルを握っている疲労感で眠気が全開。たまらず兵庫・岡山県境にある福石パーキングで仮眠をとった。20〜30分眠ると心身ともにスッキリし、朝食後ふたたび山陽道のドライブを開始した。山陽新幹線同様、この山陽道もトンネルが多いが、長いトンネルや連続してトンネルがある区間は、おしなべて渋滞している。普段なら交通量が少ないので渋滞が起きないのだろうが、お盆休みの時期はほんの少しの速度低下が渋滞を引き起こすのである。結局次の休憩場所である福山サービスエリアには、当初のカーナビの到着予定時刻より30分ほど遅れて到着した。

公衆無線LANの設備が整っているのをいいことに、福山サービスエリアで2時間弱の大休止をとった。午前11時を回り、少し早めだがここで昼食まで取ってしまおうと思い、尾道ラーメン+チャーハンセットをオーダー。この旅唯一のご当地グルメだった。

福山サービスエリアを出発し、トンネルを2つほどくぐるとすぐに福山西インター。ここで山陽道を降り、国道2号線松永道路へ。高速道路の続きのような片側2車線の連続立体交差の道路を3`ほど走ると、西瀬戸道の入口に着いた。これより「しまなみ海道」。尾道水道を新尾道大橋で渡る。右手を見ると懐かしい尾道の街並みが続いていた。対岸の向島は大林宣彦監督の尾道三部作の最終作にして最高傑作である「さびしんぼう」の舞台であった。セーラー服姿の富田靖子が夕暮れに自転車を引きながら、渡船で尾道から向島に渡るシーンが何度か出てきた。どうということもないシーンだが、これがちょっとせつなげで印象的だった。向島を走りながら、そんなことを思い出していた。

向島の次は因島。因島大橋を渡ってすぐのところにある大浜パーキングで小休止。しまなみ海道をただ走るだけではつまらないし、さりとて瀬戸田の耕三寺などに立ち寄る気もない。そこで大浜パーキングを皮切りに、しまなみ海道にあるサービスエリア・パーキングエリアにくまなく立ち寄り、画像を残すことにした。

次の架橋は生口橋。それを渡ると耕三寺のある生口島に入る。もっとも、しまなみ海道は島の南側を走り、耕三寺は島の北側にあるので、道路からは寺の建物は見えない。生口島にも瀬戸田パーキングがあるので、ここで小休止をし、多々羅大橋を背景に記念撮影をした。その多々羅大橋を渡ると、広島県尾道市から愛媛県今治市に変わる。その昔、しまなみ海道は「尾道・今治ルート」と呼ばれていたが、平成の市町村合併を経て2つの町は隣同士になってしまっている。今は今治市域となった大三島にも小さなパーキングエリアがある。その上浦パーキングで小休止した後は、伯方島、大島と順調に通過。いよいよ来島海峡大橋である。

来島海峡は潮の流れが速いため、昔から航海の難所と言われている。その海峡をまたぐ形で大島側より来島海峡第一大橋、来島海峡第二大橋、来島海峡第三大橋の3つの吊橋が架かり、総延長は4,105bである。橋を渡れば四国上陸で、すぐに来島海峡サービスエリアが待ち受ける。しまなみ海道のクライマックス的な場所で、サービスエリアには三連の吊橋を見学する観光客でいっぱいだった。展望台から大橋を見ると、大島側の吊橋は霞んでみえるほどのスケールだった。橋を十二分に堪能して本線に戻ると、ほどなく今治インター。しまなみ海道の終点である。

国道196号を15分ほど走り、今治湯ノ浦インターより今治小松道に入る。この下道部分が高速でつながれば利用価値が高まるのだが、もうしばらくは我慢を強いられそうである。対面通行の自動車道をトロトロ走ると松山自動車道に合流する。いよ小松ジャンクションから目指す坂出インターへは100`を切っている。長いドライブも残り1時間余りとなった。

瀬戸内海を挟んで対岸にある山陽道は断続的な渋滞に悩まされたが、四国側の松山道は拍子抜けするほどスムーズである。これだけ空いているとかえって睡魔が襲ってくる。上分パーキングに停まって眠気を覚まし、それから30分ほど走ると正面におにぎりの様な山が見えてきた。丸亀と坂出のシンボル讃岐冨士(飯野山)である。その麓まで走っていくと瀬戸大橋への分岐があり、左折し北上。ほどなく坂出インターに到着した。今夜の宿である宇多津グランドホテルには15時前には到着しそうである。

さて、今回はお盆休み中の土曜日に宿泊するので、ホテルの予約は4月頃入れた。おかげで瀬戸大橋が見える26uのロイヤルルームと呼ばれている角部屋に、8,663円(税サ込み食事なし)で泊まることができた。実際部屋に入ってみるとトイレ、洗面所、バスルームが独立していて、なおかつそれらの区画とはドアで仕切られていて、高級ホテル並みの空間だった。こんな部屋なので、なるべく早めにチェックインして、翌朝はチェックアウト時刻ギリギリまで粘ろうという魂胆である。さっそく隣のコンビニで買った、スーパードライのプルタブを開け、祝杯である。つまみは来島海峡サービスエリアで買った「じゃこてん」と「たこの燻製」。午後の海を見ながらリゾート気分で過ごし、日暮れを迎える頃には、いい感じで酩酊した。


19時間のホテルライフの始まりを祝って…


湾曲した広い角部屋でリゾート気分


お盆真っ只中でもルームチャージ8,663円


オーシャンビューかつ瀬戸大橋ビュー


夜の帳が降りてライトアップされた瀬戸大橋。うっすらと下津井瀬戸大橋まで見える


「瀬戸は日暮れて夕波小波」的な夕陽


一夜明けて日の出も部屋から拝めた


朝もやに煙る瀬戸大橋


午前中の橋。同じアングルばかりですまぬ


お盆で混雑する高松道津田の松原SA


その名の通りSAからは津田の松原が望める


淡路島南PAより大鳴門橋を望む


淡路SAより明石海峡大橋を望む


淡路島南PAにある大鳴門橋石碑

ライトアップされた瀬戸大橋の消灯を見届けぬままベッドで居眠りしてしまい、目が覚めたら窓の外は明るくなっていた。日の出の様子をカメラに収め、「この部屋は、夏場は日の出も日の入りも眺められるんだ」と感心しきり。そのまま二度寝を決め込んだが、昨夜から8時間以上眠っているので、すぐに目覚めた。いざ起きてしまうと、やることもなく手持ち無沙汰。チェックアウト時刻は11時だったが、9時半にはホテルを出た。なかなかゆっくり時間を使えないところは貧乏性丸出しである。

坂出インターから再び高速道路に入る。突発的なことが起きない限りは、今日は浜松インターまで高速を出ないつもりだ。讃岐冨士を右手に見て高松道に合流。高松市内で都市高速のような急カーブが連続したが、それ以外は典型的な田舎道。そのうち片側2車線の道が対面通行になり、津田の松原サービスエリアが近づいてきた。坂出から四国脱出までの間で唯一のサービスエリアは、予想通り混雑していた。名前に違わず、海が見える風光明媚なサービスエリアだった。

再び本線に戻ると、徐々に四国脱出の刻が近づいてきた。日本一高速バスが発着する高速道路上のバス停である「高速鳴門」バス停を通過し、鳴門北インターを過ぎると、お待ちかねの大鳴門橋である。走行中にカメラを使うわけにもいかず、淡路島に渡ってすぐのところにある、淡路島南パーキングの展望塔より吊橋を撮影。本四架橋は残り1本である。

日曜日11時のお楽しみであるFM番組「ハート・オブ・サンデー」を聴きながら、のどかな淡路島の高速道路を80`〜90`で流し、12時前に淡路サービスエリアに到着。家族連れの波をかきわけて、展望台へと急ぐ。ちょうど12時に明石海峡大橋をカメラに収め、本四架橋にこだわった今回の旅は実質的に終了した。この後、どんなに渋滞にはまっても、それは気にしない、気にしない…
<おしまい>

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