はるたび 明石・神戸


京阪・叡山の出町柳駅から出発


せっかくの旅なのに、乗り物の中ではスマホの画面を見てばかりで車窓をめっきり見なくなった。これはいかんということで、今回はテレビ番組をなるべくスマホにダウンロードせずに旅の当日を迎えた。今回にかぎってスマホは宿でチェックするというルールを決めたので、昔のように音楽を聴きながら車窓を楽しむことができる。特に春の旅では、若い頃に編集したカセットテープがたくさん残っており、現在ではMP3データとして常時スマホに入っている。こいつを聴きながら伝統のSpring Tourを楽しもうという算段である。

さっそくその効果が表れたのは出町柳から京阪特急に乗車した時。8000系特急車ダブルデッカーの2階に陣取ったので、もともと眺めがいい座席。その席で枚方あたりの開けた高架区間の車窓を見ると大阪のビル群が秀逸だった。その時にかかっていた曲は、アース、ウインド&ファイアの「バック・オン・ザ・ロード」。スティーヴ・ルカサーのギターソロが素晴らしい。そしてソロ部分だけでなく、ボーカルが入った後のバックで演奏しているところもカッコイイ。なんかTOTOの曲よりも伸び伸びと弾いているなという感じがしてしまう。アルバムとしては「フェイセス」。「自由のスパークル」が収録されていてリアルタイムでは聴いていたアルバムである。


兵庫県立明石公園として整備されている明石城跡。二つの櫓は国指定重文

終点の淀屋橋に到着したのは9時半ごろ。今朝は早起きして始発の新幹線で来ているので4時半ごろ朝食を食べている。そのためもう腹ペコである。ここから梅田方面に歩けば朝から飲める店だってあるかもしれない。と思って歩を進めるも閉まっている店ばかり。ここは北新地。東京の銀座と並び称される高級クラブ街ではさもありなん。結局そのまま阪神の大阪梅田駅に着いてしまった。

そうなれば電車の中でどうにかするしかない。梅田から発車する姫路行きの直通特急は、ほとんどの編成が転換クロスシート装備。幸いウイスキーの水割りは水筒に入れており、傍目では誰も酒を飲んでいるなんて気づくまい。ツマミはじゃがビーで、これがけっこう腹にたまるのである。

横並び席が丸ごと空いているところもある状態で大阪梅田駅を発車したが、次の停車駅の尼崎でほぼ満席に。私の隣にもサラリーマン風の若い男性が座った。私の方はそれに構うことなくグビグビ。神戸三宮で空席が目立つ状態となったが、隣席は若者に占領されたまま。「こいつはトナラーか」と思いつつ、結局降車駅の明石までご一緒させていただいた。

当初の予定よりも2時間以上早く明石に到着。旅程はすぐにバスに乗り換えて西神中央に向かうのだが、せっかく時間があるので明石に来た証がほしい。駅の北には、おあつらえ向きに公園が広がっており、明石城の文字も見える。ちょっと散策していこうかという気分になった。

予想最高気温は20度を越えるような、うららかな陽気。県立明石公園の芝生広場では、小さな子どもを連れた若いお母さんどうしが、シートを広げて軽食を食べている。そんなピクニック気分にさせる暖かな日である。それを横目に見ながら奥の方に歩いていくと、巽櫓に登る階段の脇に日時計が鎮座していた。以前に訪れたことがあるが、明石市は子午線の通る町。正午きっかりに真北に影が落ちるのは子午線上の地しかないので、日時計を置くのに相応しい町だと思った。

二ノ丸側から巽櫓の北に回り、狭間を見ながら坤櫓に行きついた。この辺は左上の動画でも紹介している。そして天守台へと向かうのだが、実際の天守が建っているわけではないので、「ここが天守台?」「いやこっちが天守台?」と大いに迷った。その天守台からは明石トーカロ球場を見下ろすことができ、大学のリーグ戦っぽい試合が行われていた。

明石公園を後にして、今度は駅南へ。魚の棚(うおんたな)という有名な商店街があり、その入口に「よし川」という玉子焼(明石焼き)が食べられる店がある。明石焼きという名前は若い頃から知っていたが、これまで食べたことがない。いい機会なので店に入ってみた。

昼食どきということで満席だったが、運よく待つことなく席にありつけた。玉子焼きとたこ飯のセットを頼み、ついでに生ビールも注文した。明石焼きはアツアツで、思わずリバースするという場面もあったが、コツをつかめば美味しくて箸が止らなかった。そのコツというのは、明石焼きをまず出汁につけて冷まし、口に入れると同時に生ビールで流し込むというやり方。たこ飯の方も、たこの風味が効いていて美味だった。一方、店の壁には福原遥嬢が初めて書いたというサインも飾られており、これを見るだけでも「よし川」に来る価値があるというもの。早起きは三文の徳というが、この店に出会えたのも朝一番の下りこだま号に乗ったからこそである。というわけで「よし川」での模様は左の画像からどうぞ。

ふたたび明石駅に戻り、神姫バスの西神中央駅行きに乗車。発車時点でほぼ満席という状態だったが、降りる人がいると思えばまた乗って来る人がいるという感じで、終点に向けて空いていくという路線とはわけが違う。明石駅は山陽本線と山陽電車の主要駅だが、一方の西神中央駅も神戸中心街にダイレクトに行ける地下鉄の始発駅である。西神中央経由なら必ず座っていけるということを考えると、明石と西神中央の間に住む人にとってはどちらに行くか迷うだろうなぁ。


巨大ニュータウンの玄関駅

西神ニュータウンの玄関駅である西神中央駅は、広大な神戸のベッドタウンを背景にしていることから大きなターミナル駅だった。ここから神戸市営地下鉄西神・山手線で新神戸まで乗り換えなしに行ける。新神戸行きなら居眠りしていても終点で起こしてくれる。というのも直通特急とよし川で昼間から飲んでしまったため、地下鉄の中で強烈な睡魔に襲われたからである。今日の宿はANAクラウンプラザホテル神戸。ここは新神戸駅に直結なので、こういう電車がありがたい。

そんなこんなでホテルには14時半前に到着。あてがわれたのは西向きの部屋で、カーテンを開けると春の西日が強烈でクーラーを入れたくなるほど。で、部屋で飲み直し。この日はWBCの準々決勝が19時からあり、酔っぱらってさえいなければ最後まで見届けられたが、この後も呑み続けたために、日本が4点を先制したところから記憶がなくなっていた。野球つながりでいうと、翌朝チェックアウトのためエレベーターに乗っていると、広島カープのスタッフが乗ってきた。途中の階で選手らしき人も乗ってきた。どこかで見たことがある顔だなぁと思っていたら秋山翔吾選手だった。大きな遠征用のトランクなどを持っていたのでエレベーターを先に降りてもらったら「ありがとうございます」と丁寧にはっきりとした口調で私ごときに挨拶をしてくれた。いい選手は人ができていると思った。

チェックアウト後はそのまま地下4階に降りて地下鉄に乗車。三宮駅に着くとまだ8時台。この時間の大阪方面に向かう阪急電車は混んでいそうだが、時間に余裕あるので普通電車をチョイス。これが正解で、車内はガラガラ。途中駅で乗り降りがあるが、席がすべてうまったのは西宮北口からだった。有料特急でないにもかかわらずこの余裕。それでいて阪急は駅間が長いので決して遅くはない。ラッシュ時間帯に乗るのならおすすめである。

大阪駅を10時10分発の高速バス「グラン昼特急8号」に乗ると旅は終盤。東名を経由していた頃の東海道昼特急には何度も乗車したが、新東名経由のバスは初めてである。途中のもっくる新城で降りて、飯田線の三河東郷駅まで歩いたが、少なくとも雨が降っていなければストレスのない距離だった。しかしながら東名浜松北と比べると、自宅までの所要時間の差は歴然としており、また飯田線+東海道線分の運賃1,170円も余計にかかる。左の動画をご覧になれば分かるようにバス自体は快適なだけに、もう1回東名経由に戻してくれないかなぁというのが浜北区民の正直な願いである。

淀屋橋駅からぶらぶら歩いて阪神梅田へ


今回は西向きの部屋からの夜景を楽しむ


明石魚の棚商店街にある「よし川」さんで初の玉子焼(明石焼き)をいただく


明石駅→西神中央の路線は神姫バスでもドル箱なのでは・・・


スカニア製2階建て車両のグラン昼特急8号。大阪~新城間は得割で3,840円

<終>

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