秘境を訪ねて 〜九州山岳ドライブ〜 |
東洋のナイアガラ!!
曽木の滝 |
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秋は里山が美しい季節。日本の秋の風景を求めてどこかにドライブしたくなる。そういえば南九州に前々から行ってみたかった場所があった。「東洋のナイアガラ」と呼ばれている鹿児島県大口市の「曽木の滝」。平家の落人伝説の残る宮崎県椎葉村や熊本県八代市泉町の「五家荘」。五木の子守唄で有名な熊本県五木村。これらの場所は公共交通機関に恵まれず、鉄道やバス主体で旅行をしていた自分にとって見果てぬ土地であった。というわけで今回の旅のテーマは「秘境めぐり」。トヨタ・プリウスをレンタルし、これらの場所を訪ねることにした。 |
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曽木の滝全景。川内川の中流にある |
ススキの穂が揺れる秋の一日 |
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この部分がナイアガラと呼ばれる所以かと |
昨夜の雨が水しぶきとなって流れ落ちる |
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曽木の滝を背景に筆者 |
五木村「子守唄の里」 大口から人吉へは国道267号、そして人吉からは国道445号を北上した。五木村までは道路整備が行き届いており、地元車は7〜80`くらいでぶっ飛ばしている。後ろから迫り来るクルマをバックミラーで確認しながら、何度も先に行かせた。 人吉市街から40分ほどで「道の駅 子守唄の里 五木」に到着。鉄道やバスに恵まれない土地ではあるが、自家用車さえあればそれほど不便を感じない距離だろう。同じ「平家落人の里」である椎葉村や五家荘と比ぶべくもないほど明るく豊かな土地柄だった。ただし、道の駅でエンドレスで流れていた「五木の子守唄」の曲調は寂しく不気味で、道路が開通するまでは陸の孤島であったことが偲ばれた。 |
子守唄の里五木に立ち寄る 眼下には樅木吊橋が 秘境にふさわしい吊橋の雰囲気 谷間にひっそりと茅葺の家 やわらかな秋の夕陽に映える 茅葺屋根が連なる小道 |
国道445号線もここまでは走りやすい |
子守唄をイメージしたオブジェ |
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五家荘へ 五木村の道の駅までは整備されていた国道445号も、そこから奥は「九州でも有数の"酷道”」と呼ばれている本性を見せる。道の駅を出て1`も行かないうちにセンターラインは無くなり、それから5分も経たないうちに離合困難な狭隘区間に入った。カーブミラーもまともに無いので、ブラインドコーナーは最徐行である。3ナンバーで、やや幅広のプリウスを選択したことが悔やまれた。それにしても、どこをどう来たのか4トンダンプが離合可能な場所で待っているのには驚いた。まぁダンプの側面はキズでベコベコ、ガードレールの方もボロボロの状態なので、無理を承知でこんな道を通しているのだろうが… 五木から30分くらい走ると急に視界が開けた。そこは五家荘の中でも最も南の椎原という集落だった。酷道を細心の注意で運転してきたストレスはかなりのもので、たまらずクルマを下りてしばしの休憩タイムとなった。 |
酷道で五家荘へ。たまらず休憩 |
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五家荘のそこかしこにある手書き案内板 |
せめて看板だけでも椎葉の雰囲気を味わう |
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上の吊橋から下の「しゃくなげ橋」を見下ろす |
山峡に架かる上の吊橋「あやとり橋」 |
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雅やかな五家荘平家の里 |
こんな山奥に能楽堂!! |
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平家の落人はこんな家に暮らしたのだろうか |
国道445号二本杉峠。標高1100b |
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夕もやに煙る山々。二本杉峠展望台にて |
五家荘にて 思いのほか低速走行を強いられたため、出発時のもたつきと合わせて予定からずいぶん遅れている。椎原集落を出発した15時は、予定なら平家の里を出て二本杉峠に向かっていなければならない時刻だった。平家の里から椎葉村へは最低でも2時間はかかると思われ、このまま椎葉村へ行っても夜になってしまうだろう。それならば五家荘を心ゆくまで満喫した方が有意義な気がしてきた。椎葉越え(林道は通行止)の案内板をうらめしい思いで眺め、いかにも秘境っぽいスポットである樅木吊橋に向かった。 対岸の展望台からもこの吊橋を眺めたが、やはり吊橋は渡った方がおもしろい。上下2つの吊橋があり、それぞれ「あやとり橋」と「しゃくなげ橋」と名付けられている。吊橋のたもとはミニ公園として整備されており、茅葺屋根の休憩所が山里の雰囲気とよくマッチしていて、一枚の風景画のようだった。 さぁ今日のメインである平家の里に向かおう。山深い鬱蒼とした森の中に、突如として現れる平安時代調の雅やかな建物。浅野忠信主演の映画「地雷を踏んだらサヨウナラ」に、深いジャングルを抜けると突如としてアンコールワットが現れるというシーンがあるが、それに勝るとも劣らない印象深いシチュエーションだった。 |
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東京〜大阪間を結ぶプレミアム昼特急号 |
1階席はわずか4席だけのプレミアム空間 |
幅広なプレミアムシート
やわらかな夕日に照らされて浮かび上がる能楽堂、手入れの行き届いた茅葺屋根の家並み。苦労してここにたどり着いた分、感動は深かった。1時間ほどかけてゆっくりと味わった後、日没せまる平家の里を後にした。 |
リクライニングさせるとかなり水平になる |
各座席に液晶モニターが付属 |
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案内だけでなくワンセグTVも見られる |
おまけ…プレミアム昼特急 翌21日は鹿児島空港を朝一番に発ち大阪へ。今回の旅のもうひとつの目的である高速バス「プレミアム昼特急」号に乗車するためである。この「プレミアム昼特急」号は、東京と大阪を東名・名神高速経由で8時間で結んでいる「東海道昼特急」号の豪華仕様で、多客期には1日2往復運行されている。のぞみなら2時間半もかからずに行ける距離を、わざわざ8時間もかけて走る高速バスにも需要があるのは、「時間はあるけど金は無い」という層が存在するためである。とすると「安くもないし、速くもない」というプレミアム昼特急は中途半端な存在だが、どういうわけか週末は予約が取りにくいほどの人気がある。その理由を探るのも今回の乗車目的のひとつである。 大阪駅桜橋口の高速バスターミナルから乗車してみて、まず感じたのはプライベートな空間が保たれているなということである。1階のプレミアムシートは普通座席に比べると1,300円高いのだが、わずか4席しかないためそのように感じたのである。シートは幅広でゆったりとしており、リクライニング角度は水平近くまで倒れ、国際線航空機のビジネスクラス以上ファーストクラス未満の快適さである。また、各座席にワンセグ対応のTVモニターが備え付けられていて、当日開催されていた菊花賞の模様もチェックできた。台湾では「総統シート」と呼ばれる横2列の独立シートを備えた高速バスがあるが、プレミアムシートはそれ以上の出来かもしれない。流れる時間は気にならない、一度座るとやみつきになる、そんなバスだった。 |
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<おしまい> |