マルチメディアの教育利用とこれからの情報教育(教育工学)
−総合的な学習の時間に向けたプロジェクト学習とポートフォリオ評価の試み−  
岡山県教育センター指導主事 平 松   茂  
 元へ

 研究の概要
 情報教育は各教科等及び「総合的な学習の時間」で進める。情報教育の目標の一つである「情報活用の実践力」は課題解決の場面で具体的に情報を扱うことにより育成できる。これには情報に直接関係した課題を解決しながら育成する方法と,コンピュータ等を活用して国際理解,環境,福祉・健康等の課題を解決しながら育成する方法とがある。
 研究では,マルチメディアを活用しながら学習活動を展開した「伝統を受け継ぐ備前焼」「ふるさとを見つめ直そう」「長崎平和学習」の三つの実践事例を中心に取り上げ,学習パッケージを作成するとともに,ポートフォリオ評価を試みた。その結果,マルチメディアを活用したプロジェクト学習が児童生徒の課題意識の高揚と学習内容の充実に効果的であった。 

1 情報社会の生きる力
 情報社会においては,情報活用能力は従来の
「読み,書き,算盤」に並ぶ基礎・基本であり(右図),各教科等,特に
「総合的な学習の時間」に育成する。
2 情報教育と総合的な学習の時間
 総合的な学習の時間は時間枠であり,各学校がそれぞれのねらい
をもって,創意工夫した学習活動を展開する。
このとき,情報活用の実践力を中心に具体的な活動の中で情報教育
を進めるのが適当である。

3 プロジェクト学習による情報活用の実践力の育成
 実践では,児童生徒が活動のねらいを容易に把握し,活動の価値
や意義を自覚しながら,自己評価・相互評価能力を高めることができ
るプロジェクト学習(Project-Based Learning)のプロセスを取り入れた。
 Plan-Do-Seeの学習プロセス(右図)を繰り返す中で,自己評価能力
を身に付け,学習の成果を確認しながら,活動の修正・改善を図る。
この研究では,活動を
企画(Plan)→探究(Explore)→表現(Express)→交流(Exchage)
の流れとし,実践の成果を各学校で活用しやすい学習パッケージにま
とめた。
4 カリキュラム作成と目指す子ども像
 各学校では,全教職員の共通理解のもとに目指す子ども像を掲げ,
それに向けたアプローチの段階を分析してカリキュラムを作成する。
そうした過程を経て学習活動を組み立てることが重要であり,児童生徒
も目標をもちやすい。右図はその一例である。
5 マルチメディアプロジェクト
 プロジェクト学習を進めるとき,学習の多くの過程でマルチメディアを
活用するマルチメディアプロジェクトの手法(写真右)がある。
6 ポートフォリオ評価
 活動の評価としてポートフォリオ評価が注目されている。
活動中に作成した文章やスケッチ等の紙による情報,録音テープ,
写真,ビデオテープ等のメディアによる情報,学習新聞や,
レポート,作品等の成果を適宜残してファイルにしておく。
そして,学習段階の区切りや学習の最後に,自己評価・総合評価
し,活動を修正・改善する。ポートフォリオ評価は活動の成果を
上げるために有効である。


元へ