フラノ ラベンダー エクスプレス


急遽予定変更で滝川駅で下車


夏至直後、年間で最も日没が遅いこの時期ならではの車窓を楽しむ


ひかり518号から間に合う列車では仙台に最先着のやまびこ221号

基本的には年に3回ある「大人の休日倶楽部パス」の発売期間だが、おそらくもっとも売れるのは6月下旬である今回の発売分だろう。一番売れるということは、一番混むというのと同意味で、混んだ列車には乗りたくはないのだが、今回は敢えて混む列車に乗ることになる。というのも「フラノラベンダーエクスプレス」が261系5000番台のラベンダー編成で臨時特急として運転されることを耳にして、JR北海道でも数少ない観光列車なのでちょっと乗ってみたいと心を動かされたからである。

フラノラベンダーエクスプレスの運転情報を知ったのは1か月ほど前で、それまでは本州最北端の大間に行く気マンマンであった。それゆえ6月27日と28日の2日間しか休みの申請を出していなかった。たった2日間の休みで、鉄道だけで北海道に渡り、フラノラベンダーエクスプレスに乗るのはたやすいことではない。考えに考えたうえで、ようやく仙台に前泊すると富良野発のその列車に乗ることができることが分かった。ただし列車に乗りっぱなしの行程である。まぁ乗りテツ派の私にとってはよくある旅なのであるが。

というわけで2022年6月26日日曜日、19時17分に浜松を出るひかり518号で旅がスタート。夏至直後のこの時期は、年間で最も日没が遅い時期であるので、浜松を発車直後はもちろん、静岡到着の19時35分過ぎでもまだ空に薄明りが残っていた。そんな車窓の様子は左上の画像からYoutubeにジャンプしてご覧あれ。

ひかり号の東京到着は20時42分。わずか2分後に仙台行きのやまびこ159号が発車するが、そもそもそんな列車に間に合うはずもなく、おとなしく20時56分発のやまびこ221号に乗車する。この列車は仙台まで白石蔵王以外の各駅に停車するが、後続のはやぶさ号に抜かれることなく仙台に最先着する不思議な列車である。12分前に発車したやまびこ号が露払いになっているおかげで、自由席でもガラガラの状態。すっかり酔っぱらっていたが、夜の東北新幹線を堪能することができた。仙台到着は23時02分。この日はホリデイイン仙台に宿泊した。


仙台始発の唯一の北海道新幹線はやぶさ号で梅雨を脱出し北海道へ


秘境駅日本一の小幌駅通過シーンも収録。新函館北斗~札幌間で乗車

ホテルではYoutube動画の作成を夜遅くまでしてしまい、結局睡眠時間3時間で起きるはめになった。そんな睡眠時間で仕事に行ったらきつくて仕方がないが、列車に乗っているだけならどうということはない。仙台を6時40分に発車するはやぶさ95号で新函館北斗へ。前夜のやまびこに似て、この列車も新青森までは各駅停車。おかげで北海道入りするまでにぐっすり眠れたことである。

仙台を出るときは雨が降っていたが、青函トンネルを抜けて北海道に上陸すると澄み切った青空が出迎えてくれた。新函館北斗で北斗7号に乗り継ぎ、大沼公園やら駒ケ岳の眺めが私を癒してくれる。列車は振り子式の281系。指定席は座席幅と真ん中のひじ掛けが広くなっており、隣席に乗客がいたが全然苦にならなかった。もとよりスマホで動画を見ながら酒をチビチビやるという呑みテツスタイルだと、隣席に人が居ようが居まいが、快適性は同じようなものである。

長万部を過ぎて、ふたたびビデオカメラを構える。狙いは日本一の秘境駅である小幌駅。トンネルとトンネルの間の一瞬であったが、ホームの様子などを捉えた。よろしければ左の画像から動画に飛んでご覧あれ。

新函館北斗から3時間半かけてようやく札幌に到着。同じように新函館北斗から乗車した「おときゅうパス」利用者の多くは改札口に向かったが、私は8分の待ち合わせで、まだまだ列車に乗り続ける。今度の列車は旭川行きのカムイ19号。指定席1両に対し、自由席は4両で、自由席でも座れる確率の高い列車である。私は指定席の方がシートのグレードが良いを知っていながら、指定券を予約していたのに1号車の自由席に座ってしまった。それほどガラガラに空いていたのである。

この後の予定は、終点の旭川まで行って富良野線の普通列車に乗り継ぐというもの。しかしガラガラのカムイに乗っているうちに「ラベンダーのシーズンに美瑛を通る富良野線ってどれだけ混むのか分からない。ヒエ~」と思い始め、「それなら滝川から根室本線で富良野に向かう方が堅いかも」という結論になった。時刻を調べると、滝川で乗り継いでも、旭川で乗り継いでも1分しか到着時刻が変わらないことが分かり、それなら滝川で45分ほど時間の余裕ができる根室本線で行った方がいい。というわけで急遽14時52分到着の滝川でカムイ19号を下車した。

しかしながら滝川という町は何もない町で、駅前通りから繁華街方向へ20分ほどさまよったが、お賽銭を投げられる神社さえ見つからなかった次第。結局滝川乗り換え作戦は徒労に終わり、おとなしく駅に戻って東鹿越行きの普通列車に乗車した。

JR北海道でも急速に数を減らしているキハ40だが、昨年の今ごろ乗車した池田と帯広の区間もDECMOのH100系に置き換えられたとのこと。私がちょうど鉄道趣味を始めた頃にデビューした列車だけに経年劣化は隠せないが、空いたローカル線で乗ると味わいがある。無くなる前にせいぜい乗っておきたい車両である。

根室本線の滝川~富良野間は確か1991年以来31年ぶりの乗車。道東に行くには当然石北線に乗車しており、区間から外れる富良野駅前に立ったのは1987年夏にバイクで来て以来、実に35年ぶりである。


とりあえず道央まで来ないと見られない789系1000番台の特急カムイ19号


根室本線の滝川~富良野間に乗車するのは31年ぶり?キハ40も希少となった


この旅の目的のフラノラベンダーエクスプレスに乗車。261系5000番台ラベンダー編成


JR東日本ホテルメッツ札幌に宿泊

35年ぶりの富良野駅前なのに、列車の乗り継ぎ時間はわずか9分。それも富良野行き鈍行が2分ほど遅れて到着だったので、駅前ではビデオカメラを少し回しただけですぐにホームに舞い戻った。停車中のフラノラベンダーエクスプレスに乗り込むとすぐドアが閉まった。261系5000番台ラベンダー編成を使用するこの列車は、富良野方の1号車がフリースペースの「ラベンダーラウンジ」。既に先客がかなりいたが、大型テーブル付のボックスシートが空いており、そこに座り込んで呑みテツを再開。夕暮れの車窓を肴に水割りをチビチビやるのは至福の時だった。

この列車に乗ったそばからラベンダーラウンジに腰を据えていたので、せっかく予約した指定席の方はどうなっているのかと思い、富良野発車以来1時間半ぶりに2号車に顔を出した。北斗で乗車した281系の指定席によく似たシートで、こちらもゆったりできそう。岩見沢から札幌までのわずかな時間だったが、こちらの乗り心地も堪能してもうお腹いっぱい。18時50分に札幌に到着し、真っすぐ今夜の宿泊先であるJR東日本ホテルメッツ札幌へ。札幌駅至近で設備もちゃんとしているのに、4000円台で宿泊できるコスパのいいホテルだった。


札幌を早朝6時に発車する北斗2号。これから10時間以上かけて浜松に戻る


新函館北斗から東京まではE5系はやぶさ18号の8号車「新幹線オフィス車両」に乗車


久々に崎陽軒のシウマイ購入

翌朝は6時ちょうどの北斗2号に乗車。10時間以上かけて陸路を這いつくばりながら浜松に戻るわけである。昨日乗車した北斗と同様281系だったが、今回も指定券を持っているのに空いている自由席に乗車。指定席と違いシート幅も席と席の間のひじ掛けも狭いが、やっぱり混んだ指定席よりも空いている自由席の方がいい。往路は海側に座ったので、今度は山側に座り、白老あたりのサラブレッドの牧場を見てずいぶんと癒された。

道南に下ってくるにしたがって雨が強くなり、車窓がぱっとしないまま新函館北斗に到着。18分の待ち合わせで東京行きのはやぶさ18号に乗り換える。新函館北斗駅前の観光ショップで北海道土産を買っていたらすぐに時間がなくなり、慌てて新幹線ホームへ。往路同様、復路も「新幹線オフィス車両」の8号車を予約したが、サラリーマンと思しき姿はほんのわずかで、ほとんどが観光客。ネット予約などで8号車を簡単に予約できないようにしないと、新幹線オフィス車両の名が泣くというものである。

まぁそれはともかく、はやぶさ18号からはアルコール解禁。駅前のお店で買った海産物などを肴にハイボールをグビグビ。眠くなったら眠るという怠惰な生活を送り、「乗りテツは他のどんな鉄道趣味より楽である」ということを実感した。また8割がた席が埋まっているにもかかわらず、ラッキーなことに隣席に乗客が始発駅から終着駅まで現れなかった。昼下がりの14時08分に東京駅に到着。売店で崎陽軒のシウマイを買い込み、いよいよ浜松への最後の列車となるこだま733号に乗車した。


梅雨前線は函館付近に停滞中


東京駅日本橋口ならではのE6系撮影


最後はN700S系のグリーン車で締めくくる。東京~浜松間の全駅停車シーンを撮影


これをツマミに呑みテツだ

エクスプレス予約の「こだまグリーン早得」を利用して、N700S系のグリーン車に格安で乗車。さきほど買ったシウマイを肴に、呑みテツもラストスパート。東京~浜松間の2時間弱にわたって、水割りを飲みながら時折ビデオカメラを回していた。浜松を出てから浜松に戻るまで、旅で利用した全列車を動画としてアップするのは初めてで、酔っ払いながらもビデオカメラを回し続けた自分を褒めてあげたい。

<おわり>

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