季節外れのリゾート物語


バヌーシー出資馬のがんばれ馬券

前々から一口馬主に興味があったが、維持費が大変そうで二の足を踏んでいた。そこへDMMバヌーシーの募集が始まったものだから、ホイホイと飛びついてしまった。投資した馬の中では最も早くデビューするアイワナシーユー号。たまたま京都競馬観戦を予定していた日に、東京競馬場第5レースに出走することが決まったので、これ幸いと京都競馬場でデビューレースを観戦し、併せて「がんばれ馬券」を購入することにした。

半年に1回来ている京都競馬場。最近ではホームの中京競馬場にはすっかりご無沙汰で、京都競馬場がホーム競馬場と化す日も近いようである。今回は観戦後に関西空港から沖縄に飛ぶ予定なので、昼休み直後のレースまでしか見られない。そのため第1レースからきっちり見ようということで、普段なら近鉄特急で往復するところを新幹線で行くことにした。おかげで9時30分には事前に予約していた指定席に到着した。

第1レースは10時10分発走。軸馬から7頭に馬連とワイドで流す馬券を持っていたが、肝心の軸馬が馬群にもまれて4着に敗退。当然のように縦目で当たっており、ハズれる時の典型的なパターンで幕を開けた。続く第2レースは3連複2頭軸の総流しで勝負。軸馬の2頭はきっちり1,2着に来たものの、3着が6番人気馬ではギリギリ届かない。80円ガミってしまった。


GTシーズンの中休み。人出もまばら


誘導馬を先頭に第1レース出走馬の入場

京都競馬収支表 (17.11.5開催)
投資 回収 収支 累計
京都1R 1,400 0 -1,400 -1,400
京都2R 1,300 1,220 -80 -1,480
京都3R 2,800 6,410 +3,610 +2,130
京都4R 1,400 1,420 +20 +2,150
東京5R 3,200 11,190 +7,990 +10,140
京都5R 2,400 3,810 +1,410 +11,550
合計 12,500 24,050 +11,550 192.4%

第1レース最後の直線。軸馬は馬群の中


第3レースはダート1,800mでスタンド前発走

気を取り直して第3レース。今度はダート1,800mということでスタンド前発走。スタート地点はちょうど見やすい位置である。相変わらず人気馬を軸に流し馬券を購入するのだが、「少頭数ほど荒れる」という格言を信じて、9頭立てながら3連複軸1頭流しの28点買い。結果は1番人気→8番人気→4番人気ときて、6,410円の中穴配当。これで一息つけた。第4レースは、ほぼ行って来いの馬券を的中させて、午前中のレースは終了。京都競馬場の昼休み中に行われる東京第5レースが楽しみである。

さて、その東京競馬場の第5レース牝馬限定新馬戦に愛馬アイワナシーユー号が出走する。パドック中継で、その姿が映るたびに「がんばれ〜」と念を送り、いざスタートすると、指定席の机にある小さなモニターでその姿を追い続けた。最後の直線の坂上でいったん先頭に立ったときには「おっ」と思い、その後はオレンジ色の帽子の馬との壮絶な叩き合い。結果はクビ差の2着と惜しかったが、馬連、ワイドの総流しでがっつり儲けさせてもらった。1口1万円の出資のうち8割くらい回収してしまうという快挙。いや、お金うんぬんの前に、本気で応援できる馬ができて良かったとつくづく思った。

昼休みのひと騒動が終わり、今回の旅で聴こうとエアチェックしてきた「今日は一日 浜松アーカイブス三昧」に耳を傾けた。すると大瀧詠一さんの「恋するカレン」が流れた。愛馬が2着に頑張ったということ、高配当が取れたこと、その他さまざまな想いと、今は亡き大瀧詠一さんの歌声が、昼下がりの競馬場で融合して、なんとも幸福な感じに包まれた。この感覚は東日本大震災の時、飛行機が飛ぶ飛ばないの騒動の中、ハワイからなんとか成田に戻った後、名古屋へ向かうボンバルディア機で味わった感じに似ていると感じた。そんな稀有な体験を思い出しただけでも、アイワナシーユーに出資し、京都競馬場に来た甲斐があった。

その後、京都の方の第5レースでも的中し、1万円超のプラスにして淀駅に向かった。さぁて、いよいよお楽しみの「季節外れのリゾート」気分を味わうために沖縄へ旅立つわけである。

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目の前をスタート。結果は中穴で一息つく


久々のラピート。スーパーシートにて筆者


薄暮の那覇空港に着陸。飲めばあっという間


満席の738から解放され沖縄の土を踏む


ホテルグランビューガーデン沖縄


窓の右手遠くに海が眺められる


連泊すると朝食バイキングが無料

淀から樟葉に準急に移動し、そこで特急に乗り継ぎ。特別料金がかからない車両としては、京阪8000系は日本でトップのアコモデーションだと思う。その豪華な転換クロスシートに幸運にも座れたので、予定を変更して終点の淀屋橋まで乗り通した。この夏から有料のプレミアムカーを1両連結したが、空席があれば無料の転クロで十分である。

淀屋橋から難波へ地下鉄で移動し、南海の駅に出て久々にラピートに対面。チケットレスサービス会員にはアップグレードキャンペーンを実施しており、レギュラーシートと同じ510円でスーパーシートに座った。シートピッチがゆったりしており、ひじ掛けもデカいのでリッチな気分で関西空港に移動。いよいよ沖縄へのフライトである。

関空→那覇を旅割9,300円と格安な値段で予約していたので「どうせ混んでいないだろう」とタカをくくっていたが、実際は満席での出発であった。それでも非常口座席を確保していたので足元には余裕があるが、ナローボディの737-800の3列+3列シートは満席状態では非常識なほど窮屈である。シラフの状態で2時間30分のフライト時間は難行苦行だろうが、こんな時のためにちゃんと対策を打っている。サーモスの600mlの水筒に、濃いめの水割りと氷を詰めて、空港のセキュリティチェックを通り抜けている。これさえあれば、どんなに狭い機内でも、長時間移動でも、瞬間移動に感じられる。実際、落語チャンネルを聴きながら一杯やっていると、あっという間に那覇空港に着いてしまった。ただし濃いめの水割りなので、その後のホテルへの移動は、へべれけでかなり大変だった。

さて、沖縄モノレールと56番のバスを乗り継いで、道の駅豊崎バス停に到着。今夜から連泊するホテルグランビューガーデン沖縄は、バス停から徒歩5分ほどである。連泊で朝食1日分無料サービスということだが、2泊して12,000円ちょっとと、かなりリーズナブル。シティビューのシングルルームということだが、部屋はまずまず広く、窓の外の右手遠くにはちゃんと海も眺められた。また中庭にはプールがあって、夏季は宿泊者が無料で利用できるらしい。オンシーズンには値段も上がるのだろうが、リーズナブルにプチリゾート気分を味わえそうで、好感の持てるホテルだった。

翌朝9時にホテルを出発し、徒歩で豊崎美らSUNビーチに向かった。朝からどんよりとした曇り空で、これが万座ビーチとかブセナテラスとかに泊まっていたら「金返せ」みたいな気分になるが、この値段で泊まっていれば文句も出ない。10分ほどでビーチの入口に着き、浜辺に下りた。埋立地の人工ビーチであるが、珊瑚の海らしく海の色はエメラルドグリーンである。記念撮影をしながら北端に向かって歩いていると、日が差してきた。すると浜辺の砂は白く輝き、海の色も空の青さを映し、美しさを増した。上空には那覇空港への着陸便や自衛隊のF15などが飛び交い、飛行機が好きな自分はそのたびごとにカメラを向けた。思えばこの時が今回の旅のピークだったのかもしれない。つかの間のリゾート気分を楽しんだひとときであった。

ビーチを後にして、入口そばのバス停から9時55分発の105番のバスに乗車。豊見城市内を一周するバスで、市から補助金が出ているとみられ、どこまで乗っても160円。100分かけて、また元のバス停に戻ってくる循環バスである。今回はラムサール条約に登録されている漫湖を訪れるため、わざと遠回りになる左回りのバスに乗り、帰りも左回りのバスに乗って豊見城市を一周するつもりである。漫湖最寄りの住宅前バス停まで、乗車時間は1時間。荒天のため急きょAKB総選挙の会場となった豊見城市立中央公民館の前を通るなど、いろいろと興味深い車窓がよぎった。

11時ころに那覇市小禄の住宅前バス停に到着。そこから住宅街を5分ほど歩いて漫湖水鳥・湿地センターに着いた。しかし玄関には「休館日」の表示が…。毎週月曜日は休館するらしい。市内一周バスでどこで降りたらいいかなど、ここに来るまでにさんざんネットを調べたが、ビジターセンターの休館日のことは頭になかった…。館内を通り抜けねば遊歩道に出られないようになっており、仕方なくすぐ横を流れる用水路に生えているマングローブを写しただけで退散した。予定していた帰りのバスは1時間40分後なので、豊見城一周をあきらめ、小禄バス停から98番のバスで帰途についた。

ホテルに戻ってきたのは正午すぎ。やることがなくなってしまったので、当初の目的を果たすため、ゆっくり酒を飲みながらぼーっとすることにした。ところが生来の貧乏性のためか、何もしないということが苦痛で、PCをいじったり、AFN沖縄を聴いたり、テレビのワイドショーを見たりと、なかなか落ち着かない。疲れるけれど、自分には列車を乗り継いで酒を飲むという旅があっているのだと感じた。そうこうしているうちに16時を回り、大浴場がオープン。温泉ではないが露天風呂があり、そこで10分ほどお湯に浸かったのが、この旅で最ものんびりできた時間だった。

そんなこんなで連泊し、3日目の朝6時半にチェックアウト。道の駅豊崎バス停から105番の右回りのバスに乗車。昨日できなかった豊見城一周を完成させようという目論見である。日の出の遅い沖縄では、バスに乗車した頃がちょうど日の出の時刻。早い時間帯であるが、豊見城高校の前を通るバスなので、通学の高校生で座席が埋まった。豊崎から30分ほどで、ゆいレールの奥武山公園駅に到着し、モノレールに乗り継いだ。帰りの飛行機は那覇空港を10時05分に出発するので、2時間半も前に空港に着いてしまったが、JALファーストクラスの予約を持っているので、普段は入場できない「さくらラウンジ」で時間が潰せた。

機体を撮影するために早めにラウンジを出て搭乗ゲートに向かった。ところが機体の修理が必要ということで、所定の時刻になってもなかなか呼び出しがかからない。9時50分搭乗の予定が、10時10分になり、10時30分に変更されたが、その時間になっても搭乗が始まらない。かなり余裕を持って帰りの新幹線の予約していたが、その余裕時分を食いつぶしてしまった。結局1時間30分の遅延となり、とうてい当初予約していた新幹線に間に合わなくなってしまった。こんなとき、スマホで簡単に予約変更が可能な、エクスプレス予約の会員で良かったと思う。

この旅の本当の目的は、那覇→羽田でJALファーストクラスに搭乗することで、乗ってみればやっぱり良かったと感じるが、それ以上にいいなと思ったのは新横浜から乗車した700系こだまである。当初「こだまグリーン早得」の予約を持っていたが、そんなこんなで変更してしまったので、普通車指定席にランクダウン。JALファーストクラスに比べれば貧相で狭いシートになってしまったが、水割りをチビチビやりながらタバコを吸って、この旅の思い出の一曲となった大瀧詠一の「恋するカレン」を聴き直せば、それはそれは至福の時間となる。そういえば昨夏の新千歳空港行きの快速エアポートでも、これと似たようなシチュエーションがあったっけ。その時は「雨のウェンズデイ」だったので、亡くなった後に2曲も新しい旅の思い出の曲を作らせてしまう大瀧さんの偉大さに、改めて感じいってしまった。


オーシャンビューの部屋側の海の眺め


プールも完備でちょっとリゾートホテルっぽい


ホテルより徒歩10分で「美らSUNビーチ」に到着


那覇空港への着陸機が頭上を飛び交う


晴れ間が出始め、珊瑚の海をバックに記念撮影


ビーチ中央にある展望台にて手を振る筆者


太陽が顔を出すとビーチの白い砂が眩しく、暦の上では明日から冬とはとても思えない


AKB総選挙が開催されるはずだった広場


105番のバスで豊見城一周ツアーに出発


ラムサール条約登録の漫湖水鳥湿地センター


市街地にもかかわらずマングローブが生い茂る


この日の豊見城一周を諦め98番のバスに乗車


90分遅延したJAL902便。ファーストクラス搭乗

<終>

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