山行報告書

宮之浦岳

目   的:個人山行

山域・山名:屋久島・宮之浦岳(1935.3m)

登山方法 :縦走

メンバー :(L)矢嶋尚(56)、(観光)井出正(57)、(会計)三橋智道(55)、(食糧)箕西幹夫(36)、(装備)清水菖司

      (食糧)佐々木義博(54)、須藤隆夫(57)

日   時:平成14年6月20日(木)〜23日(日)

交 通 費:1人90,000円

装   備:

 共同 矢 嶋 コッヘル、コンロ        清 水 コンロ、ランタン、水筒2.5L用

    井 出 コンロ、ランタン        佐々木 コンロ、ツエルト、水筒2.5L用

    箕 西 ガスボンベ4個

 個人 防寒具、ヘッドライト、雨具、着替え、地図、磁石、飲料水(1L)、デジタルカメラ、食器、シュラフ、エアー

    マット、テーピング、時計、筆記用具、行動食(3日分)、非常食(1日分)

コ ー ス:6月20日(木)雨時々強い一時曇り

  平塚駅05:17/05:41=横浜駅06:15/06:24=京急蒲田駅=羽田空港駅06:48/08:00JAS 371

  鹿児島空港09:45/10:40より12:10に遅れ=JAC 073=屋久島空港12:50/14:20=白谷雲水峡

  管理棟前東屋14:40 泊り

             宮之浦岳              

 鹿児島空港に着いたものの屋久島へのフライトは天候待ち、1時間半遅れでわずかな天候回復を捕まえて屋久島空港に降りる。天候は雨一時曇り、上空には青空も見える、変わりやすい天気だ。民宿への荷物の宅急便の手配と、スーパーへのガスボンベ調達を終えタクシーで淀川入口に向かう。激しく降って来た雨はここ数日続いている模様で、道路は通行止め、大雨警報、雷雨注意報が出ている。無線タクシーの情報を集め、下山予定の白谷雲水峡入口までならタクシーで行けるため、計画の逆コースを取って白谷山荘に入ることにする。入口の管理棟に下りると、直ぐ前の橋から見る白谷雲水峡は激しく増水して豪快に流れ落ちている。管理棟のおばさんに状況を聞くと、雨は症候状態で今は激しく流れている沢も少しづつ水は引いているらしい。しかし、上の歩道で2箇所沢を渡渉する所が多分渡れないだろうとのこと。夕方まで様子を見ることにする。夕方少し雨がやんだので上の偵察を兼ねて弥生杉コースを30分程で回ってくる。弥生杉は丹沢の箒杉位で樹齢3,000年と言われている。直ぐ入口に有る為、雨天時縄文杉に行けない時の代替コースになっているのだろう。入口に戻ると上の公衆トイレの横には、日本猿より少し小さな屋久猿が56匹姿を見せ我々を見守っている。タクシーで来る時には小さな屋久鹿も出迎えてくれた。屋久鹿は大きくなっても35kg位で可愛い子鹿のバンビーと言ったところだ。屋久島は原生林と動物の宝庫だ。雨は依然として降ったり止んだり、時々激しく降る。白谷山荘に行くのは諦めて今日はここの東屋に宿を借り早めの宴会と食事を取り、適当にベンチと床の上のシュラフに潜り込む。

    6月21日(金)雨時々強い

  白谷雲水峡管理棟前東屋06:35〜白谷山荘07:20〜辻峠10:50〜ウイルソン株〜縄文杉11:55

  高塚小屋〜新高塚小屋13:38 泊り

 夜中中、沢の轟音と時々降る激しい雨に、熟睡する事が出来ず朝を迎える。雨は相変らず強くなったり弱まったりを繰り返してたが、沢の水は随分引いた様だ。出発する時には雨も小降りとなり、傘を差して白谷雲水峡の遊歩道を登る。沢は滝とナメ滝の連続で、増水した流れはその迫力を尚一層豪快なものにして、素晴らしい渓谷美を見せてくれていた。直ぐに雷が2回ほど鳴ったのが気になりながら、徐々に本降りとなり始めた雨に諦めつつ白谷山荘前に着く。沢を飛び石伝いに渡りここまで何とか靴を濡らさずに快適に小屋で休む。10分の休憩の間に、沢は増水が始まっており何とかやっと対岸に渡り返すことが出来た。雨は時々強く降ったりして、大雨の中、良く整備された軌道の真中に敷かれた板に助けられながら歩く。時々名前の付けられた大きな杉が出て来るが、名前の付けられていない大きな杉もいくらでも有る。屋久島の山は深く大きい。大株歩道へ入り、奥へ奥へと急な歩道を進むと、しっかりした奇麗な木道がウィルソン株へと導いてくれる。株は中が空洞になっており広い。とにかく広い。10畳は有るだろう。秀吉の命を受けてこんなに太い杉を切り出した当時の人の物凄さに感心させられる。ここで初めて男女5人の若者パーティーに会い上の状況を確認する。大雨警報の中の雨は、尚一層その激しさを増し、登山道は沢と化し流れ下っている。もう沢も増水していて戻るのも難しいだろう。尚も急な木道を登りいい加減飽きた頃、ドドドーンと際立つ縄文杉が現れる。大きい、とにかく物凄い。さすがに世界遺産に登録されただけは有る。ここまで5時間も掛けて1本の縄文杉だけを見に来る“何とかツアー”の価値が解って来る。直ぐ上の東屋で行動食を食べながら今日初めて雨具を着て最後の登りに備える。良くもまあ傘を通

すような雨の中、傘1本でここまで来たものだ。10分も歩かないうちに高塚小屋に着く。男女2

             

                        大雨の縄文杉にて            

人のパーティーが入っており上の状況を確認する。ここから尾根状の原生林の急登を1時間で奇麗なテラスの付いた新高塚小屋に入る。単独の若い男の先客がおり我々は入口に陣取る。身支度を整理して、宴会をしながら明日の検討会をする。ここまで来ればもう安心だ。雨が降り続いても大きな沢を渡るのも淀川小屋前の大きな鉄の吊り橋だけだ。もう心配はない。淀川入口の安房歩道は土砂崩れで閉鎖されているが、林道歩きを23km覚悟すれば戻るよりはるかに安全で早い。決定だ。明日の早立ちに備えて今日は明るいうちに寝る。

    6月22日(土)雨一時霧

  新高塚小屋05:12〜宮之浦岳07:43/08:00〜花乃江河10:30〜淀口小屋11:05/11:23〜淀川入口

  12:00/12:10〜安房林道〜ヤクスギランド14:10/14:20〜タクシー迎え地点14:46〜田代別館

  15:25

 夜中中時々激しく降る雨と、強い風に今日も余り眠れない。12時やつと寝付いたと思ったら、アラームを間違えてしまい矢嶋さんと朝食の用意を始める。箕西君の“12時です”の声で再びシュラフへ潜り込む。3時半今度は間違えない。簡単なパンとベーコン炒めで出発の用意をする。明るくなって雨具に身を固め外に出る。幸い雨も小降りとなっている。尾根上は屋久島シャクナゲのトンネルが続き、ちょっと下りの一息突いた所で、朝露に輝いたシャクナゲの新芽が朝の弱い光を浴びて最盛期の花を思わせた。素晴らしい屋久島シャクナゲ開花の最盛期の頃が目に浮ぶ。50分程で樹林帯を抜け展望台に出る。雨は辛うじて止んでいるものの、もちろんガスで周りは真白だ。ここから樹林帯もすっと姿を消し、20pほどの屋久笹が一面を覆い、時々現われる屋久島シャクナゲが殺風景な景観を補っている。程なく奇麗に整備された木道が頂上近くまで導いてくれ、焼野三叉路を過ぎると直ぐに宮之浦岳だ。半ば諦めていたもののついに登れた。天気は曇り、周りは明るい。このまま天候が回復しそうだと思うのはちょっと虫が良過ぎるか?しかし雨が降らないだけでも幸運だ。全員で写真を撮り、行動食を補給する。稜線上を下山し始めると、再び雨が降り始め今度は本降りとなる。雨も手伝ってか、宮之浦岳は水が豊富で何処からでも流れ出している。こちらの南側は、新高塚小屋から登って来た時の殺風景な屋久笹に覆われた斜面とは違い、至る所から水が湧き出し、緑溢れる樹林帯の中に屋久島シャクナゲが群生している中を歩く。尚も木道は続き、雨量の多い屋久島の登山道を崩壊から守っている。花乃江河、小花乃江河の素晴らしい湿地帯を抜け、再び原生林の大木となった中の登山道を淀川小屋に着く。大雨の為小屋周辺は水浸し、とてもテントを張るスペースなど無い。小屋より一下りで淀川入口に出る。ここから立派な舗装道路の林道歩きの23kmが始まる。第一ラウンドの屋久島ランド迄2時間10分一生懸命下る。何故か長い上り坂が何箇所か出てくる。期待していたヤクスギランドは閉鎖されていた。電話で行きに使ったタクシーを呼ぶが色よい返事は返って来ない。“道路閉鎖のバリケイドを取って入れれば行ける所まで行く。しかし判らないので下ってきて欲しい”とのこと。タクシーでここまで上がって来るのに30分かかる。タクシーが来る30分間はゆっくりと下り、後は諦めて一生懸命下ることにする。途中3箇所の小さな土砂崩れがあり復旧工事中だった。もうこれ以上土砂崩れ個所が無いと思われた20分程歩いた頃、タクシーが上がって来てくれた。助かった。足の豆は出来そう、濡れた下着で股ずれは最悪の一歩手前まで来ていた。ありがたい、本当にありがとう。

 登山期間の3日間、屋久島の雨を充分堪能して登山は終った。大雨警報発令中、もしかして登れないかもしれないと誰しもが思っただろう。5、6月で年間の半分以上の雨が降る。その真直中、ただただ私の都合だけで決めてくれた日程、ありがとう。本当にありがとう。良き山仲間に恵まれて感謝致します。

    6月23日(日)晴れ

  田代屋別館08:05〜ガジュマル公園〜宮之浦港〜トローキの滝〜千尋の滝〜平内海中温泉〜屋

  久島空港14:05=JAC 074=鹿児島空港14:45/16:00=JAS 376=羽田空港17:40/18:00=横浜=

  平塚1950

        

                 平内海中温泉