LE VOLANT誌1998年12月号 P156〜P159

買い頃INPORT-CAR攻略講座 FIAT PANDA編

 ル・ボランといえば、ちょっと不良入ったお金持ちの為の高級外車(及びそのチューニングカー)雑誌というイメージがありますが、そういう中でちょっと浮いた存在の記事。内容は意外にマニアックで重要な情報が沢山あり、これはアドバイザーである、カルトスポルト・山口 猛氏の功績ですね。


注目のページ P158〜P159 "MAINTENANCE GUIDE"

 ということで、カルト山口氏によるメンテナンスガイドが当然、最も注目すべきページです。
"ENGINE"、"ELECTRICAL"、"SUSPENSION"、"BRAKE"、TRANSMISSION"の各項目に別れており、その特徴、注意すべきポイント、チューニングのツボなどがコンパクトにまとめられています。


  "ENGINE" -1Lの制御系トラブルはキャブ化で対処が正解
 


 FIREエンジン本体は、普通に乗っていれば20万キロまでO/H(オーバーホール)の必要がない程に丈夫。 精度的には1.1Lの方が上で、特にキャブ時代の1Lは妙にクリアランスが大きかったが、総じて耐久性は高い。

 注意すべき点は1Lインジェクションの制御系。アイドルアップ、スロットルセンサー、果てはECU(エンジンを制御するコンピュータ)まで交換しても不調が直らない事がある。イタリア本国でも原因が分らないらしい。しかし、純正キャブレターへのコンバートは簡単なので、トラブルに見舞われたオーナーの多くがそうしている。アクセルのツキはいいし、純正なら神経質な調整も必要ない。費用は20万円ほど。ただし、ポート径が細いのでツインキャブ化は流速が落ち過ぎメリット少ない。

 オーバーヒートも1Lインジェクション車に特有の症状だが、水温センサーによる誤情報の可能性大。エンジンが安定しているなら問題ない。ラジエーターの容量も十分で目詰まり等の構造上のトラブルも少ないが、コンデンサがラジエーターを塞ぐクーラー装着車は冷却水が劣化すると水温が上がり気味となる。

 タイミングベルトは、たとえ切れてもバルブタッチは起こさないが、3〜4万キロが寿命と考えて交換した方がいい。ついでに歪みやすいヘッドの面研も行っておくのがベター。

 ストロークアップで排気量を拡大した1.1Lのカムはバルブリフト量が大きい(オーバーラップは変わらず)ので、1Lへ流用すると(無加工で可能)高回転チューンを目指す際には効果的。ブロック本体は1.1Lの方が肉厚がタップリと取られている為にポート研摩の限界は高い(Henlik:1.1Lの方が音がいいのは、この為だったんですね〜)。

 高回転型小排気量車なので、オイル管理は十分に。純正より硬めがよく、お勧めはペトロ・カナダ15W-40(1500円/L)。

 

  "ELECTRICAL"-ク−ラ−が壊れたらあきらめるしかない?
 


 ボッシュ製ジェネレーター及びオルタネーターの発充電系は丈夫。壊れても補修部品は確保されている上、日本製(ミツバ、日本電装)に交換する事も可能。ただし、バッテリーは消耗が早く、劣化はオルタネーターに負担を掛けるから1年サイクルでの交換が得策。

 1.1Lはデスビレスの為、点火系トラブルの心配はほぼない。ただし、高回転を多用しがちだからプラグ交換はマメに。

 最大の弱点は、すべて日本で装着されているクーラー(Henlik:これは誤り。96年式以降で吹き出し口が三つあるものはイタリア製で本国での装着)。やたらと長い高圧ホースの亀裂、コンプレッサーの消耗が多いが、フィアット・オート扱い以外のパーツ供給は頼りなく、特にJAXもののパーツストックは皆無。それぞれで取り付け方法、銘柄が違い、使い回しも効かない。

 

  "SUSPENSION"-30mm以上の車高ダウンはまったくメリットなし!
 


 フロントはいずれもストラット、リジッドのリアは2駆がΩアーム、4X4がリーフという不変のレイアウト(Henlik:どうも、この記事では初期型がまったく考慮されていない模様)。特に弱点はないが、ダンパーはオイル式の為に寿命は長くない。逆にスプリングは車重が軽いのでロングライフ。ノーズが沈みがちな場合、バネレートの高い4x4用を使う手もある。

 社外製ダンパーでは、街乗りならモンローかザックス、ワインディング性能重視ならKONIスペシャルかオスラムが適当。なお、低年式ならばダンパー交換と同時にテンションロッド及びロワアームのブッシュ交換も済ましておきたい。どちらもヘタりが早い方なので、強化ブッシュにしてもいい。多くの物は乗り心地を犠牲にせず剛性感が増し、ハンドリングがシャープになる。

 ローダウンはタイロッド角との兼ね合いで30mm以上下げると舵角が変わりロール時にトーアウト→強アンダーとなる。さらにドライブシャフトブーツがミッションケースに当るなど、まったくイイコトなし。

 タイヤの選択肢は幅広い(純正サイズは155/65R13)。コンフォート性(快適性)重視ならミシュランMXT、スポーツ性重視ならダンロップW10がお勧め。

 

  "BRAKE"-足りているブレーキ性能-ノンアシストでも問題はない
 

 軽い車重に対して性能は十分。ECVT車では効きが悪い印象を抱く事もあるが、これは駆動伝達特性によるもので、むしろローター径は5MT車より若干大きい。

 しかし、あまり材質のよくないゴムを使用している為ペダルタッチはよくない。まずはテフロンホースに交換してレスポンスアップを図る。その上で、制動力を高めるカルトお勧めのブレーキパッドはフェロードレーシング。効きと磨耗のバランスが適度(軽量車の効き過ぎは逆に乗りにくい)で鳴きもそこそこ、全国どこででも手に入る。

 ブレーキ構成は一貫してフロントがディスク、リアがドラムだが、1.1Lからフロントにはマスターバック付きに。それ以前はノンアシストだが、車中が軽い為にさほど大きな踏力は必要なく、むしろ踏み代分だけ効くためにコントロール性はこちらの方が高い。

 フロントのローター及びパッドの寿命は標準的。車重が軽いため乗り方によってはライフをかなり延ばす事ができる。

 

  "TRANSMISSON"-5MTにもECVTにも耐久性が期待出来る
 


 マニュアルミッションは’90モデルから5速となり、耐久性が上がっているが、それ以前と同様3速のシンクロが痛みやすい。4速の方がシフトフィールがいいが、サービス性が低いのがネック。故に4速搭載車がトラブルを起こしても、互換性のある5速に換装した方が時間的にもコスト的にも得となる。

 FFで車重が軽いため、クラッチは4〜5万キロのライフがある。ダメになるのはスラストベアリングが先でシャカシャカ音がその兆候だ。

 富士重工製ECVTはほぼメンテナンスフリーだが、本国製のセレクタ−レバーは電気的な接触不良を起こす事がある。これはスイッチユニットの交換でOK。

 

 


主要メンテナンスポイントの費用(パンダCLXの場合/カルト スポルト調べ)
項目 パーツ価格 作業工賃
エンジンオイル交換(3.5L) 7250円(*1) 1000円
ミッションオイル交換(3L) 4500円 1500円
LLC(冷却水)交換 1000円 3000円
タイミングベルト交換 4000円 1万2000円
ブレーキパッド交換 7700円 6000円
ブレーキローター交換 9400円 8000円
ブレーキシュー交換 1万4800円 1万円
クラッチAssy交換 3万5700円 4万円
フロントダンパー交換 1万5000円/本 6000円/本
フロントサスブッシュ交換 3万4600円(*2) 2万4000円
リアダンパー交換 9000円/本 6000円/本
エンジンマウント交換 1万8000円 1万5000円
ドライブシャフトブーツ交換 3000円 2万5000円

*1=エレメント込み
*2=アッパーマウント/テンションロッド/ロワアームをセットで


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