渚駅のワイドビューひだ


東急ステイ飛騨高山の部屋から


コロナ禍の旅行業界支援のために始まったGoToトラベル~全国旅行支援の制度は、今月13日のマスク自由化の流れや5月の5類移行もあるので、予定通り今月で終了するだろう。せっかく政府が支援してくれるのだからと、今月も泊まりの旅行に2回出掛ける。まさに駆け込み利用である。まずはJR東海ツアーズの「ダイナミックぷらっと」を利用して高山に行き、渚駅と白川郷に足を伸ばそうと思う。

全国旅行支援は今年に入ってから4割引→2割引となって旨味がなくなったが、それでも高山の朝食付きホテルとJR特急指定席往復のセットで18,220円だから破格の値段である。おまけに白川郷往復バスチケットに利用できる2,000円の地域クーポン付きなので、この旅のトータルの出費は21,800円。これじゃ飛行機や列車が混むのも無理はない。


昨年7月に営業運転開始、この3月のダイヤ改正で特急ひだ全列車で運用されるHC85系

行先を高山にした主な理由は、今月18日に予定されているダイヤ改正のため。JR東海発足のころ、観光特急の先駆けとして走り始めたワイドビューひだ号のキハ85系乗り納めがひとつ。昨年7月に営業開始し、このダイヤ改正でキハ85系と置き換わり、全列車で運用開始されるHC85系に乗るのがもうひとつである。

名古屋8時43分発の特急ひだ3号がHC85系の運用で、旅の初っ端から目的のひとつを果たす。まだ新車の香りが残る車内に入ると、オレンジ色系統の明るいシートが目を引く。最近の車両らしく、ひじ掛けの所にコンセントが装備され、Wifiも利用可能である。スマホで動画を観ていればあっとう間に目的地に着いてしまうが、逆に「移動を楽しむ」という昔ながらの鉄道旅が遠のいていくわけである。

名古屋~岐阜間はシートが進行方向逆向きにセットされており、どうにも後ろ向きな気分で旅が始まるのが難である。20分後に岐阜に着き、ここから高山本線に入る。ようやく正方向に車窓が流れ始め、旅の気分が盛り上がるわけである。

HC85系はハイブリッド気動車で、車両表記も「クモハ85」などと電車のようである。日産自動車のハイブリッドと同じ仕組みで、加速する時はエンジンとバッテリーから電気がモーターに供給される。逆に減速時は回生ブレーキによりバッテリーに電気がたまって行く。この様子は車内のLED表示板(行先とか列車名が表示されるアレである)にイラスト表示され、私は車窓そっちのけで見入ってしまった。その模様は左の動画でも見られるのでよろしければどうぞ。

飛水峡や中山七里といった景勝地では自動放送が入り、車窓に目を向けるきっかけとなる。ところが進行方向右側の車窓は、太陽が出ている方向なので眩しくて見づらい。自分で座席指定をする時は、必ず太陽がどの方向にあるかを考えるので、席の希望が通らないツアーのデメリットな部分を感じた。

下呂~高山間は宮トンネルで中央分水嶺を越えるので、基本的に山岳区間である。太平洋側から見て最後から二番目の駅「渚」を通過。この駅はあとでじっくり訪ねることとなる。宮トンネルを抜けると高山盆地が眼下に広がり、右の車窓からは先頭車が見えるような大カーブを曲がって行く。ほどなく高山駅に到着。エンジン音はほとんど気にならず、非常に静かな列車だった。

東海道区間で生じた遅れは高山到着までに回復し、7分しか接続時間がなかった下呂行きの路線バスに余裕で間に合った。渚駅まで戻り、若き日の思い出をたどる予定である。下呂行きの濃飛バスは、高山市街地を抜けると国道41号を南下する。そのまま宮トンネルをくぐれば早いのだが、旧道の峠道を越えていく。山を下ったところが久々野で、高山本線から見ると鄙びた田舎の駅だが、意外と町並みがしっかりしていてびっくりした。

ふたたび国道41号を南下し飛騨川と寄り添う。道の駅を右に見て飛騨川を渡ったところが渚駅口バス停である。ここで下車し渚駅に向かう。バス停から駅までは徒歩2~3分。徐々に国道を走るクルマの音が遠ざかっていった。

レールウェイ・ライターとして有名な故種村直樹さんが毎日新聞の記者時代に、渚駅の年越しの様子をルポルタージュし記事にまとめたという話を聞き、私がまだ学生時代だったころ青春18きっぷで高山本線に乗ったことがある。ちょうどこの渚駅で、特急列車通過待ちのため長時間停車した。小雪が降る中、列車の窓から小さな駅舎を眺めたシーンは未だに脳裏から離れない。そして今日、いままで通り過ぎるばかりであった渚駅を外から眺める機会を得た。渚駅の存在を知ってから35年以上も経ったのちにである。

上下のワイドビューひだの通過シーンを撮影し、駅舎やホームも撮影して一本の動画にしたものが、左上の画像のものである。もう何日かするとキハ85系が猛スピードで渚駅を通過していくのは見られないので、貴重な動画になった。

渚駅で小一時間を過ごし、渚駅口バス停から高山行きのバスに乗車。高山本線の駅を往復するのだから鈍行に乗って行けば良さそうなものだが、往路は15時前まで列車がなく、復路も14時37分発なので2時間も遅くなる。結局路線バスの方が便利なのである。ちなみにバス代は片道490円。列車なら高山まで420円と大差はない。


駅隣で便利な東急ステイ飛騨高山

高山に戻って駅周辺をぶらぶらし、今夜の宿である東急ステイ飛騨高山にチェックイン。部屋にはすぐに入らず、ホテルの外に逆戻り。チェックイン時にもらった地域クーポン券を高山濃飛バスセンターの窓口に出し、明日の高山⇔白川郷の往復チケットを購入。4,600円のところが2,000円引きで2,600円。理想的な地域クーポン券の利用方法である。

ホテルに戻り、部屋に荷物だけ置いてすぐに大浴場へ。「結の湯」というサブネームがホテルに付いているだけあって、素晴らしいお風呂だった。特にまだ日の高いうちから入った露天風呂は最高だった。

部屋に戻って、乾き物のツマミで宴会。部屋の窓からは高山駅を発着する列車がすぐ下に見える。窓を少し開けておけばディーゼルエンジンの唸りで発車するのが分かり、列車撮影にはもってこいの部屋だった。

翌朝は恒例の朝食動画の撮影。ちなみに朝食バイキングもツアー料金に入っている。別払いすると確か1,650円だそうで、その値段は正直ちょっと高いと思うが、ツアー代金に含まれていれば何の問題もない。というわけでバイキングの内容はYoutubeにアップしているので、よろしければどうぞ。

8時半ごろホテルをチェックアウトし、濃飛バスセンターから高速バスで白川郷へ。自由席だがクーポンを用意している外国人旅行者が多く、乗客の8割方はそれだった。およそ50分で白川郷の荻町バスターミナルに到着。1時間ほどしか滞在できないので、有名どころではないマイナーなスポットを巡ってみた。特に天龍宮境内からの眺望は、そこが小高い丘となっているので、茅葺きの屋根が連なり見事だった。重文の和田家住宅は混んでそうだったので、館内に入らず外観を撮影しただけ。まぁ白川郷は近いので再訪の機会があるだろう。

高速バスで高山駅に戻り、いよいよ帰途に就く。駅の改札の外で列になって並んでいると、改札上の時刻表示の異変に気付いた。特急ひだ○号の前にHC85系のイラストが付いていたり付いていなかったりするのだが、目指すひだ10号はイラスト付き。せっかく車両運用を調べてキハ85系で走る列車を予約したのに、これでは・・・。次の特急ひだ12号はイラスト付きでないのでキハ85系に間違いない。それでも結局予定通りHC85系のひだ10号に乗ることに決めた。1時間待つのがかったるいのと、自由席の席取り合戦に巻きこまれたくないことが理由である。また、1年半前にワイドビューひだに名古屋→富山の全区間乗り通しているのも、この決断を促した。というわけで私にとってのワイドビューひだ乗車は2021年9月が最後となった。

「ダイヤ改正前夜にはこういう事がよくあるのよねぇ~」と思いつつ快適な車内で呑みテツ。なんだかんだ最後にはキハ85系だろうが、HC85系だろうが関係ないのである。。。

何度も通るも外から見るのは初めての渚駅


天龍宮の境内から合掌造りの屋根を俯瞰


この3月のダイヤ改正で特急ひだの運用を外れるキハ85系が渚駅を全速力で通過


高山濃飛バスセンターから渚駅口まで宮峠を経由して走る濃飛バスの前面展望


高山と白川郷を結ぶ高速バスの前面展望。自由席で乗りやすいのも魅力


世界遺産「白川郷」のマイナーな場所を駆け足で巡ってみた

<終>

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