『散歩』


フラっと散歩に出る。
闇の中にこの躰を投げ出してみる。
昼間には見えないモノが見えてくる。
昼間には聞こえないモノが聞こえてくる。
小さな星の輝き。
切れかかった街頭の灯り。
夜露に濡れた芝生。
小さな虫の声。
滲んだ満月の光・・・
そうだ、今日は満月だ・・・
いつもは聞こえない自分の声。
風に揺れるブランコの軋み。
風の音。
遠くを走るバイクの排気音。
道路を渡る犬の足音。

そうして、私は闇に溶け込んだ。
闇に同化した私が見た物は、夢だったのかもしれない。
現実離れした一瞬・・・それでも、闇は私に優しかった。
つい、好きな歌を口ずさむ・・・
思いがけない自分の声の大きさに現実が押し寄せる。
闇が「家にお帰り」と言った様に聞こえた・・・

そして、現実がまた忍び寄ってくる・・・