第4話 最初の一台
2003/2/12

 僕の実質的な「最初の一台目のカメラ」は、Pentax MZ-5Nになると思う。高校の時のOM-3とか、初めて自分のお金で買ったカメラであるティアラとかもあるけれど、「写真を趣味にしよう」と決めてから購入したのは、MZ-5Nが最初なので、そう言っても差し支えないだろう。ごく一般的なスペックのAF一眼レフだ。決して悪いカメラではなく、現在はなかなかに良くできた名機だとすら思う。だけれど、このカメラ、購入後ちょこっと使った後、1年にも渡って全く使われない状態が続いていた。

 写真を趣味とする時、最初にどのようなカメラを購入するべきなのか。色々な意見があると思うし、絶対に正しい意見があるとも思えない。人によっても違うだろう。だけれど、敢えて独断と偏見で言わせていただくと、最初の一台は可能な限りプリミティブで最低限の機能しかないカメラにするべきだと思う。つまり、ピントも露出もマニュアル操作、そしてすべて目測のカメラ、である。

 今のカメラは、非常に多機能で高性能だけれども、素人にとってはその必要性やどのような時に使うべき物なのか、非常に分かりにくい。クラカメ好きの人の中には「そんな多機能・高性能、必要なし!」と言い放つ人もいるし、実際なくても写真は撮れるのだが、やはりそれらの機能は必要に応じて進化してきたものなのであり、使いこなせば表現の幅が広がるのは間違いない。

 僕がMZ-5Nの次に購入したのは、LOMO社のコンパクトカメラ、スメナ35である。ご存じの方も多いと思うが、このカメラは露出もピントもすべて目測のカメラである。非常に高性能なレンズのおかげで、すべてがハマった時の描写力には舌を巻くことも多いが、当然ながら失敗写真も大量に発生させ、貴重な地球の資源を浪費してしまったのは内緒です(笑)。

 しかし、このカメラには露出や被写界深度など、身を持って体感するのには絶好の教材だった。僕はどうにも頭が悪いので、まずはやってみないと身に付かないんだよね(笑)。その後、レンジファインダーや2眼レフなども使うようになった。順番は多少前後したが、銀塩カメラ1世紀の進化の一端を味わった。どれも味があって楽しいカメラ達で、どれも好きである。しかし、やはり古いカメラは古いカメラ。どんなシチュエーションでも対応できるかと言えば当たり前だが、そういう訳にはいかない。

 最初にMZ-5Nを購入して1年半が経った今、僕はそのMZ-5Nに古いMF標準レンズを取り付け、常用している。AFカメラと言っても、そのほとんどはマニュアル時代から互換性のあるマウントを使用しているので、そういうこともできる。古いカメラを一通り使った後、最新カメラ(と言っても、元になったMZ-3や5から考えると、基本は何年も前のカメラだ)を使って思うのは、その高性能・高機能にはちゃんと意味がある、ということである。これは最初使ったときには全く分からなかったことで、当然全然使いこなせていなかったと痛感する。と、同時に「こういう事も簡単に出来るんだ〜」と感動したりする。それは絞り開放で背景をボカせる、という基本中の基本の話だったりもするのだが、クラカメではなかなか出来ないんだよね、こういうことが。

 また、何もないカメラを使っていくウチに、「欲しい機能」というのが分かってくると思う。自分はたまたまMZ-5Nというバランスが取れていて、初心者向けの余計な機能はない、操作系はアナログ感覚、という今の自分に非常に向いているカメラだったから良かったけど、これがEOS kissやαSweetなんかだったりしたら、きっと目も当てられなかっただろうと思う。そういう余計な買い物をしないためにも、最初は安くて何もついていないカメラで勉強し、自分がどういう写真を撮りたいのか、その為にはどういうカメラがあったらいいのか、見極めるべきであろう。

 頭のいい人なら、マニュアルや本で知識を得て使いこなせるかもしれない。でも、何が何だか分からなくて、安物のズームレンズで、コンパクトカメラで撮った写真と大差ない写真を量産して、結局飽きてしまう、などという悲しい結末を迎える人も多いと聞いたりする。そういうことを考えると、シンプルなカメラで、カメラとは何か?というのをよく理解してから、最新カメラを使っても遅くないと思う。最新カメラのありがたみも倍増しますし(笑)。

 まぁ、僕は回り道しすぎだけどー♪

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