単なる必然であった直立二足歩行
四足獣とはどのような特徴を持つか
類人猿が、四足獣でないことを示す前に、四足獣の定義を行っておく。
四肢を持った陸棲の脊椎動物には、大きく2つのグループがある。
哺乳類に代表される、直立四足歩行を行うグループと、それ以前の段階である地上を這うように移動するグループである。
この2グループには、体制上明確な差異がある。
脊柱を地面に平行に置き、それを基準の上下左右前後を定義した場合として述べる。
地を這うグループでは、四肢は体の側面についており、肘や膝が曲がったままの状態で地面に接し、体を左右にうねらせて進む。
直立四足歩行を行うグループでは、四肢は体の下面についており、肘や膝は伸ばされて地面に接し(これにより直立四足歩行と称される。)、体を上下にゆすりながら進む。
この、直立四足歩行を行うグループが四足獣である。
四肢が体の下面にあることで、効率的に体重を分散して支えることができる。
樹上への適応が、類人猿を非四足獣とした。
類人猿が四足獣で無いことは、その肩の構造(腕の付き方)からわかる。
類人猿は、腕が体の側面についている。これでは、体重を効率的に支えることはできない。
では何故、類人猿の腕は、体の側面についているのか。
これこそが、樹上への適応の結果である。
腕が体の側面にあることにより、肩の可動性が増し、どのようにも木の枝をつかむことができる。
また、木の枝から垂直にぶら下がることができるようになるので、木の枝から木の枝へ枝にぶら下がり大きく前後に体をゆすりながら移動する(腕渡り、ブラキエーション)事もできる。
不幸な偶然であった草原への進出
では、何故そこまで樹上に適応した類人猿が草原に出てきたのだろうか。
個体数の増加であろうか。そうではない。生物界というのはよくできたもので、増えすぎに対するリミッターがいろいろある。
類人猿の場合は、低めの繁殖力であろう。
森林には敵となる生物が非常に少ないので、事故によるもの以外は欠員を生じにくい。
よって生まれた子供の多くは大人になり、子供を産む。
個体数の激増を避けるには、繁殖力を下げるのが一番である。
ではなぜ類人猿が草原に進出したのか。
このような説がある。
アフリカで造山運動が起こった。造山運動は、アフリカを2つに分け、山脈の西部で昔ながらの森林と、東部の新しい草原を作った。
当然ながら、この草原は森の変化したものなので、その森に住んでいた類人猿は、否応無しに草原に放り出されることになる。
草原が類人猿を変化させた
草原に追い出されても、彼らは生き残れた。
草原にも、森林ほどではないものの豊かな恵みがあり、それだけであれば、体制の変更は必要無い。
草原に追い出された類人猿は、ナックルウォーキングで移動していたと推察される。
現生のすべての類人猿がナックルウォーキングを行うことからも、間違いないところであろう。
しかし、すぐにそのままでは居られなくなる。肉食獣の台頭である。
森林が草原に変わったとき、森から追い出されたのは類人猿ばかりでは無い。
他の草食獣、肉食獣もまた、草原へと解き放たれた。
森林における肉食獣の捕食方法は、待ち伏せである。しかし、見通しのよい草原で待ち伏せを行うのは困難である。
自然、離れた場所から獲物に襲い掛かるという方法に切り替えねばならない。
となると当然襲われた側も、森では不要であった逃げ足を発達させる必要が生じる。
類人猿は、草食獣である。やはり、肉食獣からにげるため、逃げ足を発達させる必要が生じた。
しかし、類人猿の前足は、走るのに適さない。更に自由度の高い肩はその反面柔らかく、地面に前足がついたとき体を支えきれず、腕は走る際の障害となった。
そこで類人猿は邪魔な腕をたたみ、後足のみで走ることとした。霊長類は、元々後足のみで立って走ることも可能な体制を持っている。
変化は急速に現れた
初期の肉食獣は、それほど早くは走れなかったであろう、しかし、草食獣の高速化に伴い、徐々にその速度を早めていったはずである。
肉食獣の高速化は、草食獣の高速化をもたらし、草食獣の高速化は、肉食獣の高速化をもたらした。
その競争は、当然類人猿へも及ぶ。生存競争の開始である。
まず、速く走るために、より足の長い個体が優勢となる。
足が長くなれば、もはやナックルウォーキングは不可能だ。よって、普段から直立している個体が多くなる。
また、直立している個体は、より遠くが見渡せ、敵を発見するのが容易で、優勢になる。
おそらく、一万年とかからずに、二足歩行は完成されたことだろう。1000年をまたずして、日光猿軍団が二足歩行を獲得したように。
他の猿が二足歩行をしなかった理由
人によっては、ヒヒなどは二足歩行をしていないのだから、人間が二足歩行を始めたのは、奇跡だという意見もある。
しかし、よく考えてほしい、類人猿は、何を以って類人猿というのかを。
類人猿以外の真猿の前足は、他の四足獣と同様の付き方をしている。
つまり、真猿は、四足獣なのである。
四足獣で無くなってしまった類人猿は2本足で立たねばならなかったが、真猿はその必要が無い。
これが、他の猿が二足歩行をしなかった理由である。
では、四足獣の形態を失った動物が、地上を行かねばならないとき、2足となるのだろうか。
その通りと言ってよい。
鳥が2足で歩いているのは自明であるし、マダガスカルに済むベローシファカという類人猿以上に樹上に適応した猿は、地上を行くとき後足のみで横っ飛びに跳ねていく。
特に、ベローシファカの例は、樹上に高度に適応した猿は、四足歩行できず、二足歩行となるよい証拠といえるだろう。
以上
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