かつての客車王国を行く


盛岡冷麺の店「明明家」で初冷麺


8月上旬の東北各地のお祭りに社会人2~3年生の時に添乗で行ったことがある。浜松からのバスツアーで、当時遠鉄でもっとも豪華なロイヤルクィーンという観光バスを仕立てて行くのだが、お客さんは快適でも添乗員は大変である。浜松から花巻温泉郷の志度平温泉まで夜通し走り、青森の「ねぶた」、秋田の「竿灯」、山形の「花笠踊り」、仙台の「七夕まつり」をめぐるという夜行3泊の行程で、帰ってきた時にはヘトヘトだった。それでも今になって思えばタダで東北四大祭りを鑑賞できたのだからいい経験だった。さて、その四大祭りツアーでは行かなかった盛岡の「さんさ踊り」だが、今年は8月1日から4日の開催。ちょうど今回の盛岡旅行と日程がかぶっているが、そんなことはつゆも知らずに行ったものだから、「やけにホテル代が高いな」とか「やけに浴衣姿の女の子が多いな」とか驚いたわけである。まぁとにかく今回の旅の目的は、①花巻空港に初訪問、②50系王国だった東北本線の鈍行列車に乗車、③東北新幹線のグリーン車に乗車の3つで、別にわざわざ「さんさ踊り」の日に行かなくても良かったのである。


県営名古屋空港からいわて花巻空港を結ぶFDA355便で空の旅

まずは花巻空港に行くために小牧空港(県営名古屋空港)に向かう。中部国際空港ができる前は名古屋の空の玄関口だった空港で、私も何度もお世話になっているが、セントレア開港後は数えるほどしか利用していない。直近では2009年の大晦日と2010年の元旦に高知との往復で利用して以来なので13年ぶりである。

とはいえ公共交通機関を利用する行き方は国際空港時代と変わっていなくて、名鉄犬山線の西春駅から路線バス利用と分かりやすい。勝手知ったる道という感じで小牧空港まではすいすいと到着した。

県営名古屋空港となってからフジドリームエアラインズが就航したが、今ではホーム空港の富士山静岡空港よりも就航地が多く、実質的なFDAのハブ空港となっている。同時に空港施設もFDA仕様に変わっており、搭乗待合室に搭乗ゲートがないところが特異である。ゲートの方はターミナルビル外の通路から枝分かれする形になっており、文章では説明しづらいので左の画像から動画をどうぞ。

で、機内に入り出発を待っていると、ほかの空港ならトーイングカーでプッシュバックしてスイッチバックするところを、ここでは飛行機が自力で右にターンして誘導路に出ていく形。トーイングカーを使わなくてもいいので空港利用料が安いのかも・・・。

1時間ちょっとで、いわて花巻空港に着陸。いつかは日本の全ての定期路線就航空港に訪問したいという自分にとっては、数少ない未訪問空港である。ローカル空港らしくターミナルビルは小さいが、おいそれと探検に行くわけにはいかない。連絡バスは到着便ごとの発車なので、逃したらえらいことになる。

岩手県交通の盛岡駅行きのリムジンバスにほんのちょっとだけ乗車し花巻空港駅へ。運賃は300円と割と高いが、この暑さの中、空港から駅まで歩いたら熱中症になりかねないので、ありがたく乗車させていただく。ちなみに45人定員の正座席はほぼうまっていた。

おおよそ空港駅らしくない花巻空港駅から東北本線の鈍行列車で盛岡まで乗車。701系交流電車のワンマン2両編成で、平日昼間というのにえらく混んでいた。これでは50系客車の道を懐かしくたどるというわけにはいかない。この混雑は青春18きっぷの期間中だからかなと思ったが、前述のとおり「さんさ踊り」が宵から始まるのだから、さもありなんである。

盛岡駅ビル「フェザン」の地下に盛岡冷麺の店があるというので立ち寄る。明明家という韓国料理の店で、盛岡冷麺単品で1,100円だった。今までに盛岡冷麺を食べたことがなかったので、物は試しにいただく。辛さが調節可能な「辛味別」で注文したが、結局「辛味」をすべてぶち込んでもそれほど辛くなかった。おいしかったが普通の冷やし中華で十分かとも思った。

さて16時前に駅から今夜の宿であるユニゾインエクスプレス盛岡に向かう。盛岡駅の西口は特異な形状。2階にペテストリアンデッキがあるのは仙台に似ているが、この2階が雫石川の橋まで平面につながっている。では地上はどうなっているのか。橋の手前の県道293号で道路は軒並み行き止まりになっている。おかげでホテルも2階から入って1階のフロントに降りる構造。これは迷うわ。


伝統の東京駅弁「あなご飯」

ホテルは「さんさ踊り」の会場とは駅を挟んだ反対側にあり、夜になっても祭りの賑わいとは別世界だった。明けて8月3日の6時過ぎにチェックアウト。駅周辺は祭りの後のような虚脱感がそこはかとなく感じられた。

盛岡駅を7時01分発のやまびこ50号で東京へ。E5系のグランクラスには乗ったことがあるが、グリーン車は初めての乗車。指定席は満席だったがグリーン車は空いていてゆったりと旅を楽しめた。東京駅で普通列車のグリーン車に乗り継ぐ。東京駅で買った伝統の駅弁「あなご飯」を食べながら西に下っていった。車窓は夏の盛りであった。

かつて50系客車がパターンダイヤで行き来していた一ノ関~盛岡間の現在の姿


いわて花巻空港には初訪問だった


空港駅とは思えないいで立ちの花巻空港駅


2両編成ではさんさ踊りの夕刻を支えられない


ユニゾインエクスプレス盛岡。西口なので静か


やまびこ

<終>

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