ぶつけた〜とても間抜けな話なのさ
1997年5月22日 晴れ
その(ゴルフの)練習場の駐車場はほぼ満車であった。僅かのタイミングの差でいい場所をグランド・チェロキーに取られてしまったのだ。残っていたのは隅に無理矢理作ったような軽自動車専用のブロックのみであった。絶対的な広さはあるのだが、中途半端な位置にある照明のポールが幅を制限している。私はもちろん躊躇せず、その場所へ犬キャラ号を滑り込ませた(そう、それはいつものこと)。
私はクルマのゴルフは好きだが、スポーツのゴルフは嫌いだし、ほとんどしたこともない。しかし、周囲の状況がそのままでいることを許してくれないので(いやいやながら)練習へ来たのだ。ま、そういう個人的事情はともかく、そういう理由で終わったときにはかなり疲れていた(仕事でもちょっと疲れていたし)。そうして駐車場へ戻り、クラブをトランクへ載せ(幅はギリギリだけど2個くらいバッグも入る)、運転席に収まり、悪態を一つつぶやきながらエンジンを始動させ、ちょっと後ろを確認してから乱暴にバックをはじめた時、私はこの場所が軽自動車専用であることも、照明のポールがすぐ近くに立っていることも忘れていた。
少し下がったところで、さらに右後方を確認、そしてステアリングを右に切りながら再び荒っぽくバックした瞬間、「パッコーン」という妙に軽い音と共に、犬キャラ号のフロントは軽く右に飛んでいた(図解参照↓)。同時に私はすべてを理解したが、既に出来ることは「やってもーた」と叫びながら頭を抱えることだけであった。
犬キャラ号から降りて見てみると、ヘッドライトのすぐ後ろ辺りからオーバーフェンダー状のフェンダーの前半1/3程度まで、一番深いところでは2〜3cm程度凹み、さらにバンパーも全体に右にずれていて、左側はほとんどボディと面一になってしまっている。不幸中の幸いは、ライト類とボンネットがまったく無傷であったこと。実際、板金屋も驚いた(らしい)ほど、綺麗な当たり方をしていた。
数年前の私なら、「南イタリア路地裏仕様だ」などといって放っておいたかもしれないが、最近はそんな知ったかぶりの欧州かぶれな考え方はしない事にしている。僕は日本人だし、イタリア車だとかヨーロッパ車だとか、そんなことは関係なくパンダが好きなのだから。
1997年5月24日 雨
そういうことで、犬キャラ号をアレーゼモデナ和歌山へ預けに行く。一応、見積もりを出してもらってから修理をするか判断するが、作業を依頼する外注の板金屋の関係で見積もりは週明けとなる。おそらく7万円くらいだろうとはその場にいたメカニック氏。
こちらからの注文は、出来る限り安く。バンパーも多少の傷は気にしないので使えるのならステーの修正のみでいい、板金も塗装もそれほどシビアにする必要はない(どうせ出来ないらしいし)。ちょっと、日本人離れしているだろうか・・・。
その後、ディーラーの方のご厚意で駅まで(そのまま実家へ帰る)送ってもらう。そのメカの方の自家用車である現行レガシィ・ツーリングワゴンは静かで快適だったが、想像していたよりずっと無味乾燥な乗り味であった(メカ氏も同じ感想らしく、今はパンダ等が欲しいという)。駅までの間、日本車の感覚で輸入車に乗っている人たちの話で盛り上がる。細かいことに異常にうるさい人(修理はしすぎると、むしろトラブルの元となるため、こういう人は逆にトラブルを作ってしまうことがあるという)、逆に異常に無頓着な人、信頼性と耐久性の区別の付かない人、乗らなければクルマは壊れない物だと勘違いしている人・・・輸入車のメカニックというのも結構ストレスのたまる仕事なんだろうなと思う。
1997年5月27日 曇り
見積もりが出る。約7万円。私にとっては厳しい数字だし、会社の人に聞くと国産よりかなり高いと言う話だが、現状では選択の余地はない。
犬キャラ号の入院中、実家で妹の足になっている以前の愛車、フェスティバGT−Xを借りて通勤(最近職場が変わり、自転車では通うのが不可能になっている)に使ったが、やはりこのクルマはダメだ。元から剛性の不足しているボディに無理矢理ハイパワーのエンジンをくくりつけ、足を動かなくして太いタイヤを履かせることで辻褄を合わせている、つまり走りがあまりにも不自然なのだ。ついでに言えば、広いのに居住感も悪いというか、心地よくない。犬キャラ号ではあれほど楽しかった通勤路も、フェスティバでは単なる苦痛な労働でしかないのである。
1997年5月30日 晴れ
修理が終わったとの連絡を受ける。素直に嬉しい。以前に比べて、犬キャラ号がいない間の苦痛が大きくなっている。2年3万キロを経てこう思えるクルマはそうはないだろう。
修理代は板金、塗装、バンパー位置の調整、工賃、消費税すべて込みで¥68,250−であった。細かいことを言えば、風景の写り込みが歪んでいることで、板金をしたことが分かるし、バンパーもずれが直りきっていないが、基本的に「5m離れて綺麗に見えればOK」である私にとって、不満は特にはない。
久しぶりに犬キャラ号に乗り込み、走りはじめる。初めて乗った、あの日のままの感動。何があろうとも、このクルマに乗り続けようと思った。