インテリアデザイン〜芯のある「可愛らしさ」



/////きっかけ

実を言うと、そもそも私がパンダを購入候補に入れたのは、雑誌に乗っていた室内の写真を見て、そのカラフルでキュートな世界(94〜95年モデルはパンダの歴史の中でも特別ポップな内装を与えられていた)に惚れ込んでしまったからなんですね。もともと、ヨーロッパのカラフルでプラスチッキーな雑貨が大好きな私にとって(女の子みたいですが)、この内装はたまらないものがあるんです(^^;

/////アイデアの宝庫

そういう私の好みは別にしても、パンダのインテリアは自動車史上に残る、アイデアに溢れた素晴らしいものなんですよね。それはジウジアーロ氏が持っていたアイデアを全て出したような、アイデアが満載された楽しい室内なんです。しかも、全てがコストと使い勝手を真剣に考えた上で作られたもので、決してデザイナーの自己満足的なギミックなどではないのです。

例えば、最大の特徴である、誰もがあっと驚くポケット状のダッシュボードも、実は居住スペースと物置スペースを両立させるための、真剣なアイデアなのです。パンダはパッケージとして前席を極限まで前に寄せている上、スカットルも高いので通常のダッシュボードでは助手席乗員への圧迫感が強すぎてしまうのです。ちなみにホンダ・ステップバンも同様の問題を解決するために超薄型のダッシュボードを採用しています。同じ目標でも、アイデア一発で解決したパンダと設計者の努力で解決したステップワゴン、「努力」という言葉が大嫌いな私はやっぱりパンダが大好きです(^^;

あの冗談のような移動式灰皿にしても、自由に動かせる為、使い勝手は一般的なタイプより上ですし、ヘビースモーカーなら増設(1個2000円程度です)して対応できるという柔軟性もあります(^^;;)。小物入れにしてもお洒落ですよね、これは(^^)。

また、リアシートの位置を工夫してをホイールハウスを肘掛けに使うことにより、リアシートとトランクへの干渉量を実質的に減らしているのもホイールベースが短いハンデを少しでも克服しようという意志が見えるディテールです。

エクステリアデザインの所でも書いたとおり、パンダの開発においてジウジアーロはフィアットから驚異的な低コストの要求を受けていました。そのため、制限された(上級車種127より大きく出来ない)ボディサイズに対して通常の手法ではジウジアーロ氏が満足できるスペースを稼ぐことが出来なかったのですね。基本的にはデザイン屋さんなのですから(ちなみにパンダは設計もイタルデザインで行われています。フィアット設計は基本的にエンジンだけです。86年のビッグ・マイナーではリアサスなどフィアットの設計が大幅に入ったようですが)、技術力にも限界があったでしょう。この辺が一流の技術者がある意味コストを無視して開発できたミニやトゥインゴとは大きく違ったパンダならではの特徴でしょう。

/////素材を生かしたデザイン

昔と今ではずいぶん変わってしまったインテリアですが、樹脂類の質感がざらついていてプラスチッキーなのは変わりません。これに拒否反応を示す人もいますが、私はむしろ、シボ等を入れてプラスチックに見えないようにしている方に拒否反応を起こしてしまうんですよね。だって、プラスチックが大好きなんですから。

例えば、ウォルナットのウッドパネルが赤や黄色に塗装されていたらどう思います?嫌でしょ?普通のクルマの「上質なプラスチック」なんて私に言わせればそれに等しい行為なんです。

そしてパンダの内装はそもそも、とてもプラスチックが似合うデザインなんです。あらゆるパーツがシャープなモダンデザインで統一され、それらが統べて小さいサイズに納められている。プラスチックはモダンでコンパクトなものに似合うことを良く知っている人間のデザインです。

日本車の廉価モデルの安物プラスチック内装が悲しいのは、似合うようにデザインされていないし、色使いにも工夫がないからで、プラスチッキーだから悲しいのではないんです。パンダに乗ればそれがきっと分かるはずです。

/////

でも、結局美的感覚の差のような気がします。イタリア人は鉄を使っても、木を使っても、皮を使っても、プラスチックを使っても、モダンでも、レトロでも、素材、手法なりに最高のデザインが出来るんでしょうね。問題は我々の感覚が時として追い付いて行かないことくらいで(^^;;