第5話 影響されやすい人
2003/3/16

 実は、僕は写真のコトって全然知らないんだよね、有名な写真家とかでも、写真集ほとんど見たことなかったりする。持っている写真集は、ブレッソンのを一冊だけ(これでよく「好きな写真家:ブレッソン」などと書けるな、と自分の厚顔無恥さを誇りに思う今日この頃)。そんな訳で、たまたま教育テレビに森山大道氏が出てきた時も、「あ、リコーGR使いの人だ」としか思わなかった(超失礼)。

 森山氏の写真の素晴らしさ、写真家としての偉大さというのは、多分コレを読んでいる人の方がよくご存じだと思います。それまでほとんど森山氏の写真を知らなかった僕も、番組に出てきた写真の迫力に圧倒された、というのが正直なところ。

 その番組の中で、森山氏が実際に街に出てスナップを撮っている現場が出てきたけど、自分的にはそれが一番印象的だった。眼光鋭く辺りを見回しながら歩いているかと思うと、いきなり走りだし、GR21をサッと構えたかと思うと即座にレリーズ(時にはノーファインダーで)、そしてまたすぐに歩き出し次の被写体を探す。もちろん、じっくりと構図を探りながら撮るときもあるのだけど、そのアグレッシブさ、堂々とした態度、そういうものに凄く感銘を受けた。

 翻って自分はといえば、てくてくと散歩のペースで歩いて、おどおどと構えて、のんびりレリーズしていた。自分では、それなりに素早く撮っていたつもりだったのだけど、比較すると全くお話にならない。良い、と思う瞬間も、周りの雰囲気とかが気になって流してしまうことも多かった。それは性格だから仕方ないかな、と諦めてもいた。

 自分もアグレッシブな撮り方を試してみよう、と思った。周りの人からは「自分らしさにこだわる人」と思われている節もあるのだけど、実際の僕は、かなりミーハーで影響されやすい人なのだね。次の週末、早速コニカ・ヘキサーにネオパン・アクロスを詰め込んで(番組では、森山氏はアグファ・スカーラ、つまりモノクロのリバーサルフィルムを使用していたけどね)、曇天の福岡へ行ってみた。

 いつもはカメラを首から下げているのだけど、何となくストラップを手首に巻いて、GR21より随分と重いヘキサーを握りしめた。背筋をピンと伸ばし(Dai-changは猫背だったりするので、どこまで伸びているか疑問だけど)、とにかく走り回って、撮りたいと思った瞬間に迷わずレリーズ。最初はいつもの通りサイレントモードで撮っていたけど、途中から通常モードに切り替えた。ヘキサー本来のスピードと動作音が心地いい。人が沢山いるところでも、平気でカメラを構えられる。堂々としていれば、周りも妙な目で見ないような気がする。てなわけで、結局いつもの倍以上のスピードで36枚撮りフィルムを使い切ってしまった。

 これを書いている時点では、まだ現像も上がっていないけど、多分ほとんどは手ブレやら構図が変だったりする失敗写真だと思う。でも、気分はとても気持ちよかった。いつもなら撮れない写真を撮れたと思う。まずは、シャッターを切ること。今まではそれが出来ていなかった気がする。人のマネを嫌ったり、バカにする人も多いのだけれど、僕らは素人なんだし、誰だって最初は模倣からはじめるわけだしね。

 てなわけで、リコーGR-1の相場なんか調べたりする今日この頃、、、って影響されすぎだろオイ(笑)。

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