ピーター・ドラッカー
オーストリア ウィーン生まれの ユダヤ系経営学者・社会学者
2005年11月死去
「現代経営学」あるいは「マネジメント」(management)の発明者と呼ばれる。 ここで言うマネジメントとは、「経営管理」あるいは「管理」
のこと。
ドラッカーの著書の日本での売上はダイヤモンド社刊行分だけで累計400万部余
ドラッカーのファンは ドラッカリアンと呼ばれる
取りあえず今回の第一弾は、ドラッカーの多いの著書のなかから、ビジネスの大原則である「ミッション」と、イノベーションについてまとめてみた。
1.「考えるべきは、ミッションは何かである。 ミッションの価値は、正しい行動をもたらすことにある」
「ミッション」とは使命、任務のこと。企業としては「ミッション」を決めれば、すべてのなすべきことが決まるのである。
2.「顧客にとっての価値は何か?」
顧客に満足してもらうために、知らなければならないのは、「顧客にとっての価値は何か?」である。
ドラッカーはこう言っている。「顧客が価値ありと考えるものはあまりに複雑であって、彼らだけが答えられることである。憶測してはならない。」 顧客のもとへ行って答えを求める作業を体系的に行わなければならないと。
3.「事業が何かを決めるのは顧客である」
自らの事業は何か? これを求めるのは簡単ではない。定款に書いてあるものではないし、会社名でもない。顧客や市場の観点から見て初めてわかるものなのである。顧客が満足する欲求が事業を決める。
事業の目的として有効な定義は、 顧客の創造である 。顧客が事業の土台であり、事業を支える顧客だけが、需要を創造すると。
4.理想のマーケティングとは
ドラッカーはこんなことも言っている。「企業の第一の機能としてのマーケティングが、あまりに多くの企業で行われていない」 また、「販売とマーケティングは逆である。マーケティングの理想は、販売を不要にすることである」
と。
このひとつの方向がブランディングである。
5.強みを知るためには
「自社のことは自社ではわからない。特に強みは」そのため、 「自社を最もよく知るにを腰を低くして聞かなければならない」。
また、「上顧客に対し、自社は他社に出来ない、 どのような事をしているかを聞く」
ドラッカーではなくとも、SWOT分析をしている企業は多いが、分析で大事なのは「客観性」である。
6.たとえ業界のリーダーでも、過半は自社の顧客ではない
確かに、企業のシェアは、ほとんどの場合50%を超えることはない。
ドラッカーは「最も重要な情報は、顧客ではなく ノンカスタマーについてのものである」
※ここで言っている「ノンカスタマー」とは、非顧客 (自社の顧客ではない他社の顧客)のこと。
7.イノベーションの3つの心得
1.集中すること‥勤勉、持続、献身 。
集中しないと出来ない。
2.強みを基盤とする‥得意不得意あり
自らの能力を生かしてくれる機会を探すこと
3.世の中を大きく変えるものでなければならない
常に市場志向をもつことが大切である。
8.イノベーションの3つのタブー
1.凝りすぎてはならない
凝りすぎは失敗の元。凝りすぎたものに時間と金を使う者はいない。
2.多角化してはならない
これは7−1と同様
3.明日のためのイノベーションを行ってはならない
ドラッカーはイノベーションについてこう言う。
「20年後には、多くの人がこれを必要とする」が、という考え方は間違いだ。
「必要とする人は既に大勢いる。20年後はもっと大勢いる」という発想が必要 だと。
9.インベーションはシンプルに
「イノベーションは、焦点を絞り、シンプルに 行わなければならない」
イノベーションに対する最高の賛辞は 、「なぜ、自分は思いつかなかったか」 だ。
私としては、この言葉は大変好きな言葉である。奇をてらったものは成功しないのである。
10.トップ自らが推進役となれ
「イノベーションとは姿勢であり、行動である。 特にそれはトップマネジメントの姿勢であり、 行動である。 イノベーションを行う組織では、トップマネジメントの役 割が違う」
そのために、トップは、生煮えの非現実的なアイデアを具体化しなければならない。 ひとつの優れたアイデアを手にするためには 多くの馬鹿げたアイデアが必要である。
トップ自身がイノベーションの推進役になって、初めてイノベーションは成功するのである。
11.新しいことも、改善も手間は同じ
「新しいことを行うのも、すでに行っていることを改善するのも、かかる手間は同じである」 既にあるものの延長や改良ではなく、 新しい価値あるものを創造すること。
12.4つのリスク
(「経営計画」では、ますリスクの種類を明らかにしなければならない。)
1.負うべきリスク …医薬品メーカーでは副作用
2.負えるリスク‥失敗しても多少の損失
3.負えないリスク‥失敗したら会社が倒産
4.負わないことによるリスク‥乗り遅れのリスク
「経済活動においての最大のリスクは リスクを冒さないこと。 そして、それ以上に リスクを冒せなくなること 」
13.左脳と右脳を使え
「イノベーションを行うにあたっては、外に出て、 見て、問い、聞かなければならない」 「イノベーションに成功する者は左脳と右脳の双方を使う。」
イノベーションのヒット率
1.予期せぬ事‥日常業務における
14.昨日を捨てること
「イノベーションは市場に焦点を合わせなければならない。製品に焦点を合わせたイノベーションは失敗する」
15.陳腐化することを知っているか
「イノベーションに優れた企業は、イノベーションのための活動を厳しく管理する」 「イノベーションに優れた企業は、 人の作ったものは、やがて陳腐化することを知っている」
陳腐化したものを捨てる 競争相手によって陳腐化させられるのを待たず
16.予期せぬ顧客が
「ベンチャーで成功するのは、 予想もしなかった市場で、 予想もしなかった顧客 が、 予想もしなかった製品やサービスを、 予想もしなかった目的のために
買っ てくれるときである」
17.なぜ企業家精神が必要とされるのか?
あらゆるものが、やがて陳腐化する。 そして進歩する。 だから、あらゆるものに、 インベーションと企業家精神が必要となる。
18.経営者のための「八つの習慣」
1.なされるべきことを考える なしたいことではない
2.組織のことを考える 経営者のことでも、従業員のことでもない
3.アクションプランを作る
4.意志決定を行う
5.コミュニケーションを行う
6.機会に焦点を合わせる
7.会議の生産性を上げる
8.「私は」ではなく、「我々は」を考える
19.自ら変化をつくり出すための5つの方法
1.成功していないものはすべて破棄する
2.あらゆる製品、サービス、プロセスをカイゼンする
3.あらゆる成功を追求して、新たな展開を図る
4.体系的にイノベーションを行う
5.思考態度を根本から変える
20.事業上の5つの大罪
低迷している企業は以下の5つのうち、少なくともひとつしている
1.利益幅信奉
2.高価格信奉
3.コスト中心主義‥コスト積み上げ方式
4.昨日崇拝 …昨日を重んじ明日を軽んじる
5.問題至上主義 …チャンスを放って問題にかかりきりになる
※価格設定の唯一健全な方法とは…「市場が快く支払ってくれる価格からスタートすること」この表現は絶妙である
21.自らの強みに焦点をあわせ、強みでないことは他社に任せなさい
「本格的に取り組めないものは、どこか他の企業の本業にしてやれないか」
ドラッカーから教えを請うたウェルチがGEの立て直しの時に使ったもの
22.外部の血の必要性
「人事は社内だけで行ってはならない。これは原則である。マネジメントには外の血を入れることが必要である。 それは独善や社会からの遊離を防ぐためだ」
23.最後に必要なのは勇気
「いよいよ意志決定の準備は整った。 満たすべき条件は検討し、 選択肢はすべて俎上に載せ、得るべきものとリスクを天秤にかけた。 しかし、多くの決定が行方不明になるのが、
まさにこの時である」
(株)ナンバーワン戦略研究所 矢野新一
参考図書 「ドラッカー 時代を超える言葉」上田惇生